Fabrication

2012.12.20

Printrbotが食洗機を直してくれた

Text by kanai


私は、購入する理由がみつかる前から、何年間も3Dプリンターが欲しかった。3Dプリンターを買う前から、ホビー向けプリンターの性能的な傾向を調べつくし、Thingiversからプリンターの元が取れる面白い使い方を集めてリストを作ったりしていた。最初、リストは悲しいぐらいに短かった。栓抜きなどの道具が両手で数えられる程度あったほかは、ほとんどの人が、3Dプリンターの新しい部品を作るために使っていた。

Thingiverseのファンマウントを装着したKyleのPrintrbot。比較のためにオリジナルのパーツを手に持っている。
栓抜きや自分自身のスペアパーツを作るためだけに、800から1200ドルもするマシンを買うというのでは、なかなか決心が付かなかったのだが、私には切り札があった。ウチの食洗機はプラスティック部品が損傷していて、ずっと半分壊れた状態だったのだ。3Dプリンターがあれば、その部品をプリントできると私は考えていた。ウチにあるのはFrigidaire製食洗機で、3つのスプレーアームがある。ひとつは下のラックの下側、ひとつは上下ラックの間、もうひとつは上ラックの上部にある。あの運命の日、誰かが背の高いコップを上のラックに入れたのだ。上のスプレーアームがコップに当たり、動けなくなった。そこに余計な力がかかり、回転軸にはまっていた小さなプラスティックの円形の部品が外れてアームが落ちてしまった。最初のころは、元通りにはめ込めば直ったが、少し使っているうちにまた落ちてしまう。そのうち、部品もアームもすり減って、戻らなくなった。
普通なら、修理業者を呼んで直してもらうところだが、ギークである私は、3Dプリンターさえあれば、オリジナルよりもいい部品をプリントして直せるのにと考えた。しかし3Dプリンターは持っていなかった。なので、手に入れるまでは2つのスプレーアームで食器を洗い続けることとなった。不完全だが、手で洗うよりはましだ。
3Dプリンターオーナーとなるための最後の一押しをしてくれたのは、Printrbotの550ドルという価格だった。それが発売されるまでは、いちばん安い3DプリンターキットはRepRap Prusaキットで800ドルだった。それでは予算オーバーだった。Printrbotのオフィスはサンフランシスコ湾岸地区の近くにあったので、RepRapミートアップの間に立ち寄って、Brook Drumm本人の指導のもとにプリンターの組み立てができたのだ。プリンターの最初の調整が終わり、Thingiversから適当に選んだオブジェクトをいくつかプリントした後、私は食洗機に狙いを定めた。

3Dプリントしたハリネズミで遊ぶ Kyle の息子 Gideon くん。MAKEのUltimate Guide to 3D Printingに掲載されている。ガイドでは、ジョウロの口、単三電池アダプター、赤ちゃん用大きな鍵のオモチャなど、Kyleの3Dプリントオブジェクトをいくつか紹介しています。
食洗機の修理で出くわした最大の問題点は、私のCADのスキルが決定的に不足していたことだ。だが幸いなことに、当時私が務めていた会社には、CADに長けた技術者がいただけでなく、商用3Dプリンターを備えていた。私は、ひとりの技術者に私のPrintrbotのことを話したところ、部品を持ってくれば、そのCADデータを作ってくれると約束してくれた。比較的単純な部品だったので、彼は10分ほどで.stlファイルを作ってくれたばかりか、アームにはまる部分を、もっとしっかりはまるように改良までしてくれた。
その夜、私は試作品をPLAでプリントしてみた。きっちりはまったものの、PLAは食洗機内部の温度に堪えられないので、何度か使ってみたところ、アームは上のラックに落ちてしまった。次にABSでプリントした。部品はきっちりはまり、食器を何度洗っても落ちずに持ちこたえてくれた。
ABSを取り付けている間に、予備のためにあと4つをプリントしておいた。それは正解だった。それから2カ月ほど経ったとき、部品はついに摩耗してしまったからだ。3Dプリンターがなければ食洗機はずっと壊れたままだった。またはインターネットでひとつ9ドルの部品を買っていた。だが私は、ひとつ10セントの部品をはめ込み、自分の道を歩むことができた。
─Kyle Rankin


Kyle Rankinは、シニアシステムアドミニストレータであり、DevOpsのエンジニアであり、DevOps TroubleshootingThe Official Ubuntu Server BookUbuntu HacksKnoppix Hacksなどの著者。Linux Journal 誌で賞をとったコラムニストでもある。SCaLE、OSCON、Linux World Expo、Penguiconなどのオープンソースソフトウエアに精通している。Linux ユーザーグループのメンバーでもある。
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