2016.06.14
Makerのための5つのメタレベルな助言
この「Make:」では、自分の手で何かを作っるためのコツや知恵や技術を紹介してきた。切ったり、貼ったり、削ったり、つないだり、ときには工房を整理したりするためのコツだ。
今回は、ちょっと違う。もっと「メタ」なレベルだ。メイキングの頭を広げるものであり、考え、プロジェクトの計画、予想をまとめる方法であり、Makerとしていかに振る舞うかに関することだ。
バード・バイ・バード
私の好きな本に、Anne Lamottの『Bird by Bird』(邦訳は『ひとつずつ、ひとつずつ』)という、執筆と生活のアートに関するものがある。そこで著者は、タイトルになった物語を話し、それがなぜ彼女の人生の原則になったかを説明している。物語はこんなふうだ。子どものころ、彼女と彼女の家族は長い夏季休暇旅行に出ていた。彼女の10歳の弟は、学校の夏休みの宿題を持ってきていた。鳥に関するレポートだ。なんでも先延ばしにする彼は、夏がほとんど終わるまで何もしないうちに、家族は旅行から家に帰って、学校が始まった。最後の瞬間まで待って、彼はパニックになってキッチンのテーブルに向かって腰掛け、鳥の本を何冊も積み上げ、3×5インチのカードを眼の前に積み上げた。もういっぱいいっぱいだ。弟を元気付けて、いくらかの希望を与えようと、父が彼の肩に手をおいて、「鳥を一羽ずつ見てごらん。一羽ずつ(bird by bird)だ」と言った。やはり何事も先送りにしたがるLamottは、同じ助言に頼ったことがあった。毎日、その日の仕事を片付けるために、どんなに忙しい日でも、彼女は自分に鳥を一羽ずつ見るように言い聞かせた。3×5インチのカード1枚、ひとつの段落、ひとつのページ、といった具合だ。扱いやすい塊にするのだ。
複雑なプロジェクトに取り組むとき、フィジカルコンピューティングを学んだり、ロボットを作ったり、膨大な数のプロセスやパーツを扱う仕事を請け負ったりしたとき、小さな扱いやすい塊に小分けすることは、とても有効だ。鳥一羽ずつだ。バード・バイ・バード。
ケニー・ロジャースのルール
見るからに簡単そうな作業なのに、どうしてもうまくできなくて頭に来たという経験はどのくらいあるだろうか。どれだけ頭に来ようが、やり直そうが、いずれにせよイライラしながらやることになる。しかし、腹が立って、家具に八つ当たりする前に、休みをとろう。寝て忘れよう。そうして戻ったときは、魔法のようにうまくできるようになっている。最初のアレはなんだったんだろう、と思うだろう。私はこれを「ケニー・ロジャースのルール」と呼んでいる(ロジャースがヒットさせた『ギャンブラー』という曲の歌詞にこうある。「いつ止めるかを知っておくべきだ。いつ止めるべきか。いつ歩き去るか。そして、いつ戻るべきか」)。信じてほしい、このルールを適用すれば、結局は時間の節約になる。ほぼ毎回だ。
ものの名前にはパワーがある
言葉オタクとして、私はいつもスラングや俗語や専門用語に魅了される。そこは言語の大西部だ。Makerとしても、同じ興味を持っている。いろいろな技術、学術分野、材料、工程などで使われる用語だ。そうした言語を知っていると、それぞれの専門分野で、驚くほどコミュニケーションがうまくいくことがわかった。魔法の世界では、そのものや人の本当の名前を知ると、それらを操るパワーが得られると言われている。ある意味、それは本当だと思う。それをなんと呼ぶかを知っていれば、学習が早い。このごろは検索エンジンもずいぶんと寛容になって、適当な名前でも検索してくれるようになったが、正しい用語を知っておいて使うことが、やはり望ましい。
早く作る、しょっちゅう作る
私は「物書きは書く」という、作家の格言が好きだ。筋肉は、いつも使って鍛えておかなければ強くならない。ものを作る場合も同じこと。Makerは作る。常日ごろから工具をいじっていたり、新しいものを作ろうとしていたり、新しい技術や工具を習得しようとしてたなら、あなたは成長する。職人技が身につく。
私が創刊50号を記念して「Make:」Volume 50に書いたが、何人かの外部筆者も同じことを言っている。Jimmy DiRestaの助言はこうだ。「新しいマシンの使い方を憶えたければ、今すぐそれで何かを作ってみることだ。それ以外の方法よりも、すぐにミスを隠す方法を学べる」
ヘルシンキのバス停で下りる
TwitterのMonthly Maker Chat最新版で、エンジニアのStar Simpsonはこう尋ねた。「失敗したプロジェクトから学んだいちばんの教訓は?」と。それに対する書き込みのなかで、彼女はラジオジャーナリスト、Ira Glassの言葉を載せている。下のビデオで彼は、たとえ失敗に直面しても、退屈な作業であっても、創造力の本質と続けることの大切さを語っている。
私が会った優れたMakerは、何年もものを作り続けている。とにかくやりぬくことだ、と言っています。
別のアングルから似たようなアイデアを考えてみよう。創造力のヘルシンキのバス停理論だ。それはこんな話だ。ヘルシンキのバスステーションからは、1本の大きな道路が延びている。どのバスに乗ろうとも、最初の数マイルはみな同じバス停に止まりながら同じ道路を行くことになる。作者は、これはアーティストとしてクリエイティブな仕事を始めるときと似ていると言う。しばらくは、どんなに頑張っても、作品は何かの真似になってしまい、面白くない。同じ道の同じ停留所。別の人の作品と比べられてしまい、気力を失う。しかし、ヘルシンキを出たルートは、バスにそのまま乗り続ければ(頑張って、失敗から学び、自分の作品を完成できたら)、すべてのバスは、いずれはそれだけの特別な道を進むようになる。
つまり要約すると、鳥を一羽ずつ見て、専門用語を話せるようになって、すぐに、しょっちゅう作るようにして、必要なときは休み、なんであってもそのクソッタレなバスに乗り続けろ!
(写真:Keith Simmons)
[原文]