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2012.02.01

Zero to Maker:激変するツールの世界

Text by kanai


ちょっとヤル気のなかったMaker、 David LangがMakerカルチャーに身を沈め、我らの仲間、TechShopの寛大なるご協力のもと、できる限りのDIYスキルを習得していく様子をレポートします。彼は、何を学んだか、誰に会ったか、どんなハードルをクリアしたか(またはしなかったか)など、奮闘努力のレポートを連載します。- Gareth
物作りとは、何かを作り上げることであると同時に、冒険でもある。新しい問題解決方法を探り、物の仕組みを学び、機械の部品がどのように組み合わさっているかを探る。というわけで、今週は、私にとっての新しいツールへの冒険だ。
私はあのサイドプロジェクトを継続しようと考えていた。壁掛けプランターをたくさん作るという方向に転換したあれだ。いろいろな方法や材料を試してみたが、今のところ最大の障害は、型がないということだ。私はTechShopのスタッフや一般の会員たちに、自分の頭の中のデザインを、ラフなスケッチに描きながら口頭で説明した。すると、彼らがくれた方法や材料に関する助言のひとつひとつに、私が試したことのないものが含まれていた。
TechShopでの大収穫によって、試しておくべきだった数々の型作りの方法がわかった。CNCマシンで木材から削り出す、モデリング用の粘土で手捻りする、アルミで作るなどなど。それもいいアイデアだ。しかし、それらはどれも a) 時間がかかりすぎるか、b) 費用や材料を使いすぎるかのどちらかだった。それが本当にうまくいくかの保証もない。いくらなんでも、そこまでの投資はできない。もっと安くて、簡単で、早い方法を探さなければ。
そのとき、前に見たMake: Onlineの記事を思い出した。Autodeskの123D Makeプログラムだ。AutodeskのMaker支援担当者、Jesse HarringtonにTechShopで見せてもらった、段ボールを重ねて作る立体モデルのやり方なら、かなり簡単だ。うまくいかなかったとしても、クールな最新式ソフトウェアの勉強にはなる。

123D Makeを利用するためには、まず型のCAD(コンピュータ支援設計) ファイルを作らなければならない。また、これまでなんとなく躊躇してきたAutodesk Inventorの講座も受ける必要がある。私のような新米Makerは、設計のプロセスを軽視する傾向にある。なので、これにはかなりの時間がかかると覚悟していたのだが、そうでもなかった。思い描いていたデザインが、いかに簡単に実体化できてしまうかを思い知らされるという、うれしい驚きの結果となった。本当に簡単だった。ブラウザベースのCADプログラム、TinkerCadにも挑戦して、そこで同じデザインが展開できるか試してみたいと思うようになったほどだ。それも簡単にできた。時間もほとんどかからなかった。
次なるステップは、型のCADファイルを123D Makeに読み込ませることだ。私はファイルを選択し、積層型モデル用のファイル形式を選択し、使用する材料のサイズを指定して(24×18インチの1/4インチ厚)、それから、えーと……、とにかく完了した。マジメな話、プログラムはモデルを最適な枚数の層に分割して、画像をPDFで出力してくれた。データはそのままレーザーカッターに送ればいい。ここで大きな決断を迫られた。アクリル板を使うか段ボールを使うかだ。安くあげるという方針に従い、私は段ボールを選択した。パーツをレーザで切り出したあと、プログラムの解説に従って、接着剤を塗って重ねていった。これまた、非常に簡単な作業だった。
そして、段ボールを重ねて作ったモデルの外側に薄く紙粘土を塗り込んだ。型作りや彫刻用の室温で効果するタイプのものだ。これは型に過ぎないのだとはわかっていたけれど、私はその外観を気に入った。とても簡単に作れるし、複製も簡単なので、私は今、段ボールと紙粘土のプランターで、直接、植物を栽培する実験を行っている。調べてみたところ、培養土によって段ボールが紙粘土の型の中で分解されて、リッチな堆肥になるかもしれないことがわかったのだ。どうなるか楽しみだ。
うまくいくかどうかは別として、ここまでは非常に実り多いプロセスだった。このプロジェクトを始めて2週間のときに新しいテクノロジが登場して、この新米Makerに、アイデアを安く素早く試作できる技術を与えてくれた。もしこれが1カ月前だったら、こんなにできていなかったはずだ。私には個人的な体験だが、これは大きなMakerムーブメントを象徴するものでもあると思う。ツール(とそれが簡単に使える環境)が急速に発展して、受動的な消費に対抗する能動的な創造への障壁がどんどん取り除かれていく。その速度は私たち自身が気づかないほど速い。すべてのサインは、物作りの最後の壁に向けられている。それは「手を動かし始めること」だ。ゼロからMakerまでの距離は、日々、短くなっている。
過去の記事:Zero to Makerの旅
– David Lang
原文