私は、普通ではないものを使ったアートを作りながら世界中を回った。ゴムの専用容器に空気を入れたものだ。そう、風船だ。Airigamiでは、風船の子犬とか帽子とか、小さなものは扱わず、最大で風船10万個を使ったアーティスティックなインスタレーションを製作している。こうした作品でも基本は一般的な犬の風船細工と同じだが、大きなものになると、それなりに工学的に難しい点が出てくる。軽くて柔軟な素材からしっかりとした構造体にすることや、総重量が何十キロにもなる風船をささえられる安全で強固な構造でなければいけない。それに、使用するガスの計算、膨らませる装置の空気圧の調整など、いろいろある。さらに、風船の形状がさらに問題を難しくしている。レンガや2×4で何かを建造するときのノウハウはここでは通用しない。最小単位が球体や、丸みを帯びた円筒や、ネズミの頭の形だからだ。映画『赤ちゃん泥棒』で、エベルが「これを膨らませたら変な形になるんじゃないだろうか」と疑問を持つシーンがある。その答は「いや……、丸が変だというなら別だけど」というものだ。まさに、すべての風船は、建築用素材として考えるなら、とても変な形をしている。
歴史
風船の歴史は数世紀にもおよぶ。もっとも古い風船は、動物の膀胱を空気や液体で膨らませたもので、これを武器として投げたりオモチャにしていたりした。ゴム以外の古い風船は、いろいろな文学にも登場する。
Swiss Family Robinson(1813、『スイスのロビンソン』)に、こんなくだりがある。「パパ」とジャックが言った。「このクジラの内臓を使って風船を作ってくれない?」
Moby Dick(1851、『白鯨』)「彼(マッコウクジラ)の腹の中にガスが発生し、驚くほど巨大にふくれあがり、動物の風船となった」
最初のゴム風船は、1824年にマイケル・ファラデー教授によって作られた。ロンドンの王立研究所で水素の実験に使うためだ。オモチャの風船は、ゴム製造業者だったトーマス・ハンコックがその翌年、液状のゴムをビンに詰めて、空気入れと一緒にキットとして発売した。加硫処理されたおもちゃの風船は、それまでのものと違い、気温の変化に対応できた。これを発明したのはロンドンのJ.G.イングラムで、1847年のことだった。これが、現代のオモチャ風船の原型とされている。
必要な道具
プロジェクトの内容と使える材料によって異なるが、風船には、空気、ヘリウム、または窒素を入れる。Airigamiプロジェクトでは、ほとんどが空気を使っている。それだと、小型の手押し式ポンプから、ボールや自転車のタイヤ用の空気入れ、または大きなエアーコンプレッサーまで使える。
はじめよう:風船アーチ
何でも、大きなものを作ろうとするときには、いかにしてシンプルな構造体を作るか、その基礎を理解しておく必要がある。まずは基本の風船アーチからだ。伝統的な風船アーチには、内部のフレームとして風船以外の素材も使う(風船アートのすべてにフレームが入っているわけではないが、最初はこれを使えば簡単にできるからいいだろう)。
オプション1:小さなアーチ
・Qualatexの11フィート(約3.3メートル)の風船アーチキット(Amazonで20ドルほど、または柔軟な3.3メートルほどのポールとクランプを使って自作してもいい)。
・5インチ(約13センチ)の丸い風船を2袋
オプション2:大きなアーチ
・テントのポールなどアーチ状になる棒
・11インチから12インチ(28センチから30センチ)の丸い風船
オプション1は小型で安価なアーチだ。根元で1.8メートルほどの幅になる。オプション2はずっと大きくて劇的なアーチだ。
風船のサイズを測る
丸い風船と言っても、完全な球体ではない。サイズは、短い方の直径で示される。
すべての風船を同じサイズに膨らませるには、テンプレートを使う。ダンボールに風船の直径の穴を開けたものでいい。スムーズな外観を作るためには、風船のサイズが揃っていることが大切だ。
アーチのサイズを決める
アーチのサイズは計算で出せるが、この段階ではもっと簡単にサイズを決められる。ここに、風船業界の人間が長年使っている簡単な算出方法がある。高さと幅の3つの組み合わせだ。
A. 高さよりも幅の方が大きい。この場合の長さは「高さ+幅」だ。
B. 高さと幅がほぼ同じ。この場合は「高さ×1.5+幅」となる。
C. 幅よりも高い。この場合「高さ×2+幅」となる。
スパイラルアーチの組み立て
ステップ1 膨らませた2つの風船を結び合わせる。
ステップ2 2個の風船を結びつけたペアを2つ、さらに中央で結び合わせる。
ステップ3 4つつないだ風船をポールに差し込み、場所を決めたら風船をポールに巻きつけて固定する。
ステップ4 4個セットの風船を重ねていく。このとき、前の4つの間に次の4つが合わさるようにしていく。
発展させよう
内部のフレームの構造を見てしまえば、これがいろいろな形に応用できることに、すでにお気づきだろう。アーチだけでなく、文字や、その他の複雑な形状も可能だ。このフレームを何セットかつなげばもっと大きなものも作れる。中央の固い部分の代わりにロープや釣り糸などを使えば、フレキシブルな形も作れる。
フレームを使わずに作る:壁の作り方
Airigamiの作品には、よくレンガ壁のようなものが使われている。これには丸い風船ではなく、細長い風船(エアーシップ)を使う。エアーシップ風船は、よく3桁の数字でそのサイズが示される。最初の1桁は直径だ。あとの2桁はいっぱいに膨らませたときの長さだ。たとえば、260となっていれば、直径が2インチ(5センチ)で膨らませると60インチ(152センチ)の長さになる(あくまでもこの数値は目安だ。メーカーによっても違う。正確にサイズを知りたければ、膨らませてから自分で測るしかない)。この種の風船は、直径は変わらず、入れる空気の量によって長さが変わる仕組みになっている(260の風船では、直径2インチは変化しない)。このプロジェクトでは、いっぱいに膨らませてはいけない。膨らませた部分を捻って使うので、破裂しないように、先端に余裕を持たせておくのだ。ここで使用する風船に646があるが、これは18インチ(45センチ)より膨らませてはいけない。また、321も使用するが、これは6インチ(15センチ)までだ。
使用する風船
オプション1: 小さな壁
・321の風船を1袋
・260の風船を1袋
オプション2: 大きな壁
・646の風船を1袋
・260の風船を1袋
オプション1は小さくて予算も少なくて済む。オプション2はドラマチックなほど大きい。
下の動画は作り方を解説したものだ。
ステップ1 646または321を2本膨らませ、途中を捻って下図のようにする。
ステップ2 捻った2本の風船を、捻った部分で撚り合わせて下図のように繋いでいく。
ステップ3 260風船を数本膨らませて、太い風船のジョイント部分に絡ませる。
ステップ4 ステップ3を繰り返して、同じ「レンガ」の列を2つ作る。このとき260は上に伸ばしておく。2段目になる風船は、実際のレンガの壁のように、互い違いになるよう合わせていく。下の260風船は、上の段の太い風船のジョイントとジョイントの間の隙間を通す。
ステップ5 ステップ2からを繰り返して必要な数だけレンガの段を作る。
輪にする
ちょっと変更するだけで筒状の壁を作ることができる。注意すべきは、レンガになる風船の内側の列は短く作ることだ。実際のサイズについては、実際に作ってみて確かめてほしい。
[原文]