Kids

2014.05.19

Maker Faireのブースの作り方(よりよい来場者とのコミュニケーションのために)

Text by Michelle "Binka" Hlubinka
Translated by kanai

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作っただけではダメだ。それを多くの人に見てもらって、その素晴らしさを伝えなければ。写真、スケッチ、プロトタイプ、失敗作などなど、そうしたものはそのプロジェクトの意味と背景を伝える物語になる。Maker Faireを見に来るお客さんは、Makerたちがそのプロジェクトを、なぜ、どうやって作ったのかを聞くのが大好きだ。だから、プロジェクトのプロセスを語るための材料をしっかり集めておこう。

しかしお客さんは、あなたにどう声をかけていいかわからないこともある。あなたもお客さんも最高の満足が得られるようにするには、やはり完成したプロジェクトを見栄え良く展示することだ。

Tip #1: 立って目立て!

イスに座ってはいけない。座ってしまうと、お客さんは質問がしづらくなる。数カ月前、私の友人があるMini Maker Faireを見に行ったときだ。そこでは大勢の高校生がブースを出していたが、みな作品の陰に隠れて(携帯)電話をいじっていた。苦労して作りあげたプロジェクトでお客さんを熱くさせることに長けたMakerたちは、みな作品の前に立ち、行き交う人たちに声をかけている。そうすることで、プロジェクトに興味を持ってもらえる。とても単純なことだ。もちろん、これは高校生Makerだけでなく、大人のMakerにも言える。イスの背もたれに寄りかかって誰かが来るのを待っているのは楽でいいが、引っ込み思案ではプロジェクトへの情熱が覆い隠されてしまう。「情熱」とは少し大げさに感じるかもしれないが、何時間もかけて作っているのは事実だ。Maker Faireの本番前に、ちょっと時間をとって、自分のプロジェクトの物語をどう話そうか、どうしたらこのプロジェクトを好きになってもらえるかを考えておこう。「宣伝文句」を考えるのだ。

プロジェクトを語る16の話し方
これは子どものMakerたちのために考えたことなのだが、誰にでも当てはまる。ここから好きなものを選んで役立ててほしい。ただし、全部をやろうとは思わないことだ。それではうるさすぎ。

(1)ブレインストームを公開する
Awesome is What We Totally Areというグループには共有のノートがあり、何ページにもわたって素晴らしいアイデアがびっちり書き込まれている。

(2)最初から最後まで
何から作り始めて、それがどう変わって、最後に展示作品になったのかをわかりやすく見せよう。ロボットキットからスタートしたとしたら、どこに独自の工夫を加えたのかなどだ。とってもきれいに仕上がったとき、それを見た人はキットだと思うかもしれない。そうでないなら、きっぱりと「キットではありません! ボール紙やアクリルを使って最初から作りました」と言うべきだ。その材料を展示してもいいだろう。

(3)ノートを見せる
アイデアのスケッチやメモやプリントアウトも展示しよう。Maker’s Notebookであっても他のものでもなんでもいい。どれだけ頑張って作ったかをわかってもらう、いい材料になる。問題を解決した部分に付箋を付けたり、ポイントとなる部分に色の違うペンでコメントを書き加えてもいい。あなたがどのように考えを積み重ねていったか、細かいところまで理解してもらえる。

(4)バインダーで簡単に
ノートに書き込んだことをもっと簡単に見せたいときは、スクラップブックが便利。ノートの気に入った部分や重要な部分をコピーして使う。厚めの紙にコピーしたほうが耐久性があってよい。3つ穴のバインダーを使えば、仕様表や新聞の切り抜きや、紙ナプキンに描いたスケッチなども入れられる。ノートと違って、いろいろ柔軟に使えるところばいい。

