Electronics

2010.07.30

オープンソースハードウェア(OSHW)定義案バージョン0.3とサミット

Text by kanai

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この5年強の間に、オープンソースハードウェアという言葉は、開発者自身が、ソース、回路図、ファームウェア、ソフトウェア、素材一覧、パーツリスト、設計図、基板設計ファイルなどのあらゆる開発情報を公開すると決めたプロジェクトに対する総称として、どんどん一般化してきた。商用を含めて、誰でも自由に作ることができる。Linuxなどのオープンソースソフトウェアに似ているが、これはそのハードウェア版だ。
オープンソースハードウェアには、これまでも、現在も、将来的にもさまざまに定義されるものであろうが、主導的なMakerやいろいろな考えを持つ人たちが集まってその問題について語り合うことができた。そしてなんと、Open source hardware (OSHW) definition version 0.3(オープンソースハードウェアの定義バージョン0.3)がまとまり、ニューヨークのMaker Faireの直前にサミットが開かれることになった。
Ayah Bdeir(Eyebeamの研究員で今回のコーディネーター)は、初めての定義とサミットの開催決定に関して、次のコメントを発表した。

私は、MITメディアラボ CCGグループにいたころに、イノベーションと社会変革の推進力としてのオープンハードウェアに興味を持ち始めました。そして、ニューヨークのEyebeam Art and Technology Center の上級研究員になったときに、完全にハマってしまいました。現在、私はオープンハードウェアの(クレイジーなまでに)強力な信者となってます。私がlittleBitsを始めたとき、私はハードウェアにオープンソース運動を採り入れるさまざまな試みを行いました。
有能なるアドバイザー、クリエイティブコモンズのサイエンス担当のバイスプレジデント、John Wilbanksと膝をつき合わせて法的問題に取り組むうちに、CCとの調和をはかるコミュニティのための論議の場を作り、オープンハードウェアライセンスの確立を促すという使命に着手しなければならないと判断しました。Opening Hardware: A workshop on Legal tools for open source hardware(オープンソースハードウェアのための法的ツールに関するワークショップ)というワークショップを3月17日にArduino、Adafruit、Buglabs、MakerBot、ChumbyなどのOHのパイオニアに、Jonathan Kuniholm (Open Prosthetics)、Chris Anderson(Wired)、Mako Hill(OLPC, Wikipedia)、Jon Philips(Qi)、小林 茂(Gainer)、Becky Stern(Make)、Thinh Nguyen、John Wilbanks(CC)、そして私たち(littleBits, Eyebeam)といった面々を加えてEyebeamで開催しました。その後、私たちと、素晴らしいOHのスターたち(Evil Mad Scientist、Parallax、Sparkfun、Lilypad)が加わって定義の取りまとめを進め、今日、大変な興奮とともに、バージョン0.3を公開する運びとなりました。
先日、私はクリエイティブコモンズのフェローになりました。私たちのコミュニティにCCが関与することは、大変に重要な一歩になります。9月23日には、Alicia Gibbs (buglabs)と私が、MakerFaireの中でOpen Hardware Summitを主催します。そこでは、ライセンスについて論議し、できればバージョン1.0を世界に向けて発表したいと思います。どうかみなさんも参加してください。そして、私たちに資金援助を、支援をお願いします。賛同くださるだけでも結構です。
Ayah Bdeir
2010年7月14日

さて今後は、オープンソースハードウェアの定義を見て、1.0の取りまとめに協力してほしい。この4~5年間、私は毎年何百ものプロジェクトを紹介してきたが、ようやくハードウェア開発者たちとの間で、オープンソースハードウェアとは何か、今後の課題は何かに関する合意を得るに至った。オープンソースハードウェアはすでに存在する。それは現実だ。何十もの企業が、素晴らしい製品を作り、”レシピ”を公開しつつ大きな利益を上げている。
以下は、FreedomDefinedから写したライセンス v.0.3だ。オリジナルはhttp://freedomdefined.org/OSHWを見てほしい。

