Kids

2016.11.09

今日の教育論議に現れるMaker的思考

Text by Lisha Kraft
Translated by kanai

今日の教育界における流行語を見ると、全国の学校でMaker的な考え方が、生徒たちに学問を超えた思考のためのツールを与えるものとして支持されていることがわかる。私は特殊教育(心身に障害のある児童生徒を対象として行われる教育)の教師として、教育システムが普通とは違う学習スタイルを受け入れるようになってきたことも見てきて知っている。STEAM(科学、技術、工学、アート、数学)といったコンセプトは、プロジェクトベースの学習であり、個別の指導であり、自分で調べさせる指導であり、協力的学習であり、生徒主体の指導であり、それらはMakerの考え方に通じている。

人生では問題解決、リスク、改革、自分が持てる範囲でどうにかすること、前へ進むことが求められる。こうした学習を教師が子どもたちに提供できれば、人生のための準備がよりよく準備されるだけでなく、障害を取り除くことも可能になる。

tallchair

STEM教育は、教育現場のみならず、この国の未来の成功のためにも必要であると、その重要性が認められるようになった。科学、技術、工学、数学は我々全員の未来にとって大切であることは広く受け入れられている。これにアートが追加されてSTEAMとなった。STEM / STEAMは、学際的で、手を動かす、カリキュラムベースの教育だ。学際的とは、生徒たちが各々の得意分野と苦手な分野をテーブルに広げることだ。カリキュラムベースとは、特定の教育基準を持ち、それが目的と合致した教師が獲得するものだ。私は個人的に手を動かすアプローチが好きだが、生徒たちもそれが好きだ。とくに、エネルギーが有り余っている子どもや読み書きが苦手な子どもたちに人気が高い。STEM / STEAMの教育は、Maker的思考を実践する具体例だ。教育界での流行語の多くも同じだ。

私の学校では、教育は大変に非凡な目を通して行われるものだと感じている。すべての生徒が、標準的な教室以外の活動に参加しているため、他の教室で出された生徒の宿題を手伝うことが私の主な仕事になっている。そこで私は、子どもたちが仲間といっしょに学習に参加できるように必要なものを与え、サポートすることを楽しんでいる。

先日、ある生徒のポスターを作るという宿題を手伝った。教室で習ったことを使って、数学の5つの法則を具体的に示すというものだ。当初、私は、このあいまいな課題に対して、生徒たちと同じフラストレーションを密かに感じていた。何の方向性も手本も示されていなかったのだ。ワークシートをポンと開いてやれば、生徒には簡単に済ませられてよかったかもしれない。私はそれを見て、子どもたちに指示を与え、クラスの終わりには宿題を完成させることができただろう。しかし、このポスターの宿題には制限がない。ワークシートというものは、作業に集中し限定するという特徴からして制限がある。そのため、それを使えば学習の制限のない子どもたちに制限を与えてしまう結果になる。

この宿題をどう手伝うべきか、しばらく迷ったあげく、私は自分のMaker的思考を応用しようと考えた。私はその子に、いくつかの基本的な方針を示し、大いに励まし、自由にさせた。私はそこにいてサポートはするが、彼に宿題の主導権を与えたのだ。正しくできているかどうか、彼は何度も私に聞いたが、私は書かれた情報に誤りがないかどうかだけを尋ねた。彼はそれらを確認し「はい」と答えると、私は「それなら合ってるはずだわ」と答えた。

この生徒は、自分のノートを見て数学の法則を復習しただけでなく、何かを作り上げた。とてもシンプルだが、これは彼自身のポスターだ。この生徒は、通常、何をするべきか、どうやるのか、直接的な指導を求めることが多かったが、それは実際の会話とは違う。高校を卒業してからの実社会では通用しない。この宿題は、単にカリキュラムを変換するものではなく、教室の外の世界がどのように動いているかを知る助けとなったのだ。

scissors

この生徒は、自分の能力のレベルで宿題を行う機会が与えられた。クラスの他の生徒全員にもだ。私はその担当教師に、他のポスターも見せてほしいと頼んだ。そこに私は、優れたアート性やユニークな構造的思考を感じた。しかも、ほとんどの生徒は他の生徒と協力しなければ宿題を完成させることができなかった。そして、他人と協力することの大切さを学んでいたのだ(私の生徒はたまたま宿題を出されてた日は欠席していたが、この宿題は柔軟に応用できる)。数学教師はこう説明してくれた。この宿題は、クラスで協力し合って仕上げることを目的としていたのだと。ここに流行語が出てきた! 協力的、プロジェクトベース、数学、個別的な要素がシンプルな形でまとめられていたのだ。Maker的思考を実践するために、必ずしもハイテクな機材は必要ない。

私を、特殊教育の世界の教育者とならしめているのはMaker的思考だ。この思考は、現在の教育用語に反映されている。従来のワークシートに限界を感じ、プロジェクトベースの学習、個別指導、自分で調べさせる指導、協力的学習、生徒主体の指導といった考え方を取り入れる教師がどんどん増えており、教育の障害がどんどん取り除かれている。これがすべての生徒の未来に何をもたらすか、そして我々全員が特別な学習者、思考家になれることを考えるだけで、めまいがするほどうれしくなる。

原文