Electronics

2010.06.03

Maker Faire Bay Area 2010の「瞬間」

Text by kanai

たぶん、Maker Faireに関わった人、Maker Faireに出展した人、Maker Faireを見学した人はみな、あらゆる体験を凝縮したような瞬間や、あらゆる体験の上にさらにトッピングされるような特別な瞬間に、ひとつかふたつ出会っていることだろう。私は、毎年そうした報告をするのが楽しみだ。上のビデオは、Makeの編集者でありMaker Faireの創始者でもあるDale Doughertyが、約770キログラムの8本足電動歩行マシン、Mondo Spiderに乗っているところだ。Blake Maloofが携帯カメラで撮影してくれた。Daleは「ものすごく大西部な感じだ」と感想を述べている。このマシンを停めて(ちなみに見事な駐車でした)、降りてきた彼は「これぞボクのMaker Faireの瞬間だよ」と語った。
私には2つの際立つ瞬間があった(実際は10回以上あったけど、この2つに絞った)。
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Zach Debordが製作したアーティスティックなPummerだ。私のデモで披露したものだ。
ことの始まりは私がMake:Projectsのステージで行った「How to Build Pummers」に息子と参加した母親からの1通の電子メールだった。彼女によると、7歳になる息子は難読症で、他の子供と違うことにひどく悩んでいるという。デモの間、iPadの画像をみんなに見てもらえるよう、書画カメラに写す角度の調整で手間取ってしまったのだが、そこで私は、自分が難読症であることをみんなに打ち明けた。そのとき、息子の顔が「輝いた」と彼女は教えてくれた。彼は、彼がすごくかっこいいと思うことをやって、見事に成し遂げた人が、自分と同じ問題を克服していたと知って、何かを感じたらしい。このメールにはものすごい感動を覚えた。涙がこぼれた。チームのメンバーに読ませたところ、みんなも泣いていた。世間には、みんなと違うことが、障害ではなく財産になる社会もある。Maker Faireは、間違いなくそんな社会だ!
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もうひとつの瞬間は、Maker Shed Merit Badgeとハンダ付け教室テントに関するものだ。これは、Maker Faireでいちばん好きな出来事のひとつになっている。私は、これほど多くの人たちにハンダ付けを教えられて嬉しく思っている。そして、このバッヂがきっかけで多くの会話が始まることを喜ばしく感じている。この名誉章を付けた初心者たちが誇らしげに歩きまわっていた。私がMaker ShedのSolarboticsベンチにいたDave Hrynkiwと話をしていると、娘連れの父親が近づいてきて、娘が始めるのにちょうどいいキットはないかと尋ねられた。Daveは新発売のBeetleBotを指さして「ハンダ付けの必要がないんです。ドライバー1本でできます」と教えた。しかし娘さんは顔をしかめた。「この子はハンダ付けができるんですよ。ハンダ付け教室を受けてきたところですから」と父親は誇らしげに答えた。そしてDaveは、Mousebot kitのほうへ彼らを導いていった。素晴らしい。
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Phillipも、彼とLimorのMaker Faireの瞬間について書いてくれた。
ボクたちがMaker Faireでうれしかったのは、Adafruitのキットを作ったことがある娘とその親がひっきりなしに訪れてくれた。彼らはAsk an Engineerの視聴者で、Ladyadaに会いたくて来たという子供たちもいた。Jeffが撮ってくれた写真がある。すごくよく撮れているよ。:)
それから、毎週Ask an Engineerを子供といっしょに視てくれているという人から、LadyadaとAmanda(w0z)の番組を何度か視たあと、こんな質問をされたと話してくれた。

エンジニアには男もいるの? それとも女だけの仕事なの?

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ProdModのLED Hula Hoop kitの写真。Makers Marketで売ってます。
Rachel Hobsonより。
これがいちばんかどうか、ちょっとわからないけど、フィエスタ通りを歩いてエクスポホールへ戻る途中、LEDフラフープを持った子供たちが帰っていくのを見た。彼らは、この瞬間をまったく普通に享受していた。無数のアートや魔法のような展示に囲まれた彼らを見て、私はその場に立ち尽くした。Maker Faireを見て育つこの子たちが、いかに幸運であるかと考えたのだ。彼らにとって、この環境はまったく当たり前のものであり、彼らは、こうした魔法や創造性やコミュニティーが実在することを知りながら大人になっていく。私はそうではなかった。だからこそ、私はMaker Faireにこれほど入れ込んでいるのだ。ずっと夢見てきた場所にやっと足を踏み入れた感じがする。しかしあの子供たちは、なんとも幸運なことに、これが発育の一部となっている。彼らにとって、これが「普通のこと」であることの意味を考えると興奮する。これが彼らの将来にどんな影響を与えるのだろうか。今からものすごく楽しみだ!
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World Maker Faire in New York(9月25、26日)の準備を手伝ってくれているNick Normalはこう話してくれた。
私の頭に残っているのは、The Crucibleのメンバーがライブで披露した溶接の様子を見入るこの子の表情だ。彼は何分間も、完全に釘付けになっていた。飽きることも、気が散ることもなく、数フィートの位置からじっと溶接を見つめていた。一度、彼は振り返って父親がまだいるかを確かめていた。お父さんも釘付けになっていた。そして目を元に戻し、さらに見つめていた。
Maker Faireに来た人がいたら、キミの瞬間を教えてほしい。
訳者から:それでは、Make Tokyo Meeting 05で心に残った瞬間をば……。いろいろあったけど、メイン会場の入口近くに置かれた雑記帳に「オレもなにかつくるぞー!」と書かれたあったのを見たときは、うるっときました。うれしかった―。
– Gareth Branwyn
原文