Open Source Hardware(OSHW)Draft Definition version 0.3

OSHW定義草案0.3は、Open Source Definition for Open Source SoftwareとOSHW定義草案 0.2を元に、TAPR Open Hardware Licenseのアイデアを採り入れて作られました。下記のライセンスを発表したOpening Hardwareワークショップのビデオと資料はここにあります。
序文
オープンソースハードウェア(OSHW)とは、すべての人に製造、改造、配布、使用ができるように設計が一般に公開される形のある実体……機械や装置などの製造物……を示します。この定義は、オープンソースハードウェアのためのライセンスの開発および評価の指針となることを目的とします。
留意すべきは、実体のある物を作るうえで、かならず物理的な資源を取り込むという点において、ハードウェアはソフトウェアと異なるという点です。そのため、OSHWライセンスの下で物(製品)を作る人や企業は、その製品の製造、販売、保証、その他の許諾行為をオリジナルの開発者が行うかのように思わせる表示をしないという責任を負います。また、オリジナル開発者が所有するいかなる商標も、使わないように気をつけなければなりません。
オープンソースハードウェアの配布条件は、以下の基準に準拠しなければなりません。
1. 資料
ハードウェアを配布する際には、設計ファイルを含む資料を添付してください。また、この設計ファイルの改変と配布も自由に行える必要があります。製品に資料を添付できないときは、ごく一般的な方法により、相応な複製費用で、望ましくはインターネットから無料ダウンロードで、資料を入手できる態勢を整えておく必要があります。この資料には、ハードウェア開発者が設計を変更できるよう、設計ファイルを含めてください。設計ファイルの内容を故意に分かりづらくすることは認められません。また、コンパイルされたコンピューターコードに類似する中間的形態……たとえば、CADプログラムの印刷用プリント基板パターンのファイルなど……を代用にすることも認められません。
2. 必要なソフトウエア
ハードウェアが正しく操作でき本来の機能を発揮できるためにソフトウェアが必要な場合、または組み込む必要がある場合は、少なくとも下記のうちひとつを資料に盛り込んでください。
必要なソフトウェア(OSI承認オープンソースライセンスの下に公開されているもの)または、ハードウェアが正しく操作でき本来の機能を発揮できるためのオープンソースソフトウェアを記述するに十分な、常識的に見て率直でわかりやすいと判断される資料。
3. 派生作品
このライセンスでは、改造および派生作品、さらに、オリジナルのハードウェアのライセンスと同一条件での配布を許可してください。またこのライセンスは、製品に添付された設計ファイル、またはその派生設計ファイルをもとに作られた製品の製造、販売、配布、使用を許可するものでなければなりません。
4. 再配布の自由
このライセンスは、出典の異なる複数の設計を含む集合的配布の構成要素としてのプロジェクト資料の販売および無料配布を、いかなる団体に対しても制限してはいけません。このライセンスでは、そうした販売にともなう著作権料、またはその他の料金を要求してはいけません。このライセンスでは、派生作品の販売に伴う著作権料、または、その他の料金を要求してはいけません。
5. 帰属
このライセンスでは、設計ファイル、製造製品、派生製品、あるいはこれらすべてを配布する際には、派生作品にオリジナル開発者が特定できるようにしてください。また、このライセンスでは、派生作品には、オリジナル設計とは異なる名称、バージョンナンバーを付けてください。
6. 人および団体を差別しない
このライセンスでは、いかなる人および団体をも差別してはいけません。
7. 分野および目的を差別しない
このライセンスでは、ハードウェアを使用する分野および目的によって使用者に制限を加えてはいけません。たとえば、商用利用を制限したり、核開発での利用を制限するといったことはできません。
8. ライセンスの配布
ハードウェアに付与された権利は、製品または資料を再配布された者にも与えられます。この際、受け手は新たにライセンスの取得手続きを行う必要はありません。
9. ライセンスは単独製品に特定的に与えてはならない
ハードウェアに付与された権利は、大規模な製品の一部品として組み込まれたときに変更されることがあってはいけません。もし、このハードウェアが製品から取り出され、ハードウェアのライセンスの条件下で使用または配布された場合も、このハードウェアを受け取ったすべての人に、オリジナルの製品とともに与えられている同じ権利が与えられます。
10. ライセンスは、他のハードウェアまたはソフトウェアによって制限されてはいけない
このライセンスでは、ライセンスされたハードウェアと共に配布または使用する他のハードウェアまたはソフトウェアに関して制限を加えるものではありません。たとえば、同時に販売された他のハードウェアをオープンソースであると主張することはできません。または、このハードウェアにはオープンソースソフトウェアしか使えないといった制限はできません。
11. ライセンスは技術的に中立であること
このライセンスのいかなる条項も、個別の技術またはインターフェイスの形式を前提としてはいけません。
あとがき
このオープンソースハードウェア定義に署名した人たちは、オープンソース運動が情報共有のためのひとつの手段にすぎないことを認識しています。私たちは、この定義に合う合わないを別として、あらゆる形のオープン化と共同製作を促進し、支援していきます。
支援者一覧
OSHW定義案0.3は、次の人々と組織の支援をいただいてます。あなたもどうぞ、ここにご自身の名前を加えてください。個人名に所属は書いても書かなくても結構です。所属団体名を併記しない場合は、個人的な支援として扱われます。
David A. Mellis, MIT Media Lab and Arduino
Limor Fried, Adafruit Industries
Phillip Torrone, Make and Adafruit Industries
Leah Buechley, MIT Media Lab
Chris Anderson, Wired and DIY Drones
Nathan Seidle, SparkFun Electronics
Alicia Gibb, Bug Labs
Massimo Banzi, Arduino
Tom Igoe, Arduino, ITP/NYU
Zach Smith, MakerBot Industries
Andrew “bunnie” Huang, bunniestudios
Becky Stern, MAKE
Windell Oskay, Evil Mad Scientist Laboratories
John Wilbanks, Creative Commons
Jonathan Kuniholm, Open Prosthetics Project/Shared Design Alliance
Ayah Bdeir, littleBits.cc/Eyebeam/Creative Commons
他のバージョンとWikiはこちらをご覧ください。この草案(原文)はここからコピー・アンド・ペーストしました。 http://freedomdefined.org/OSHW
– Phillip Torrone
訳者から:これはMake:Japan のブログ記事用にざくっと訳したものなので、公式に日本語訳が発表された場合には、用語や内容が異なる場合があります。あくまでも、参考程度にご覧ください。
原文