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2017.10.31

ニューヨーク教育事情#1 女子校に設置されたメイカースペース

Text by Toshinao Ruike

今年のMaker Faire TokyoでのNerdy Derbyによるミニチュアカーレースを覚えているだろうか。メンバーのTakとJaymesの2人はそれぞれニューヨークの学校で講師をしていて、今回ニューヨークのMaker Faireを訪れたついでに彼らの職場を訪れた。

行き先が学校であるという以外あまり情報もなく、教えられたマンハッタンの住所を訪れると、警備のいる入口でJaymesが迎えてくれた。そこは女子校のプレパラトリー・スクール(大学進学準備のための学校)だった。この私立学校は日本での小中高にあたる学年と幼児教育、さらにそれ以前の保育の段階から子どもたちを受け入れている。少し気難しい年ごろではないかと少々構えて中に入ったが、通路ですれ違う生徒たちは皆屈託のない笑顔で挨拶をしてくれた。

Girl school in NY

その学校の中にメイカースペースがあり、3Dプリンターやレーザーカッターや一通りの工具に加えてミシンなども揃っている。技術科の授業だけではなく、放課後には生徒が来て誕生日プレゼントなどを作ったり、生徒の趣味のためにも利用されているという。特に部活のような活動ではないが、放課後に参加できるプログラムがいくつかあり、この日は「School Of Rock」という名前のプログラムが行われ、バンド演奏の経験がある先生が音楽室でギターやドラムの演奏を教えていた。

Girl school in NY1

美術の教科とも連携している。生徒の書いた絵をレーザーカッターで木版に刻み、版画を作る。デジタルとアナログの技術を合わせた作品作りだ。

Girl school in NY2

LEDの照明パネル(左上)のデザインを行う際は作る前にデザインの素案やLEDの色や個数を紙に書く(右上)、その他ポートレートなどをコンピューター上で加工して作っていた。

そもそも女性は科学分野やエンジニアリングに向いていないという偏った見方も世の中にあるが、実際に女子生徒に教えてみてどう思うか?とJaymesに尋ねてみると「まったく関係ないと思う。小さいころから何か言われたり、環境に左右されることがあるんじゃないかな」と彼は言った。アメリカでも技術科の教員は男性の割合が多く、テクノロジー分野の働き手の男女比もかなり偏っている。しかし「Hidden Figure(邦題:ドリーム)」のような女性が科学分野で活躍する姿を描いた映画が公開されたり、女性を適切に評価しようという動きも高まっているという。今回紹介した事例は私立の女子だけの一貫校のこととはいえ、状況は確実に前に進んでいると言っていいだろう。