Other

2013.03.12

新刊『Making Things See――KinectとProcessingではじめる3Dプログラミング』3/26発売!

Text by tamura

1611_mkng_thngs_see_cvr

本書は、MicrosoftのKinectと、オープンソースのプログラミング言語Processingを使ってインタラクティブなアプリケーションを作成するための書籍です。3Dのデータを扱ったことのない読者を対象に、距離情報の処理、ポイントクラウドの解析と操作、人体の関節の動きの追跡、ポーズやジェスチャーの検出などについて、豊富なサンプルコードを使って解説を行います。さらに、3Dプリンティングのためのデータやジェスチャーでコントロールするロボットアームの作成など、作品の可能性を大きく広げる情報も紹介します。Kinectを活用して多彩な作品を生み出してきたアーティストへのインタビューも掲載しました。(本書の内容は「Xbox 360 Kinectセンサー」に対応しています。「Kinect for Windowsセンサー」には対応していません)

Greg Borenstein 著、藤本 直明 監修、水原 文 訳
2013年03月26日 発売予定
定価3,780円(税込)
456ページ
ISBN978-4-87311-611-2

─以下は「はじめに」から

 Kinectは、ひとつの技術革新を現実のものとした。それは、20世紀に実現した数々の根本的なブレークスルーの原動力となった技術革新とも比肩し得るものだ。パーソナルコンピューターやインターネットの出現と同様、Kinectのリリースは、それまで軍事産業や情報活動だけに利用されてきた何十億ドルもの投資と何十年にもわたる研究の成果が、一般の人々にも行き渡るようになった瞬間でもあった。

顔認識、歩行分析、スケルトン化、距離画像処理など、公共空間でテロリストを発見するために開発されてきた技術に、今や創造的な民生用途への利用の道が忽然と開けたのだ。その例としては、ジェスチャーによるソフトウェアインターフェースの構築、個人向けファブリケーション用の安価な3Dスキャナーの制作、モーションキャプチャーを利用した手軽な3Dキャラクターアニメーション、バイオメトリクスを使ったカスタマイズされた障碍者向け支援技術の構築などが挙げられるだろう。

これらの開発は広範囲にわたり、内容もさまざまのように見えるが、単純に要約するとこういうことになる。史上初めて、コンピューターがものを見ることが可能となったのだ。これまで何十年にもわたって、コンピューターを使って静止画やビデオを処理することは行われてきた。しかし赤と緑と青のピクセル上で単純な繰り返し処理を行っても、人間の視覚システムでは当たり前のように行われている数々の驚くべき能力を実現することはできない。その能力とは、立体視、空間内での物体の識別、時間と空間の両方にまたがった人々の追跡、ボディーランゲージの認識などだ。このカメラと画像処理技術の革命によって、史上初めてこれらの能力を出発点としたコンピューターアプリケーションを構築できるようになった。そして今やKinectの登場とともに、これらのアプリケーションを制作するための能力は、電子工作愛好家や趣味のハッカーにも手の届くところまで降りてきたのだ。

これに先立つパーソナルコンピュータやインターネットの革命と同様に、このビジョン革命も間違いなく、創造力と生産性に富むプロジェクトの驚くべき開花をもたらすことだろう。Kinectの登場をパーソナルコンピューターやインターネットと比較することは、ばかげたことに感じられるかもしれない。しかし、パーソナルコンピュータも最初に発明された際には、愛好家向けの珍奇なおもちゃだったことを思い起こしてほしい。インターネットは、政府機関の研究者たちが他所のメインフレームコンピュータへアクセスする手段として始まったのだ。これらの技術はすべて、ゆっくりと現代生活で欠かせない役割を果すようになってきた。それは人々がこれらの技術を使って創造的で革新的なアプリケーションを作り出し、最終的に我々の日常生活に当たり前のものとなったからなのだ。確かに今の時点で、KinectをPCやインターネットと比べることはばかげているように見えるかもしれない。しかし今から数十年後には、KinectもAltairやARPAnetと同じように、新たな技術の世界へ向けた、よちよち歩きの第一歩として記憶されているかもしれないのだ。

この本は、まさにこのような新たに開けた世界を展望するプロジェクトを構築するため、必要な文脈とスキルを提供することを目的としている。

目次など詳細は、O’Reilly Japan – Making Things Seeにてご確認ください。