Science

2010.10.25

Flickrの写真からわかったクジラの記録的な大旅行

Text by kanai

Whale 1363.jpg
データはいたるところにある。熱心な市民科学者(citizen scientist)なら、目覚ましい発見をしなくたって、私たちが毎日その中を泳ぎ回っている未分析の公共のデータの海を知的に公開して結果を導き出す方法を会得することで「プロの科学者」に昇進できるのだ。The Boston Globeに掲載されたこの記事は、その素晴らしい一例だ。

写真共有サイトで旅行者が撮影したクジラの写真を徹底的に調査したメーン州出身の市民科学者が、メスのザトウクジラがブラジルからマダガスカルまで、記録的な6000マイル(約9700キロ)の旅を果たしたことを実証した。ナンバー1363のこのクジラの、生れ故郷から別の場所への驚くべき大移動は、観光旅行者がFlickrにアップした写真と、1970年代から研究者たちが集めてきた膨大な数のクジラの尾のライブラリーとが合体して実現したソーシャルネットワーク時代の科学的発見だ。

クジラ1363号の尾は、1999年、ブラジルにおいて研究者によって初めて登録された。その2年後、ノルウェー人のFreddy Johansenがマダガスカルの海岸にいる彼女を撮影した。2009年、Freddyは、このときの旅行の古いネガをスキャンして、自分のFlickrアカウントにアップした。すると、この1枚がメーン州ハンコックのGale McCulloughの目にとまった。彼は旅行者が撮影したクジラの写真を日ごろからモニターして、尾の照合を行っていたのだ。彼女の発見に関する記事のオンライン版前刷りが、今日、Biology Lettersに掲載された。[ありがとう、Alan Dove!]
– Sean Michael Ragan
原文