Electronics

2013.07.08

この3Dマシンはプリンターか「ファーバー」か?

Text by kanai

そもそも3Dプリンターは、1986年、3D Systemsの創設者、Charles Hullによって発明された(そして特許が取られた)。彼は、「ステレオリトグラフィー」という名前も考案した。彼の発明にピッタリな名前として考えたのだ (.stlファイル形式もHullが考え出した)。私は、Maker Faire Bay AreaでCharles Hullにインタビューを行い、「ステレオリトグラフィー」が何を意味するのかについて聞いてみた。


3D SystemsのCTO、Charles HullとMAKEのDale Dougherty。3Dプリントの起源と未来について。Maker Faireにて(FORA.tv)。

1990年代にDiscover Magazineの編集者をしていたScott Faberは、初期の3Dプリンターと出会い、それらをどう呼ぶべきかと考えた。彼の記事のタイトルは「Printing in 3D」(3Dで印刷する)だった。ステレオリトグラフィーでは過多すぎると彼は感じていたのだ。そこでScottは、それらの新しいマシンには自分の名前に近いものを付けるべきだと考えた。彼はこう書いている。「そのマシンはステレオリトグラファーと呼ばれていた(「三次元プリンター」という意味だ)が、親しい人たちはファーバー(fabrcator(ファブリケーター)の短縮形)と呼んでいた」

「ファーバー」が面白い言葉と感じたFaberは正しかった。ラテン語では、熟練工や職人という意味がある。Homo Faberというフレーズでよく使われるが、これは工具を使う人、または工具を作る人という意味だ。私たちがMakerと呼んでいる人と同じだ。

Homo Faberに関するウィキペディアの解説を引用しよう。

Homo faber(ラテン語で「作る人」という意味。ちなみにホモサピエンスは「賢い人」だ)は、ハンナ・アーレントマックス・シェーラーが唱えた哲学的概念で、道具を通して環境をコントロールする人間という意味がある。またアンリ・ベルクソンは『創造的進化』(1907)の概念を引用し、その元来の意味の中に、「人工物、とくに道具を作る道具を作る能力と、道具を無限に変化させる能力」として知性を定義した。

その記事を書いた時代を思えば、Faberが、3Dコピーや3Dファクスは「地平線の向こう」にあると言ったのは無理もない。彼は物理学者、Marshall Burnsの言葉を引用している。Burnsはこう言っている。「スキャナーとリプリケーターが遠く離れていれば、3Dファクスマシンがある」。Burnsは、「15年以内にファーバーは安価になり、空母のみならず家庭にも置けるようになる」と予言していた。そう外れてはいない。

今日、私たちは、RepRap、Fab@Home、MakerBot Replicator 2といったファブリケーターやリプリケーターを使っている。だが、なぜこれらのマシンを「3Dプリンター」と呼ぶのだろう。「プリンター」という言葉は、紙に印刷するような錯覚を与えてしまう。この驚きの成形マシンは本当に印刷をしているのか? Hullはそう考えた。彼は「リトグラフィー」のことを念頭に置いて印刷という言葉を使っているのだ(「リト」はギリシャ語で石のこと)。ほとんどの本はオフセットのリトグラフィーを使って印刷されている。「オフセットリトグラフィーでは、石の代わりに、写真製版、アルミニウム板、プリエステル、マイラー、紙の刷版などが使われる」(ウィキペディアのLithographyの解説より)リトグラフィーにはマイクロリトグラフィーとナノリトグラフィーがある。

3Dプリンターは、500年以上も前にグーテンベルグが開発した技術の延長線上にあるのだろうか。印刷機はいろいろな素材を使い、いろいろな処理方法がある。それが今や三次元に印刷できるようになったのか。または、未来から今を振り返ったときに、このマシンが、まったく新しい何かの始まりだったと思うのだろうか。MakerBotのような3Dプリンターは、プリンターの行き着く先はなく、まだ見たこともない3Dマシンの始まりの世代なのだろうか。私たちはそれを、プリンターではなく、もっと別の呼び方をするべきだったのではないだろうか。「ファーバー」のような。Scott Faberはわかっていたのかもしれない。少なくとも記事からはそう読める。

Scott Faber、Printing in 3Dの記事のスキャン画像だ。著者によって提供されている。

– Dale Dougherty

原文