Electronics

2015.12.11

新しいタグとiPhoneアプリで便利になった「MESH」(後編)— 野鳥観察カメラと手づくりパンの温度変化監視ツールを作る

Text by Noriko Matsushita

筆者は、信州の山小屋と東京で半分ずつ暮らしており、山小屋では、既成の家電や道具は最小限に留め、できるだけ手づくりの暮らしを心がけている。庭にやってくる野生動物の監視カメラ、野菜の育苗器、自家製パンの発酵器など、つくりたいものは数あれど、ひとつひとつを自作するには時間がいくらあっても足りなさそうだ。そんななか、MESHの新しいタグとiPhoneアプリがリリースされた。手元にはちょうど解約して使っていないiPhone 5がある。これらを使えば、いくつか簡単に実現できそうだ。

人感センサーで野鳥観察カメラ

まずは、Motionタグを使った野鳥の観察カメラを作ってみた。ウッドデッキにヒマワリの種を置いておくと、さまざまな野鳥がやってきて啄んでいく。窓越しにその様子はうかがえるものの、写真を撮るのは難しい。外に出て撮ろうとするとドアの音で鳥は飛んで逃げてしまう。そこで、ウッドデッキのヒマワリの前に、MotionタグとiPhoneを設置してカメラで自動撮影しようと考えた。

MESHアプリのレシピは、Motionタグとカメラをドラッグ&ドロップしてタグをつなぐ。たったこれだけ。もっともタグにはいくつかの設定が用意されている。Motionタグなら「Detected/Undetected/Check Motion」の3通りと、それぞれにWaiting Timeなどが設定できる。ここでは、動きを検知したらすぐに撮影したいので、「Detected」のWaiting Timeは0.5秒にセットした。

PH01-03
iPhoneのMESHアプリ(左)、Motionタグとカメラタグを配置(中央)、Motionタグの設定は「Detected」、Waiting Timeはデフォルトの0.5のまま(右)。尚、記事執筆時には英語版のアプリしかなかったが、現在は日本語版もリリースされている

明け方にタグとiPhone、ヒマワリの種をデッキに設置。なお、iPhoneのシャッター音を抑えるため、スピーカー部分をテープで張っておいた。

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手づくりのiPad用スタンドを使って設置。タグはそのまま立てて置ける

なお、MESHアプリはスリープの状態では動作しないので、iPhoneのロックは解除しておく必要がある。しばらくして窓の外を見ると、知らないうちにヒマワリの種がすっかりなくなっている。タグとiPhoneを回収して写真を確認すると、ヤマガラとゴジュウカラがしっかり写っていた。

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黙々とヒマワリを食べる鳥たち。iPhoneやタグの存在は気にならないようだ(縦位置の3枚の写真を1枚にまとめています)

MESHは、マイクロUSB給電に対応しているので、スマートフォン用のモバイルバッテリーにつなげば、長時間の監視カメラとして使える。カメラに加えてサウンドをつなぎ、さらに外部スピーカーで大きな警告音を鳴らせば、菜園を荒らす害獣対策にもなりそうだ。

手づくりパン発酵器の温度変化をお知らせ

次に試したのは、パンの発酵温度の管理。イーストなど、パン酵母の発酵には、30℃前後の温度を保つ必要がある。キャンプやアウトドアで手づくりパンを焼くときは、石釜があっても発酵器はない。そこでよく使うのが段ボールの簡易発酵器だ。段ボールの中に、お湯を張ったボールやカップを置き、その上にパン生地を入れた容器を載せておく。徐々に温度は下がってしまうので、ときどきお湯を入れ替える必要がある。そこで、Temperature & Humidityタグをダンボール内に入れて、温度が28℃以下になったらサウンドで通知するようなレシピを作った。

PH07
ダンボール発酵器の中に、パン生地とTemperature & Humidityタグを設置

Temperature & Humidityタグは、その名の通り温度と湿度が計れるが、ここでは温度だけを計測する。Temperature & Humidityタグの設定には、温度の変化を調べる「Temp Changed」と、何かのトリガーで温度を計測し、一定の温度の幅に入っているかどうかを調べる「Check Temp」の2種類がある。温度低下を調べるなら「Temp Changed」でよさそうだが、1回しか検知しないのでは気づかないかもしれない。そこで、Timerタグを使い、60秒ごとに「Check Temp」で温度を調べるようにしてみた。

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Timerタグで1分おきに温度を調べ、28℃以下の範囲に入るとサウンドを鳴らす

温度が下がったまま放置していると、何度でも1分おきに警告が鳴るので安心だ。ただし、MESHアプリはバックグラウンドで動作しないので、ほかのアプリを使ったら忘れずにMESHのレシピ画面に戻しておこう。このレシピではお湯の入れ替えは手動で行うが、サウンドを鳴らす代わりにGPIOタグとソリッド・ステート・リレーでヒーターなどにつなげば、自動の保温装置も作れる。同様に植物の温室の温度管理、Brightnessタグと照明器具で育苗灯にも応用できる。

これからの季節は、部屋のクリスマスツリーを自動で点灯するレシピはいかが。ツリーのイルミネーションのコンセントをソリッド・ステート・リレーでGPIOタグにつなぎ、Moveタグを玄関ドアに貼り付けるか、Motionタグを設置。玄関を入るとセンサーが検知し、クリスマスツリーの灯りが迎えてくれるだろう。