(5)クリヤーブックに入れる
安いクリヤーブックの透明な袋には、プリントアウトや写真のほか、小物も入れておけるので便利。

(6)ブログを見せる
ブログページを紙にプリントしたり、端末にローカルに保存して見てもらえるようにしよう(インターネット接続がないときのことを考えて)。

(7)自分の写真
みんなでプロジェクトに取りかかっているスナップ写真や、プロジェクトの製作過程の写真を、フレームや小さなアルバムにまとめて置いておこう。

(8)アニメーションを見せる
タイムラプス写真などを撮ってあれば、それを編集してアニメーションとして展示しよう。

(9)スライドショーにする
デジタル写真を集めてスライドショーにして展示しよう。文字は少なめに。

(10)ポスターにする
学術カンファレンスなどのポスターに見立てて、自分たちを科学者とエンジニアとしてポスターを作る。国道脇や地下鉄のポスターのように作っても楽しい。

(11)ハウツーで貢献する
プロジェクトのことを記事にしてMake: ProjectやInstructablesなどのDIYコミュニティウェブサイトに投稿して、DIYコミュニティとメイカームーブメントに貢献しよう。写真を交えて作り方を丁寧に説明することで、多くの人に「作りたい」という気持ちを起こさせる。<

(12)予告ビデオで人を惹きつける
Saphiraの製作チームのひとり、Josephは、その火を吐くドラゴンのアニマトロニックの「予告編」ビデオを作った。性能のいいマイクを使ってナレーションを入れたり、製作中の会話や音を入れる。威勢の良いBGMも大切だ。

(13)デジタルストーリーを作る
写真、ビデオ、アニメーション、サウンド、音楽、文章、ナレーションなどを使って、2、3分の「デジタル・ストーリー」を作ろう。Center for Digital Storytellingでは、性能のいいマイクでナレーションを入れると効果が大きいと話している。

(14)プロジェクトの本を印刷
プロジェクトが完成したら、出来上がった作品や製作途中の写真を集めて、高性能なプリンターで印刷して、一生残る形にしておく。または、BlurbやAppleやLuluが提供しているフォトブックサービスを使って、この数カ月間の活動の様子をアルバムにする。

(15)自分をインタビューする
質問に備えておこう。答を紙に書いて貼り出したり、飛び出す絵本のようにしても楽しい。声を録音しておいてもいいだろう。しっかりと質問に答えられるよう、事前に準備しておくための質問の例を挙げておこう。それに関する面白いエピソードがあれば、会話に絡ませていこう

プロジェクトの目的は何か?
何をしたかったのか?
何に刺激されてこれを作ろうと思ったのか?
なぜ作ったのか?
同じようなプロジェクトを作った人は他にいるか? それともまったくのオリジナルか?
これ以前に作ったものは何か?
どこが難しかったか? どこが簡単だったか? 意外だったことはあったか?
面白い、とんでもない、大変な失敗は?
面白い裏話は?
あなたが最初に作ったものは?
このプロジェクトの師匠になってくれた人はいるか?
どれくらい時間をかけたか?
どうやって始めたのか?
どこからアイデアを得たのか?
どんなところで作業していたのか? 職場か学校か?
いちばん好きな工具は何か?
このプロジェクトがどう展開すればいいと思うか?
現実世界の問題に挑戦したいと思うか?
これをビジネスにつなげたいか、それともただの遊びか?
いっしょに作った人はいるか?
他の人のプロジェクトで影響を受けたものはあるか?
このプロジェクトで他の人たちに刺激を与えたいと思うか?
作ることを誰かに教わったことがあるか?
次は何を作りたいか? 今考えている次なるアイデアは? 将来は何をしたいか?

(16)学んだことを書き出す
このプロジェクトを通して学んだことをリストにしておこう。(1)ハンダ付け、(2)ノコギリでの切断、(3)電動ノコギリでの切断、(4)回路図の読み方、というふうに。このリストが長いほど、お客さんはあなたの努力に感心してくれるだろう。

現場での行動
ブースで何をするかも考えておこう。「何もしない。作品が語ってくれる」ではダメだ。Maker Faireのお客さんは、あなたと同じくらいシャイかもしれない。だから、黙っていては何も始まらないのだ。

