Electronics

2007.04.26

オープンソースハードウェアって何? – 1つの出発点

Text by kanai

オープンソースハードウェアとは、MakeとCraftの両誌で私たちが使用している用語です。私たちが発売している電子キットにもオープンソースの製品があります。オープンソースハードウェアは、私たちが参加したSXSWカンファレンスでの議題にもなりました。では、オープンソースハードウエアとは何でしょう?

いくつかの定義がありますが、オープンソースソフトウェアの考え方に由来するものが代表的です。一般にオープンソースとは、あるライセンスのもとに(あるいはパブリックドメインのような合意をもとに)、ユーザーがプログラムの中身を調べたり、変更したり、改良したり、さらにはオリジナルでも改良版でも、ユーザーが再頒布することが許されているソフトウェアのことを指します(オープンソースを参照してください)。
ハードウェアの場合は、どういうことになるのでしょう?
まずは電子製品を、次に示すような階層に分解して、それぞれに推奨ドキュメントタイプや使用権の条件を考えます。
ハードウエア (メカニズム) 図面
筐体、機械的メカニズムなどの図面です。平面モデルの場合の推奨ドキュメントタイプは、DXFやAI(Adobe Illustrator)などのベクターグラフィック形式で、寸法を記入したもの。
例: オープンソース3DプリンターRepRapのサーモプラスト押し出しヘッドに使われているモーター回転スクリューブロック
Make 568
M5-Studding
回路図および配線図
部品リストを含む電子回路の図面です(部品リストと一体のものもあります)。多くの場合、配置図とセットになっています。推奨ドキュメントタイプは、PDF、BMP、GIF、PNGなどの一般的な画像形式。
例: オープンソースの情報機器 Chumby3.3Vと5Vのレギュレーターの図面。
Make 560
部品リスト
使用する部品、入手先、パーツ番号など。
例: オープンソースのRoland 303 MIDIシンセサイザークローン x0xb0x部品リスト
Make 561

配置図
部品配置、プリント基板、ドリルファイルなどを含む物理的な部品の配置図です。多くの場合、回路図とセットになっています。推奨される配布方法は、GerberのRS274xとExcellon(ドリルファイル)です。
これは、PostScriptによく似たプリンターですが、プリミティブがテキストや曲線の代わりにハンダの線や部品になっているというものです。
例: MAKE: Daisy (オープンソースMP3プレイヤー)のボード(.brd)ファイルです。
Make 562
Daisy Top Sm
コアまたはファームウエア
マイクロコントローラーやマイクロプロセッサーのためのソースコードです。一部には、ソースコードがチップの設計自体に組み込まれているものもあります(VHDLの場合)。推奨される配布方法は、ソースコードのテキストデータと、チップ用にコンパイルしたバイナリデータです。
例: オープンコアの 8080互換CPU用の 8080インストラクションセット実行のためのコードスニペット
Make 565

ソフトウエアまたはAPI
電子回路とコンピューターを接続、またはコンピューターから操作するためのソースコードです。
例: 簡単なサンプルプログラムを表示する Arduino IDE
Ardscreenshot0003
これらの階層はどれもオープンソース化が可能ですが、どこをどうオープンにするかは、作り手によってまちまちです。
Wrt54Gl
たとえば、WRT54GL は、ファームウエアだけがオープンソースになっています(GPL)。
Sidetilt2Sm
ロボット掃除機 Roomba は、“オープン” API (インターフェース)を備えています。
Make 563
情報機器の Ambient Orb は、オープンソースではありませんが、回路図と部品リストだけはドキュメント化されて、自作派の人たちのために公開されています。
ハードウエアのオープンライセンス化の可能性を考え、実現に向かって努力しているグループもあります。

  • Open-source Hardware License – Creative Commons のようなライセンス – Link.
  • Open hardware licenses – Link

製品
実際に、どんな活動からどんな製品が出来ているのかを見てみましょう。ここはワクワクさせられる部分です。すでに前出したものも含め、純粋なオープンソースに近いハードウエアの製品を紹介します。
Arduino
Arduino – フィジカルコンピューティング用プラットホーム (10,000個も出荷された!) – Link
241868326 6F46603Cc3
Chumby – 情報機器 Glancable – Link

327914789 Cc61974409
MAKE: Daisy MP3 player – オープンソースのMP3プレイヤー – Link

Reprap First 3D Cartesian
RepRap / Fab@Home – オープンソースの3Dプリンター – Link
Dsp Near Done Tiny
Open cores – FPGAチップ用のVHDLのコレクション (本当のオープンソースハードウエアの最初の実例と言われている)- Link
Make 564
OpenEEG – オープンソースでキットでも入手できるEEGのプロジェクト – Link

Clearpanel
x0xb0x – Roland 303 クローンのMIDIシンセ – Link
これらすべてが完全にオープンであったり、理想的なオープンソースの形になっているというわけではありません。オープンでないツールを使わないと改造できないものもあります。しかし、この試みは始まったばかりのヨチヨチ歩きの段階だということを理解してください。
MakeとCraftでは、私たちのキットを製造しているメーカーに、オープンソースハードウェアの考え方を説明し、また共同でキットを開発するときにはオープンソースに対応したライセンスを考えてもらうという活動を通して、この生まれたばかりのハードウェアの運動を後押ししていきたいと考えています。今のところは、うまい具合に回っています。今後は、オープンソースのキットをより多く提供しつつ、電子製品全体が、今よりもっとオープンになる時代を目指します。
しかし、オープンソースになると何がいいのでしょう。MakeとCraftの視点で、もっともわかりやすい利点は、教育です。オープンソースハードウェアのプロジェクトでは、何かを一から(それこそプリント基板から)作り上げることが可能になります。またはキットを使えば、IKEAの家具のように組み立てるだけでも工作を体験できます。しかし、単純な家具の組み立てとは違い、電子製品を作る場合は、その動作原理を学習し、新しい技術を身に付ける必要があり、それだけ勉強になるというわけです。電子製品の製作は、ソフトウエアにたとえるならば、プロジェクト全体の中の”コンパイル”段階であるとも言えます。Dorkbotや私たちのMaker Faireのようなイベントを通して、あなたもこの運動に参加できます。オンラインでは、Instructablesなどがあります。
そのほかの利点として、電子製品やキットの改良、新機能の追加、ピアープロダクションを取り込むといったことで、一般的に製品の質が向上し、社会が向上するということがあります。メーカーはこうして生まれたキットを、ビジネスとして販売することもできます。- Link

すべては、ゆっくりと、しかし着実に進んでいます。現在、ソフトウェアに比べてハードウェアの進化はゆっくりしたものです。製造業が縮小することも考えられます。しかし、完全に消えてなくなることはあり得ません。ハードウェアは、1980年代のソフトウェアと同じ状況にあると考えられます。当時は、無数のデベロッパーが林立しながらもオープンソースのデベロッパーはほとんど存在していませんでした(まだコンピューターがほとんど普及していなかった70年代に近いかもしれません)。私たちは、将来、無数のハードウェアデベロッパーが現れ、ハードウェアの世界が花開くことを夢見ています。

すべては、これからです。みなさんのご意見やお考えを、ぜひコメントに書き込んでください!
本記事制作にあたって協力いただいた、Limor Fried、Nathan Torkington、Eric Wilhelm氏に深く感謝します。
う!
編集から: このエントリを受けて、Slashdotでも、議論が行われています。

[原文]