Crafts

2012.08.03

郵便で届いた楽しい魔法の木箱

Text by kanai


今日もまたオフィスはてんてこ舞いの忙しさだった。仕事日は、深刻で頭を悩ませる事件、そそり立つ締め切り、過剰なコーヒーが入り乱れて混乱だ。少なくとも私の場合はそうだ。打ち合わせが終わってオフィスに戻ってくると、部屋の真ん中に私宛の大きくて重い箱が、魔法のように置かれていた。開けると中にはまた箱が入っていた。何重にもプチプチロールに包まれた木箱だ。私はちょっと苦労して木箱を取り出し、プチプチロールを剥がし、その重い箱をよいこらしょと机の上に置いた。いったい、こりゃなんだ? 誰から来たんだ? 見れば箱の上面には差出人のBlithe Hollow Cemetryという名前の焼き印があり、正面には私の名前と「49中17」という文字がペンで書かれていた。蓋は釘で打ち付けられている。一人では無理そうだ。それに、なにやら特別なものの予感がしたので、他の連中を呼ぶことにした。

私はクリエイティブディレクターのJason Bablerをオフィスに呼んだ。Jasonは、他の子供のプレゼントを開けたがる誕生日パーティーの子供のようにはしゃいで、ハンマーとノミを取り出して作業にかかった。

蓋を開けると、中はジオラマ用の草が貼られ、小さなシャベルが置かれていた。「掘るんだよ」とJasonに言われて、私は掘った。

掘り始めたが、緑色の土が出てくるばかりだ。ゾンビ化された墓の土か? 緑色の土が周囲に飛び散りはじめ、ずいぶん汚れる作業だと気がついた私たちは、MAKEラボに移動することに決めた。そして悲劇が起こった。

あちゃー、Jasonが箱をラボに持って行こうとしたら、箱が壊れて土があたりに散乱してしまった。Jasonのせいだからね。私じゃないからね!

さらに掘り続けると、中からレーザー彫刻を施された美しい棺桶が出てきた。


棺桶の蓋を開けると、一同は一斉に歓声と溜息をもらした(インターンのDanが丁寧に棺桶の細い釘を抜いてくれた)。中には恐ろしい死体が入っていたのだ。棺桶の蓋の内側には引っ掻き傷と、この哀れな犠牲者のイニシャルが刻まれていた。

で、私が掘り出したものはいったいなんだったのか? そいつは近日公開の映画『ParaNorman』に登場するキャラクタの非常に精巧に出来たシリコン製のフィギュアだった。『コラライン』を製作したコマ撮りアニメーションのスタジオ、LAIKA(3年前にもびっくりするほどクールなキャンペーンがこのオフィスを見舞った)がその映画を作っている(8月17日米国公開)。コララインの「口コミマーケティング」キャンペーンでは、当時のMAKEのアートディレクター、Daniel Carterが特製コララインボックス(50中1番)をゲットしている。今回は私が「Weird Hero」(変なヒーロー)に選ばれ、49個中17番目のParaNormanボックスが送られてきたわけだ。選ばれし存在というわけだ。ニール・ゲイマン(作家)は2番目の箱をゲットしている。
興奮が冷めて、ゾンビの墓場の土をテキトーに掃除したあと(カーペットの緑の染みは簡単にとれた)、Jasonと私は、このマーケティングの素晴らしさについて語った。Jasonはこう言った。「本当だよ。オフィスに魔法と大混乱の時間をもたらしてくれたからね (いい記事になると思わせてくれたくらいね)。毎日の決まりきった仕事に、新鮮な驚きをもたらしてくれたよ」
“私の” ゾンビは私宛の手書きの手紙を持っていた。それには、物作り、「普通」に満足しないこと、変な子供こそ魅力的な大人になることの魔法について書いてあった。彼らの会社のモットーは#weirdwins だからね。まったく同感だ。自分が変人であることの(そして口コミマーケティングの成功の)記念品を誇りを持って机に飾ろうと思う。[写真撮影:Gregory Hayes]
– Gareth Branwyn
原文