2015.01.21
ビルの壁面でテトリス
Shell Centerの前に立ち、テトリスを始めようとしているKate Mulcahy(写真提供:Newscast)
テトリス・スカイスクレーパープロジェクトの準備をするKate Mulcahy(写真提供:Paul Wilkinson Photography)
イギリスでは、王立科学研究所のクリスマス講義を聞かなければクリスマスがやって来ないと考えている人が多い。今年の講義は、ハッキング、メイキング、ティンカリングに関する内容だった。そして、今年の講義のグランドフィナーレは、ビルのサイズのテトリスだった。
私は、王立科学研究所のクリスマス講義のアシスタントである Kate Mulchayに話を聞いた。彼女は今年の講義のハッキングのリーダーであり、彼らのこと、そして、このシリーズの締めくくりとなる記念すべきデモンストレーションについて語ってもらった。
あなたは今年のクリスマス講義のMakerのリーダーでしたね。それまでの経緯を教えてください。
クリスマス講義のアシスタントとして講義の準備をするという役割をもらえたことは、とってもラッキーだったと思います。仕事は多岐にわたりましたが、その中心は面白いメイキングやハッキングを調べたり、ショーのための小道具やデモを作ったり、王立科学研究所のウェブサイトのための科学的検証やハウツーの製作でした。私はものを作ったりティンカリングしたりするのが大好きで、人々の能力を引き出して新しいスキルの実験や学習をしてもらうことが大好きなんです。王立科学研究所で働くようになる前までは、私は科学博物館に数年間いました。そこでは、私はインタラクティブなワークショップや、科学とアートとクラフトを掛け合わせた活動のデザインをしていました。それらの分野は、もっともっと融合すべきだと考えています。それに、もっと大がかりな実験を行ったり、優れた科学者に会いたいと思っています。それ以前は、メイキングを行いながら、数学、理科、英語の教師をしていました。
ずっとMakerだったのですか?
ずっとMakerでした。クラフトも、素材も、ホームサイエンスも、実験の指導も、ほとんどあらゆることをやってきました。でも、いつも成功したとは限りません。Maker関連ではたくさん不運なことを体験しましたが、そこから私は大変に多くのことを学びました。科学博物館で働いていたときは、ロンドンのMake Loungeという会社でも仕事をしていました。そこではいろいろなクラフトの講師をしていました。科学とメイキングの両方を行うことが私は大好きです。王立科学研究所の仕事では、それらが完璧に融合されています。
テトリス・スカイスクレーパー・プロジェクトのアイデアはどこから?
ビルの壁面でテトリスをプレイするということは、ハッキングの“聖杯”として表現してきました。これはコーディング、ハッキング、テクノロジーの融合ですが、同時に美しいインスタレーションでもあります。これほど大がかりなことをやろうという考えに、私は興奮しました。私たちは、ただ画像を投影するというだけでなく、インタラクティブで楽しいことをやりたかったのです。そこで、テトリスのようなゲームが、ピクセル化されたスクリーンには最適だし、お客さんにプレイしてもらうことで命が吹き込まれるという意味でパーフェクトでした。
技術的なことを教えてください。市販の部品をたくさん使っているのですか?
