Fabrication

2014.04.14

ラピッドプロトタイピングの波に乗る:耳栓を再発明した「SurfEars」

Text by kanai

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北カリフォルニアのサーファーはきつい。水は冷たい。潮の流れは速く、嵐から生まれた強烈な波はつきものだ。スクールバスほどもあるサメも泳ぎ回っている。

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そんな、ちょっと過酷な環境でも、私は自分の耳を健康に保つための努力をしている。私は右耳が外耳炎に、左耳が初期のサーファー耳(外耳道骨腫骨腫)になっている。耳栓を使ってみたが、よくなかった。水に潜ると取れてしまうし、周りの音がくぐもってしまって、風邪を引いたような気分になってしまう。

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SurfEarsはクールなケースに入っている

なので、SurfEarsの話を聞いたときは興奮した。クラウドファンディングのキャンペーンで登場した新型の耳栓だ。SurfEarsは、スウェーデンの “製品開発局”’ Frankly Development の製品だ。独創的なデザインで、サーファーをはじめとするウォータースポーツの愛好家に最適という。水を通さず、音は通すそうだ。それが本当なら最高だ。人間工学的に設計された小さなサポートウィングで、しっかりと耳に固定される(ただし、ペアで70ドルだ)。そしてそれは本当に使えた。

週末、私は氷のように冷たい波に10回以上飲まれたが、耳の穴が濡れることはなかった。耳栓も気持ちよく耳に止まっていた。海に潜っていないときは、周囲のサーファー仲間の会話がはっきりと聞こえた。耳栓をしていることを忘れるぐらいだ。この耳栓には音響メッシュでカバーされていて、それが水を通さず音だけを通す役割を果たしている。SurfEarsでは、音の損失はゼロだと言っている。

SurfEarsはCADとラピッドプロトタイピングで作られた。そしてそれは、3Dプリントによるイテレーションから生まれた一般消費者向け製品の、成長する、そう、波の一部なのだ。

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3Dプリントされた型

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開発用に作られたテスト用の耳は3Dプリントだ

私は、Frankly DevelopmentのTobias Mårtenssonに、SurfEarsについて話を聞いた。

SurfEarsのデザインチームについて教えてください。

Frankly Developmentはスウェーデンにありますが、主要なエンジニアのひとりはオーストラリア人です。Franklyが製品を作り始めた2011年からチームは大きくなりましたが、それよりも、サービスの幅が広がったことが重要だと思っています。最初のチームは、ノキアから来たコンセプト開発、メカニカルデザイン、サプライヤー管理、製造の専門家で構成されていました。みな、革新的な製品を作ろうと情熱に燃え、世界を飛び回り、ほんとうに楽しい時間を過ごしました。

SurfEars の発想はどこから?

このプロジェクトは2011年から始まりました。それを発明した人間のひとり(サーファー耳を患うベテランサーファー)が、モロッコへサーフィン旅行に出かけた際に耳が重い感染症にかかってしまいました。激しい痛みを伴う感染症は1週間続き、片方の耳が聞こえなくなりました。私たちは市販されているあらゆる耳栓を試したのですが、満足のいくものがなく、ついに自分たちで作ることを決意しました。私たちには、聴覚やバランスを損なうことなく、寒気や水や埃やバクテリアから耳を守る必要があったのです。それは、サーフィンやその他のウォータースポーツにとって、とても重要なことです。私たちはその製品で、水の中でも外でも、普通に耳が聞こえて会話ができることを重視しました。さらに、何時間着けていても違和感のない、着けていることを感じさせない着け心地も重要でした。

3Dプリントはどのように利用しましたか?

私たちの3Dプリンター(Makerbot Replicator)は、コンセプトの実証には欠かせないツールでした。このプロジェクトが始まってからノンストップで動いています。それによって、プロトタイプの無数のイテレーションが可能になり、最終デザインまでそれで行いました。

最終的な製品はどのように作られていますか?

プラスティックの芯はポリカーボネートの射出成形です。固定ウィングは2ショットのシリコンの射出成形です。機能性を高めるために固さを変えています。ゲル(耳に入る部分)もシリコン射出成形です。

音響メッシュとは、どのような仕組みなのですか? なぜ水が入らないのですか?

音響メッシュとは、補聴器、ヘッドセット、イヤホン、携帯電話などの音響の問題を解決するために作られた素材です。音の透過性と防水性に応じて、いくつかのタイプがあります。メッシュは、細かいポリエステル繊維で編まれていて、表面に水が付かないように撥水加工がされています。私たちが採用したメッシュは、周囲の音がよく聞こえて、水や冷たい空気など悪いものを通さないバランスのものです。

70ドルとは少々高いように思えますが、なぜこの価格になったのですか?

流通や小売店からのフィードバックによれば、競合製品を扱った過去の経験からして、妥当な価格だということです。実際、SurfEarsは、同種の製品の中では性能が格段に高く、価格は低く抑えられています。

ニッチな用途の製品だが、SurfEarsは「なぜ今まで思いつかなかったのだろう」的なデザインだ。新しいスタンダードになると私は思っている。可能ならば、着け心地が良くて、水を通さなくて、周囲の音がちゃんと聞こえる耳栓を試してみてはどうだろう。次は、サメ除けのデバイスだな。

– Stett Holbrook

原文