2014.04.12
Innovative with China | Maker Faire Shenzhenレポート
2014年4月6日、7日の2日間、中国広東省深センにて、Maker Faire Shenzhenが開催されました。ここ中国深センでMakeのイベントが開催されるのは3回目。これまではMini Maker Faireとしての開催でしたが、本年からは「Maker Faire Shenzhen」と銘打っての開催です。ベイエリア、ニューヨーク、ローマ、デトロイト、イギリス、シドニー、そして東京に続く、フラッグシップイベントの仲間入りを果たしました。
イベントが開催された香港と中国の国境にほど近い蛇口(Shekou)という地区は、海にほど近く緑が多く、日本でいうとお台場のようなロケーション。ご存じの通り、ここ深センは経済特区に指定されており、世界の工場と呼ばれるほど製造業が盛んな地域です。Maker Faire Shenzenでは「Innovative with China」というキャッチコピーの下に、約100組のMakerたちが集まりました。入口でお出迎えをしてくれたのは、重量約2トンの巨大ロボ。目から光を放ちながら、音楽に合わせて首を振ります。
南海意庫というイベント会場は、工場跡地をリニューアルした建物に、アートなカフェや、雑貨屋さんなどが入居している洗練された場所。その屋外を利用して、Maker Faire Shenzhenが開催されていました。
清明節という連休でもあり、開場直後から会場には多くの人が詰めかけ、老若男女、さまざまな方が興味深く展示物を眺めていました。
では、いくつかの展示をご紹介しましょう。
OSVehicleは、オープンソースの乗り物をつくるプロジェクト。シートや車輪の数をカスタマイズできるTABBYという土台(1時間程度で組みあがるそうです)、IHEというハイブリッドエンジン、Busybeeという車体を覆うためのフレームを組み合わせ、その上に好きなデザインを施して、オリジナルの車を作ります。完成した車は公道を走ることもできるそうです。TABBYのCADデータはWEBサイトで公開されており、CCライセンスの下で自由に使用することができます。イベントでは、ジーンズで作られたジーンズカーや、遠足のときに使うレジャーシートで覆われた車などが展示されていました。
Makeblockは、深センに拠点をおくスタートアップ企業。Arduino制御のロボットを作るための、簡単に組み合わせて使えるアルミニウムパーツやセンサーなどを販売しています。Maker Faire Shenzhenの展示では、手を近づけるとセンサーが反応して音が鳴る太鼓や、触らないでも木琴を演奏することができる子供向けのロボットを展示していました。
深センの南山区に居を構えるハッカースペース、深センDIY社区のPOLASCIIはアスキーアートのポラロイドカメラです。
picamera、Raspberry Piと、AALibというアスキーアートのライブラリで構成されています。カメラから入力された映像が、リアルタイムでアスキーアートに変換され、ディスプレイに表示されます。シャッターを切ると、写真を撮影したかのようにディスプレイ上で映像を静止することもできますし、レシート状の用紙に印刷されたQRコードのURLからその写真にアクセスすることもできるという、たのしいプロジェクトです。ソースコードがgithubで公開されていました。
3DプリンターをはじめとするFab系の展示も多数見られました。レーザーカッターで作ったグリーティングカードには、中国工芸の繊細さが感じられました。
Maker Faire Tokyo 2013にも出展していたLooking Glassプロジェクト。3Dプリントしたオブジェクトを、透明なアクリルの中に閉じ込めています。
延々とクリックし続け、ゲームを続けるためだけの機械。
会場中央のステージでは、カナダ・カルガリーからきたMakefashonさんのウェアラブル作品でファッションショーが行われています。
会場の一角で笹の葉っぱのようなものを使って、はさみ一つで器用に蝶や花をつくるおじいさんがいました。道端でモノを作っていた彼を見かけて、Maker Faire Shenzhenのスタッフが声をかけて出展してもらったのだそうです。一枚の葉っぱが素晴らしい作品に編み上げられる様子に、人間の手が持つ可能性を感じさせられます。
こちらはRed Bear LabのBLE Shield。Blootoothで通信を行い、水槽のなかの照明や温度などをiPadで操作します。
Maker Faireといえばワークショップ。たくさんの子供がものをつくる楽しみに触れています。LEDライトのはんだづけからロボットの制作まで、多くの人が楽しそうに手を動かしていました。
日本からもたくさんの出展者の方が参加されていました。
機楽のRAPIROを展示していたのはスイッチサイエンスさん。かわいいロボットに子供たちが夢中になるのは万国共通ですね。
鳥人間の久川真吾さんは、安価に開発できるDNAの複製装置「NinjaPCR」を展示。
itogさんのfourbeat。Android対応の押しボタンスイッチです。言葉が通じなくても触れば動くわかりやすさで、たくさんの子供たちが集まっていました。
フォーラムも豪華メンバーで行われました。Maker Media FounderのDale Dale Dougherty、『MAKERS』でおなじみのChris Anderson、ArduinoのTom Igoe(書籍『Making Things Talk』の著者でもあります)などが登壇し、Makerムーブメントのこれからについて語りました。
また日本からは、IAMASの小林茂先生などが登壇し、プレゼンテーションを行っています。
そしてイベントを主催したSeeed StudioのCEO Eric Panさん。
東京やベイエリアの展示と比較すると、電子工作、ロボット寄りの展示が多かったMaker Faire Shenzhen。発展目覚ましい中国経済を背景に、純粋な趣味の出展よりも、何らかの形で商売につなげようという意気込みで出展しているMakerが多いように感じられました。
最終日の夜は、会場でMaker Partyが行われ、DJの音楽に合わせてたくさんの若者たちが踊っていました。欧米とアジアを結ぶ、Makerのハブになろうとしている深センで行われたMaker Faire Shenzhenは、多く来場者やMakerたちに刺激を与えつつ、その幕を閉じました。