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2013.09.10

新世代のイノベーターを育てる方法

Text by kanai

アメリカのK-12(幼稚園から高校までの生徒たち)はとても重要な時期を迎えている。科学と技術へのチャンスに溢れた未来がそこまで来ているのだ。しかし、今のシステムでは生徒たちに十分な準備をさせることが難しい。

2013年5月に発表されたFederal Science, Technology, Engineering and Mathematics (STEM) Education 5-Year Strategic Plan(科学、技術、工学、数学教育(STEM)に関する米連邦5年戦略計画)には、アメリカのK-12システムは、STEM教育において中程度のレベルにあると報告されている。調査対象となった33カ国のなかで、教室で習ったことを応用する能力については、「科学でアメリカよりもスコアが高かった国が12カ国、数学では17カ国」あったという。

ともかく、将来の仕事はSTEM関連の仕事になる。熟練した働き手の数よりも多くの雇用が生まれることを意味している。このSTEM戦略計画では、「大統領科学技術諮問委員会の試算では、次の10年で、STEM系学校の卒業生の数が、アメリカの産業が必要とするよりも100万人少なくなる」と報告している。100万人だ。アメリカの雇用と健全な経済のために、今から生徒たちに将来の準備をさせなければならない。この先、さまざまな工学や科学の分野で3Dソフトウェアや3Dプリンターが普及することになる。これらは、アメリカのSTEM教育を向上させるには欠かせないツールだ。

ありがたいことに、それはもう始まっている。まだ主流とは言えないが、多くの先進的な教師、政治家、父兄、技術の専門化が、3Dを使ってSTEM教育を大きく前進させている。ここ北カリフォルニアでも、Richmond County SchoolsのITディレクター、Jeffries Eppsが夏の3Dキャンプを開き、スキャン、3Dプリント、アプリ開発などを体験する3Dワークショップを行っている。彼の最終的な目標は、フルタイムのベースで 3D 技術をカリキュラムに組み込むことだ。Jeffriesの業績を示すものとして、彼はホワイトハウスのChampions of Change賞を受賞している。ここをクリックすると、Jeffriesの驚くべき活躍を記録したビデオが見られる

Jeffriesはエンジニアに囲まれている。

「すべての生徒にエンジニアの素質があると私たちは見てます」と彼は語る。「私たちはそれを探し出して、表面に引っ張り出しているのです」

彼の言うとおりだ。私たちはみなエンジニアであり、発明家であり、Makerなのだ。だが残念なことに、その生来の発明家の才は、教育レベルで抹殺されてしまうことが多い。しかし、人間である私たちのDNAには、それが組み込まれている。K-12の教育で3Dを採り入れることの目標のなかには、質問すること、批判的に考えること、調べること、答を探し出すことの楽しさを教えるということがある。現代社会の雑音やら気を惹くもの(テレビやゲーム)がうるさいが、私たちは生徒たちに3Dスキャン、モデリング、デザイン、思いつくものをなんでも3Dプリントすることの楽しさを教えることで、彼らが秘めているエンジニアの素質を引き出すことができる。

3D技術のカッコイイ側面も、あなどってはいけない。それが生徒たちを惹きつけ、STEMの授業を、より確かで、先入観からくる印象ほど退屈でないものにしてくれる。エンジニアや科学者の地位を、いわゆるガリ勉のイメージから引き離すことで、力のある生徒たちが、そうした価値ある仕事を目指すようになる。それは技術や技能を身近なものにするというだけでなく、STEM系職業への考え方を変えることにも役立つ。

重要なのは、生徒たちに制約を加えないことだ。3Dを使えば制約はなくなる。3Dは、アートと科学とデザインとスキャンとアニメーションと工作と、いろいろなものの塊だ。その無限の可能性を見れば、生徒たちは未来に興奮する。どんなに複雑なデザインも作れるようになれば、生徒たちが発明した想像上のものを、すべて実体化できる。不可能という概念を知る前の子供たちに、なんでも作れる3Dツールを与えることこそ最良の道だ。そうやって生徒たちを引き込むのだ。

あらゆる夢を実体化する能力が与えられたなら、彼らに現実社会の問題解決を依頼したとき、彼らは物事の手配にではなく、自分の想像力を応用することに思考を集中できるようになる。楽しくて信頼性の高い技術を使うことで、彼らは解決策の追求に没頭でき、適切な質問ができるようになる。さらに、早い時期に、物を作る楽しさを学べる。ツールを与えて、K-12のころから内に秘めたエンジニアの素質を鍛える。そうすることで、イノベーターが育つのだ。

– Ping Fu(Josh O’Dellと共著)

原文