そうです、テトリスに使用した機器はすべて市販品です。私たちは最初から、それぞれの窓を光らせることを考えていました。高価な機材を使って壁面に投影を行うのは、この講義の趣旨に反するからです。特定の窓の明かりを点灯させようとすると、ビルの照明は範囲が大きすぎて使えませんでした。最初に考えたのは、DMXウォッシャーライトでした。プログラムが可能でとても明るいからです。それを、無線でコントロールできるマイクロコントローラーに接続し、ネットワークを組みました。しかし、DMXは普通に市販されている製品ではありません。
ロンドンの名所、Shell Centreビルでテトリスをプレイ。今年のクリスマス講義のグランドフィナーレを飾った。
幸いなことに、London Hackspaceを設立した私の友人、Jonty WareingがPhilips Hue LED電球を教えてくれました。この電球にはネットワークコントローラーが内蔵されているため、遠隔操作ができるのです。ちょっと高かったですが、業務用製品ではなく、完全な民生品です。
どのようにネットワークを組んだのですか? 私も同じような照明プロジェクトで、XBeeでメッシュネットワークを組みましたが。
私はネットワークのことはまったくわからないのですが、幸いなことに、London Hackspaceの2人が手伝ってくれました。Ben BlundellとTom Wyatt がコーディングとネットワークを担当してくれたのです。
各階の電球は、「ブライトモジュール」で遠隔コントロールされています。複数の電球のコントロールにはブリッジを使用しましたが、それはこれほどの規模に対応するようには作られていません。このモジュールはEthernetでネットワーク化できるようになっていて、ZigBeeモジュールを搭載しているので、無線メッシュネットワークが構築できたのです。ゲームのコントロールとブリッジ同士の通信には、ビルに備わっているネットワークシステムを使いたかったのですが、それは不可能だとわかりました。結局、Benの素晴らしい友だちのグループから市販のルーターをたくさん買い込んで、各階に1台ずつルーターを配置する仮設のネットワークをBenが作ってくれました。このネットワークに使用したブリッジは、外のノートパソコンにつながっています。
スカイスクレーパー・テトリス – その裏側
私たちは約200個の安いデスク用スタンドを買い、それぞれの窓にひとつずつ設置しました。電球は大変に強力なのですが、ビルの外からだと、明るめの色つきのロウソクのように見えてしまいます。窓いっぱいに光を拡散させる必要がありました。そこで、ディフューザーとなるよう、窓にベーキングペーパーを貼り付けました。さらに、マイラーシート(応急キットに入っている薄い保温シート。マラソン選手がよく羽織っているやつです)を、窓枠に乗せたスタンドの後ろから、窓全体を覆うように貼りました。電球の明かりを最大限に利用できるよう、このシートで光を反射させて窓全体にまわるようにしたのです。これは、安くて早く設置できなければなりませんでした。182個の窓すべてを30分以内で設置しなければならなかったからです。
ゲームは、ビルが面している庭園から、各階の仮設ネットワークに無線でつながったノートパソコンで操作します。
プロジェクトは思い通りの反響を得られましたか?
実を言うと当日、仮設ネットワークにトラブルが発生して、思っていたように簡単にはいかなかったのです。前日にテストしたときにはパーフェクトに動いていたのですが。講義は非常に寒い雨の夜にライブで撮影されたのですが、それでも大勢の人が外で見ていてくれました。それはとても感動的な光景でした。トラブルの原因は、雨か、予想を超える人数の人か、それともテレビ取材班の電波がWiFiに干渉したことかもしれません。放送のあと、たくさんの好意的な意見が寄せられました。なかでも、あのプロジェクトに刺激を受け、無線で照明をコントロールするディスプレイのプロジェクトを自分でもやってみたいと言ってくれた人たちがいたことを、とても嬉しく思います。
あなたは王立科学研究所(Ri)のThings with stuffシリーズにも関わっていますね。それについて話してもらえますか?
今年のクリスマス講義の大きな目標は、人々に遊びとティンカリングを推奨することでした。私は、大好きな Ri Channel、特にデジタル・コミュニケーション責任者の Anthony Lewisと緊密に作業を行い、簡単なものはモーターで動くクリスマスツリーから、もっと上級のRaspberry Piを使ったツイッターボットまで、Makerのための他のアイデアを集めました。私はテトリスのデモの準備に忙しかったのですが、そのシリーズのための小さなメイキングは本当に楽しめました。ひとつやり直すことができるとしたら、ウェアラブル・テックジャンパーをもっと丁寧に縫いたかったです。ボロボロでしたから。
LEDスローウィーの作り方
私はビデオを作るのが大好きで、これからももっと作っていきたいと思っていますが、今いちばん気に入っているのは、Andy Marmeryの車にLEDスローウィーをくっつけまくったやつです。あれには大笑いでした。
2014年のクリスマス講義は、Ri Channelで見られる。
[原文]