2013.11.15
新時代の化学実験セットを復活させるコンテスト
子どもたちにとって、化学実験セットは科学との最初の出会いであり、初めての実験を体験できるものだ。両親や教師にとっても、子どもと科学を語り合う最初のきっかけになる。アメリカ文化のなかで、化学実験セットは1950年代的な独特なオーラを放つものである、それは子どもたちの科学に対する理解と、なにより科学への興味を引き出す重要な存在だ。
そうした意味で、ゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団の、21世紀の化学実験セットを復活させるコンテストはいいアイデアだ。
Society for Science & the Public(SSP)との共同で行われるSPARK(Science Plan and Research Kit contest:科学計画および研究キットコンテスト)は、小学校の教師から科学者、エンジニア、そしてもちろんMakerを含む幅広い人々から参加を募っている。コンテストは、化学を超えた科学に焦点をあて、「昔の化学実験セットの精神を受け継ぎ、子どもたちに物事に対する『なぜ、どうして』という疑問を抱かせる新しいツール」のアイデアを探ろうというものだ。締め切りは1月7日。一等賞金は5万ドルだ。
Maker Education Initiativeの教育およびコミュニケーションディレクターのSteve Daveeは、化学実験セットで育った人間だ。しかし、今それはあまりにも内容が薄くなってしまったため、大幅なアップデートが必要だと主張する。
「どんどんダメになってます。実験よりもデモンストレーションのほうに重点が置かれていて、付属する化学薬品も少なくなっています。まったく薬品が入っていないセットもあるくらいです」と、Sean Raganの記事を指して言った。
化学実験セットの、子どもたちの想像力を開花させるパワーには、すごいものがあると彼は言う。
「幼稚園から高校まで、子どもの教育に関する私の経験からすると、子どもたちは化学に関係するものには熱狂的な興味を示す。それは、自分でできて仕掛けも理解できる楽しい「魔法」なのだが、それでもミステリーに満ちている。
化学は、子どもたちに、目に見えないものへの想像力を芽生えさせる。物には「秘密」の世界があって、そこを覗くためには、よく調べて、見るための方法をよく考える必要がある、ということをわからせることができる。まったく新しい好奇心の世界だ。頭の中の新しい遊び場であり、秘境だ」
写真提供:Chemical Heritage Foundation(左上と右下)、Dustin Fenstermacher(右上と左下)
「数十年前、化学実験セットは子どもたちの発見への情熱をかきたてました」と語るのは、interimのCEOでSSPの最高発達責任者、Rick Batesだ。
「しかし時代が進むにつれて、子どもたちが物をいじったり探索する喜びを感じる機会が少なくなりました。そこで私たちは、SPARKで、子どもたちの科学への興味を取り戻し、一過性でない好奇心と創造力を養う方法を考えようとしているのです」
SPARKには、実際に使えるプロトタイプだけでなく、まだ開発前のアイデアだけでも応募できる。
「8歳から88歳の子どもに刺激を与えるためのアイデアが欲しいのです」と、ゴードン・アンド・ベティ・ムーア財団の科学プログラムオフィサー、Janet Coffeyは言う。「新しいアイデアやプロトタイプを集めるだけでなく、もっと踏み込んだ話し合いをしたいと考えています。こうした体験が、成長期の子どもが生まれつき持っている好奇心、想像力、疑問に思う力を伸ばす決定的なきっかけとなり、将来どのような職業に就こうとも、科学や工学に関わりを持っていけるようになることの重要性について、語り合いたいのです」
化学実験セットについて考えてみたい人のために、情報源をいくつか紹介しておこう。MAKEのプロジェクトエディター、Keith Hammondは、昔の化学実験セットと、自分で作る方法について、詳しい記事を書いている。Robert Bruce Thompsonは、化学実験セットを作るための本を出版している。Robert BrentとHarry Lazarusによる『The Golden Book of Chemistry Experiments』は、古い本だが今でも創造力にあふれている。
みんなは、どんな化学実験セットを思いつく?
– Stett Holbrook
[原文]