Electronics

2011.07.15

DNAもDIYの時代に:OpenPCR出荷開始

Text by kanai

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待ちに待ったOpenPCRキットの出荷が始まりました! UPS が第一弾を集荷して、OpenPCRは5つの大陸の13の国々に向けて旅立っていきました。512ドルのOpenPCRキットには、すべての部品とツールときれいな解説書が入っています。組み立てに必要なのはドライバーのセットだけです。
PCRは、基本的にはDNAのコピー機です。寿司屋にまつわる噂を検証したり、HIVやH1N1などの病気を診断したり、自分のゲノムを調べたりといったDNAを扱う作業に使用します。PCR法を発明した人間は、1993年にノーベル賞を受賞しています。そしてこのOpenPCRは、世界初のオープンソースのPCRマシンなのです。
私はJoshといっしょに、4カ月以上かけてOpenPCRのプロトタイプを作りました。本当に楽しい日々でした。今年の5月には、Kickstarterのクレイジーな支援者の前にOpenPCRの最初のプロトタイプを発表して、158人が12,121ドルもの出資金を提供してくれました。それを元に、私たちは開発と製作を重ねて、信頼性の高い、いつでも故障せずに使えるマシンを完成させたのです。すごく大変だったけど。そうして今ようやく、発売にこぎ着けたというわけです。
OpenPCRは、研究所でも学校でもガレージでも使えるように設計されています。これを、科学好きな友だちに教えてあげてください。Facebookで「いいね」をください。なにか一言、感想をメールしてください。
OpenPCRの2つの「お初」
1. 512ドルで市販された最初の PCR マシン
大勢のお客さんが来て、口々にこう言っていきました。「なんてことだ。我々は1万ドルも払ったぞ。それにこーんなに大きいんだ(と冷蔵庫ぐらいに手を広げる)」今のPCRマシンはそんなに大きくありませんが、それでも、OpenPCRは世界でいちばん安くて、いちばん小さいと胸を張って言えます。
2. 初めてのArduino USBストレージ
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Arduinoハッカーには大ニュースです。通常、Arduinoはシリアルポートだけで通信をします。その設定はけっこう面倒でした。私たちは、OpenPCRを接続するだけで、すぐに使えるようにしたかったのです。ではどう実現したか? OpenPCRを接続すると、Arduinoは自分自身を「OpenPCR」という名前のUSBドライブとしてマウントします。コンピュータはそのファイルに書き込むことで、 OpenPCRに愛の言葉を渡します。Arduinoは、別のファイルに書き込むことでコンピュータに愛の言葉を返します。実装は大変でした。Arduinoに搭載されているチップの関係でサイズの制約も大きかったのですが、おかげでとても使いやすくなりました。また、シンプルなコンピュータインターフェイスを備える目的で、Adobe AirでMacとPCのどちらでも使えるアプリを作りました。OpenPCRはUSBでコンピュータにつなぐだけで使えます。OpenPCRアプリをダウンロードする以外は、とくに設定は必要ありません(JoshとXiaが奇跡を起こしてくれました)。
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私たちの、バイオ技術の分野でのさらなるブレイクスルーに期待していただけますでしょうか。今回の経験から、私たちはPCRをはじめとするバイオ関係の装置について、たくさんのアイデアが生まれました。今、私たちは新会社を立ち上げ、情熱に溢れた新しい仲間を求めています。現在、私たちのハードルになっているのは、製造(機械エンジニアです!)、流通(セールスとマーケティング)、そして新しいハード、ソフト、バイオウェア、そして工業デザインです。あなたがもしサンフランシスコの湾岸地区にお住まいで、私たちが作るクレイジーな DNA 関連装置を一般の人たちに広めるという事業に参加したいという方は、 contact@openpcr.orgまでご一報ください。
OpenPCR ブログで詳しい開発物語が読めます。


この記事の筆者について:Tito JankowskiはMakeのゲスト市民科学者で作家。ゲル電気泳動温度サイクルのためのオープンソースのツールを開発するなど、バイオ技術をより身近なものにする活動に従事。市民科学者によるガレージ・バイオ技術プロジェクトについて、もっと詳しいことを聞きたい方は、Titoに直接メールで質問してください。tito@openpcr.org
– Tito Jankowski
原文