・デモを見せる。話をしたいと思ったとき、何かのきっかけがあると話しやすくなる。そこから「これは何ですか?」とか、「この人たちは何をしているのですか?」と質問が出てくる。
・実際に手にとって触れるものを置いておく。博物館でもそうだろう。ボタンやレバーがある展示には人気がある。
・展示プロジェクトと似た作業をやる。そして、ときどき顔を上げて目が合った人に微笑み、いっしょにやろうと誘う。
・あなたが作ったもの、またはその一部の作り方を教える。Maker Faireのお客さんはちょっとしたワークショップが大好きだ。
・立ち寄ってくれた人たちに、お礼にキャンディーやステッカーやピンやカードなどを配る。とくにお土産好きの子どもたちは、どんなくだらないものでも、もらえば喜んで宣伝してくれる。バスケットいっぱいのキャンディーを置いておけば、自然に人が足を止める。
・お客さんが、次のプロジェクトのためのアイデアやコメントを方向性や改良案などを残せる場を作る。いちばん上に質問を書いておこう。1枚の紙に書いてもらうより、付箋のほうがいい。不快なコメントをすぐに捨てることができるからだ。
・ゲーム性をもたせる。たとえば、ルーレットやサイコロを使って、あなたの「宣伝文句」を決めてもらう。または広口瓶に「質問してください。何でもお答えします。ステッカーを差し上げます」などと書いて、中に質問の紙を入れておく。お客さんの目の前で瓶を振って、ゲームに誘う。ひとつそこから質問してもらえれば、続けてお客さんからの質問が出てくるはずだ。
・ブースをフレンドリーで温かい雰囲気にする。風船、背景、照明など、他とはひと味違う演出をしよう。迷路のような会場の中で、目印になるような展示を考える。

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Maker Faire Bay Area 2013のYoung Makersブース。Miranda Morganがデザインし、Kevin Rumon率いるボランティアの子どもMakerたちが作った。Faireの後に作りたいもののアイデアを書く黒板がある。


Maker Faire Bay Area 2007でお客さんが描いたFaker Faireの絵

初めて出展したMaker Faireでは、お客さんが途切れることはなかった。私たちはクレイアニメーションの体験ブースを出していたのが、常に、粘土細工をする人やアニメーションを作る人でいっぱいだった。翌年は、「悪の科学の学校」と私が呼んでいた展示を行った。それを友人のJamieがウィットの効いた「Faker Faire」(偽者フェア)と改名してくれた。最初はなかなか人が集まらなかったが、ひとたび、そのジョークを理解して、私たちがみんなに配るように用意した大量の「特別賞」のリボンを見ると、私たちの遊びに乗ってきてくれた(インチキなデータを貼りだした、ウソっぽいサイエンスフェア風のブースになっていた)。その2日間で、私はお客さんのタイプごとに、人を呼び寄せるための方法を20ほど考えた。たとえば、修学前の子どもが来れば、キラキラしたリボンやカラフルなマーカーをひらひらさせて見せた。もっと年上の、ギークっぽい少年が来れば、挑戦的な感じで質問をぶつけ、何をしたことがあるかを聞き出し、もっとうまくやる方法がないかをいっしょに考えた。そうした関わり合いは、すべてリボン贈呈の馬鹿馬鹿しい儀式で締めくくられた。

さらにいくつか……

・プロセスを見せる。みんな途中の状態を見るのが大好きだ。
・簡単に読める自分の物語を書いておくと、自分自身への説明ともなり、奥深い質問にも答えやすくなる。また、誰かにブースを任せて、他の展示を見に行けるようにもなる。
・見てすぐにわかるような展示にする。そうすれば、シャイな人も安心して見ることができ、あなたも空いている時間に他のブースを見学に行ける。
・つねに感謝の気持ちを! ボードなどで、感謝を込めて、プロジェクトに協力してくれた人たちの紹介をする。
・同じことを何度も何度も話して声を潰してしまわないよう、基本的な質問の答はボードなどに書いておく。だが、それに頼ってはいけない。それはあくまで、そこから先の深い話をするためのきっかけだ。

訳者から:Maker Faire Tokyoでは会場の制約もあって狭いブースで出展していただくことが多く、ご苦労をおかけしているわけですが、これを参考に、持ち前の創意工夫でもって、ますます楽しくインタラクティブなMaker FaireをみんなでMakeしたいですね。

原文