2016.04.22
新刊『発酵の技法』は4月23日発売!
私は今まで料理本を読むことはあっても、それに載っている料理を作ることはなかった。本書は、どこが違ったのだろうか。ひとつの理由として、Sandor Katzが情熱を込めて書いている発酵の変成パワーの説明があまりにも説得力があるので、どうなるか試してみたくなってしまうからだ。私が小学生のころ、酢と重曹を混ぜるとすごいことが起こるよ、と先生が教えてくれた時の気持ちに似ている。微生物による変成作用は実に驚くべきものだし、その結果として平凡な食材から我々人間ではなくバクテリアや菌類が作り出す、新たな風味や興味深い食感なども多くの場合、驚くべきものだ。
—「序文」より、マイケル・ポーラン(『雑食動物のジレンマ』『人間は料理をする』著者)
●書籍紹介文
本書は、発酵の基本と多様な発酵食品の製法を、野菜、ミルク、穀物、豆類、肉、魚などの食材別に解説した書籍です。さまざまな文献や各地の発酵愛好家から寄せられた情報をもとに、著者が実際に作って学んだプロセスを紹介します。取り上げている発酵食品は、ザワークラフト、キムチ、ヨーグルト、ケフィア、テンペ、ビール、みそ、納豆などのよく知られたものから、中南米、アフリカのものまで幅広く、その多様性と根底にあるいくつかのシンプルなパターンに驚かされるはずです。微生物と人間の関係に関する新しい見方や、発酵食品を扱うスモールビジネスに役立つ実践的なノウハウも解説。消費者である我々が、再び生産者になるためのツールとして役立つことでしょう。
発酵の技法――世界の発酵食品と発酵文化の探求
Sandor Ellix Katz 著、水原 文 訳
2016年4月23日 発売予定
B5変形/524ページ
ISBN978-4-87311-763-8
定価3,888円
●目次
1章 共進化力としての発酵
2章 発酵の現実的なメリット
3章 基本的な概念と機材
4章 糖を発酵させて アルコールを作る:ミード、ワイン、そしてシードル
5章 野菜(と一部の果物)を 発酵させる
6章 発酵を利用して酸味の ある強壮飲料を作る
7章 ミルクを発酵させる
8章 穀物とイモ類を発酵させる
9章 ビールなど穀物ベースの アルコール飲料を発酵させる
10章 カビを培養する
11章 豆類や種子、ナッツを 発酵させる
12章 肉、魚、卵を発酵させる
13章 事業化を考えている人のために
14章 食品以外への発酵の応用
エピローグ:文化復興主義者のマニフェスト
●担当から
2011年に出版した『Made by Hand』のなかで、エスプレッソマシンの改造や木のスプーン作り、シガーボックスギター作りなどと同じDIYの活動として「コンブチャ(紅茶キノコ)」作りの体験について触れられているのですが、その際に『発酵の技法』の著者 Sandor Ellix Katzの前作『Wild Fermentation』(邦訳は『天然発酵の世界』築地書館)について何度か言及されています。以下に引用します。
コンブチャの危険と効能のどちらかをとるか思案していた私は、『Wild Fermentation』の著者、 Sandor Ellix Katzの意見を支持することにした。その本はハウツーガイドでありながら、食べ物を自分たちの手に取り戻そうとする声明でもある。Katzはこう書いている。
「発酵食品には、ある種の神秘性がつきまとっている。そのため難しいと思う人も多い。工場で生産される均質な発酵食品は、入念な調整と、正確な温度管理と、培養管理のもとで作られるため、食品の発酵にはこうした管理が不可欠だと信じている人が多い。ビールやワイン作りに関する文献がこうした誤解を助長しているのだ。そのような専門家信仰は捨てよう、と私はアドバイスする。(中略)発酵は簡単で心躍るものだ。誰にでもできる。微生物は柔軟で適用性が高い。たしかに発酵過程では、それぞれ異なる微妙な感覚を学ぶ必要はあるが、そんなものはよく見さえすれば、向こうから教えてくれる。それでも基本はごく単純明快だ。あなたにもできる」
著者の姿勢は『発酵の技法』でも同様です。すでに発酵食品に関する書籍は、数多く出版されていますが、この本では特定の発酵食品の作り方を詳しく紹介するよりも、世界各地の多様な発酵食品を数多く紹介することで、その根底にあるいくつかのパターンを伝え、読者がそのパターンを応用して、自分なりの発酵食品を作るという面が強調されています。各章には「カビが生えた場合」など、トラブルに対応するためのトラブルシューティングも掲載。基本的なパターンを示して、あとは読者の創造性に任せるスタイルは、多くのMakeシリーズの書籍と同様です。
年明けに「書籍に関しても、今年は久しぶりにみなさんの予想を裏切るような“斜め上”のタイトルを準備中です。」と書きましたが、やっとその1冊目を発売することができました。
もし発酵に興味があったら、また今は興味がなくてもいつか発酵への興味を持つようなことになったら、手にとっていただけますと担当者としてはうれしく思います。