2016.03.28
子どもたちの書いたコードを宇宙で動かすAstroPiプロジェクト進行中
先日のRaspberry Piの誕生日を祝う会では、もっぱらAstro Piプロジェクトが話題になっていた。国際宇宙ステーションに送られた2つのRaspberry Piボードからの最初の結果が地上に届き始めているし、イギリスの学校の生徒たちが書いたコードを宇宙で走らせようという新しいコンテストも始まったので、当然だ。
「私たちはRaspberry Piを宇宙に送り込みました。それは1割がエンジニアリングで、9割が書類仕事でした。書類の重さがペイロードよりも大きくなったとき、打ち上げが可能になります」 — Eben Upton
2015年の12月、Orbital ATK Orb-4補給ミッションに乗って、2つのRaspberry Piボードが国際宇宙ステーション(ISS)へ飛んだ。打ち上げられたのは、ボイジャーやキュリオシティが打ち上げられたのと同じ、ケープカナベラルの打ち上げ台からだった。
特別に作られたアルミ製のフライトケースに収められRaspberry Piは、イギリスESAの宇宙飛行士、Tim Peakeのミッションを支援するためにISSへ飛んだ。そこでRaspberry Piは、イギリスの学校の子どもたちが作ったコードを走らせている。
2つのRaspberry Piにはカメラと、ISS内の環境や地球の磁場を測定できる、Sense HATが備えられている。それぞれのRaspberry Piには異なる種類のカメラが搭載されている。ひとつは可視光線用、もうひとつは赤外線用だ。
これらのボードで行われている実験、そして走っているコードそのものが、イギリスの小中学校の生徒がデザインしたものだ。2月に立ち上がった2台のAstroPiボードは、AstroPiコンテストで入賞した7人の実験が実行されている。
AstroPiの製作
Raspberry Pi誕生会の席上で、Dave Honessは、2つのボードを宇宙に対応させるための長い工程について話をしてくれた。いかなるハードウェアも、宇宙へ飛ばすには、Flight Safety Certificate(飛行安全証明書)を取得しなければならず、それが大変なのだという。
プリント基板をそのまま宇宙へ持って行くことはできない。だから、特別なアルミのフライトケースが必要になる。ケースは熱を逃がすことも大切だが、鋭い角があってもいけない。
打ち上げ前の最後のテストは切り裂きテスト。
「…彼らは特別な手袋をはめている。それであちこちさわってみて、手袋に穴があいたら失格だ」 — Dave Honess
AstroPiフライトケースのSTLファイルが公開されているので、それを3DプリントしてAstroPiのレプリカを作ることができる。これを操作する宇宙飛行士の感覚を味わうことは、コンテストに勝って自分のコードを宇宙で走らせたいと思う子どもたちには重要な経験だ。
とは言え、ケースだけが問題なのではない。ボード自体も、特別な部屋の中で高感度なアンテナを使い、マイクロボルトレベルの電磁波が放出されていないかをテストしたり、クルーに有害な気体を発散させたりしないかなどをテストする。
Now in the EMC chamber! pic.twitter.com/hjeMfozUSn
— Astro Pi (@astro_pi) 2015年5月28日
(EMCチャンバーに入った! http://t.co/hjeMfozUSn)
フライトケースに収まったボードは、打ち上げの衝撃に耐えられるように、振動テストも受ける。
Flight hardware about to go through Soyuz launch conditions vibration testing at @AirbusDS @JohnChinner @dave_spice pic.twitter.com/zphG5kpSuR
— Astro Pi (@astro_pi) 2015年5月28日
(フライトハードウェアがソユーズの打ち上げと同じ状態を再現する振動試験に入るところ)
The Astro Pi looks very much at home in the Columbus mock up! Testing all going well so far. pic.twitter.com/M3emHTC8JO
— Astro Pi (@astro_pi) 2015年8月10日
(AstroPiはColumbusのモックアップによく溶け込んでいる。テストは順調)
最後に、すべてのテストを終えたあと、AstroPiはドイツのケルンにあるESAのヨーロッパ宇宙センターに運ばれ、Tim Peakeが軌道上で行う予定の実験の完全な予行演習を行う。
こうして、Columbus実験モジュールのフルスケールのモックアップの中で、宇宙で行うべき作業をステップバイステップですべてやり通した。
最初の結果
ビッグバースデー・ウィークエンドで、教師のRichard HaylerとCranmere小学校の子どもたちは、最初の実験結果を発表した。それは、Astro Pi環境センサー、なかでも湿度センサーを使って、クルーがそこにいるかどうかを検知するというもの。変動が検知されると、カメラで写真が撮られ、それが宇宙飛行士によるものなのかを確認する。
今のところ、子どもたちの仮説は正しいことが証明された。湿気の大きなスパイクと、宇宙ステーションの中を動き回っている宇宙飛行士との相関関係があったのだ。
Mini-computer @astro_pi looking out the window. 30 days left to get your code in space! https://t.co/Vdnyf7nAD8 pic.twitter.com/k3uhkdKAIK
— Tim Peake (@astro_timpeake) 2016年3月2日
(ミニコンピューター、@astro_piが窓の外を見ている。キミたちのコードが宇宙で走るまで、あと30日だ!)
Westminster Schoolの実験結果も明らかになりつつある。これはAstro Piの赤外線カメラを利用した実験で、カメラを窓の外へ向けて地上を撮影し、後に色彩加工処理を行い分析することで正規化差植生指数(NDVI)を割り出し、地球の健全化を調査するというもの。
1st pictures from the ISS for Oliver Turnbull's EnviroPi taken by @astro_timpeake @astro_pi https://t.co/0t7mN3bP7U pic.twitter.com/bc3yBVUZhJ
— Westminster CompSci (@WSchoolCompSci) 2016年3月10日
(Oliver TurnbullのEnviroPiによるISSでの最初の1枚。撮影は@astro_timpeake @astro_pi)
そのほかの学校、たとえば、Magdalen College Schoolが行っている、カメラを宇宙線探知機として使う実験の結果も、まもなく伝えられるだろう。
キミのコードが宇宙で?
現在ISSで動いているAstroPiのIzzyとEdをTwitterでフォローできる。まだ、みんなが書いたコードを宇宙に送ることができる。イギリスに在住する18歳以下の人なら、Astro Piのウェブサイトへ、3月31日までにエントリーを提出してほしい。
[原文]