Electronics

2011.10.21

Zero to Maker:何を知らないのかを知ること

Text by kanai


これから1カ月ちょっとの間、ちょっとヤル気のなかったMaker、 David LangがMakerカルチャーに身を沈め、我らの仲間、TechShopの寛大なるご協力のもと、できる限りのDIYスキルを習得していく様子をレポートします。彼は、何を学んだか、誰に会ったか、どんなハードルをクリアしたか(またはしなかったか)など、奮闘努力の過程を定期的に報告します。きっと面白いものになるよ。 – Gareth
Eric Stackpoleと私は、先週末にニューヨークで開かれたオープンハードウェアサミットとWorld Maker FaireでOpenROVを出展して、帰ってきたところだ。Maker Faire Bay Areaほどの規模ではなかったけど、あらゆる姿とサイズのMakerやクリエーターたちが信じられないほど大勢集まっていた。1から「ものすごい」の範囲で採点するなら100点満点だ。
David(World Maker FaireのOpenROVにて)
このZero to Makerのコラムでの体験がつまらないものに感じられたり、気持ちが萎えるような出来事ややりとりがたくさんあったけど、なかでも、強烈な会話がひとつあった。
Maker Faireが土曜日の夜にさしかかったころ、この Make Blogの編集長、Gareth BranwynがOpenROVを訪ねてきてくれた。Garethは、このコラムの最初のアイデアを持ちかけてくれた人物で、最初のころの原稿は、ほとんどが彼との会話から生まれたようなものだ。私たちはこの数ヶ月間、頻繁にメールや電話をやりとりしていたのだが、実際に会うのはこれが初めてだった。テーブルに何台もの潜水ロボットが展示されていたので、まずはそこから話が始まったのだが、やがて彼はこう聞いてきた。「で、これまでを振り返って、Zero to Makerの旅はどれくらい進んだ?」
こう聞かれたときの準備は常にしておくべきだったのだが、私は慌ててしまった。これまでに何を学んだのか、きちんと整理する機会はこれまでになかった。まだ何ひとつ進んでいないと思っていたからだ。実際、教室で行ったプロジェクト以外、これと言って何も作っていない。私は、SparkfunのNathan Seidleがオープンハードウェアサミットのプレゼンテーションで見せていた図を思い出しながら、こう答えた。「そのことだけど、もうすぐだと思うよ」
そして、その図の説明を始めた。

Note:これは、Nathanの図を私なりに作り変えたものだ。割合は実際とは違う。黄色いところの比率は、じっさいにはもっとずっと大きい。
Nathanは、彼のゴールが緑色の部分を継続的に広げていくことだと語っていた。それが、彼にとって成長の目安になるという。私のこの旅にも、同じことが言える。たしかに、青い部分は広がっている。その速度は緑の部分ほどではないが、それでいいんだ。私のゴールは「Enough to be Dangerous」(危険を冒しても大丈夫な状態:怪我をしないレベル)に到達することだからだ。つまり、「いい質問」が思い浮かぶようになること、そして、答えの糸口がありそうな場所の見当が付けられるようになることだ(上のグラフには、Enough to be Dangerousの割合も追加しておいた)。それが私の基準だとするなら、私はそこに近づきつつある。しかし、学ぶ価値のあるものならすべてに言えることだが、学べば学ぶほど、もっと学ばなければならないと気づかされる。だが幸いなことに、物作りの場合は、作れば作るほど、または作りたいと思うほど、建設的で加算的なフィードバックが得られる仕組みになっている。
ひとつ確かなことがある。私がMakerの頭で考えるようになったことだ。心の中で、私は目に映るものをすべて分解している。どういう仕掛けになっているのか、自分で作るとしたらどう作ろう、といったことをいつも考えるようになった。物を修理する機会には飛びつくようになった。直すのが面倒だとは思わなくなり、学ぶ機会が得られたことを喜べるようになった。世界が違って見えるようになってきたのだ。
今思うに、本当の危険とは何も始めないことだ。オープンハードウェアサミットでプレゼンを行ったArduinoチームの言葉を引用するなら、「何もわかってないことが何かを始めるときの障害になってはいけない」ということだ。
Garethより:会えてうれしかったよ、David。彼は人好きのするいいヤツだ。頭がいいし、情熱を持って事に取り組んでいる。ただ、自分の能力に関して謙虚すぎて、慎重すぎるところがある。OpenROV(ちなみに、個人的にはめちゃくちゃクールだと思った)の船体や部品の製造方法、操作系、これから作るインターフェイスのソフト、モータ、配線、防水問題などなど、私の質問にすべて答えてくれた。彼がこれらの解説をしてくれたあと、私はこう言った。「すごく詳しいね。動く仕組みもよくわかってる」 すると彼はこう答えた。「ボクはここに座ってあの人たちの説明を聞いてただけだよ」 それは信じられなかった。彼は自分が認める以上によく知っているのだ。たぶん彼は、自分が知っていることをわかっていないのだ。OpenROVプロジェクトには、私のMake: Editor’s Choiceブルーリボンを贈ることにした。これが水の中を走る姿を早く見てみたい。
これまでの話はこちら:Zero to Makerの旅
– David Lang

[原文]