Electronics

2017.10.03

懐かしの射出成形お土産自動製造マシン「Mold-A-Rama」

Text by kanai

子どものころ、私はMold-A-Rama(モルダラマ)に夢中だった。1960年代に流行った、射出成形を行うマシンだ。25セント玉を入れると、透明なドームの中でプラスティックの小物が出来上がる。州間道路95号線沿いのガソリンスタンドやレストランやお土産物屋によく置かれていた。夏休みになると、引退した祖父を連れて、家族で何度もフロリダに出かけた。私は、その途中で見つけたすべてのMold-A-Ramaを、取り憑かれたように使ったものだ。シンクレアのガソリンステーションでは恐竜(ブロントザウルスと書かれていた)を作ることができた。私はすべての種類の恐竜を集めた。フロリダの店にあったマシンでは、ワニ、イルカ、フラミンゴを作ることができた。それもすべて持っていた。

私のいちばんのお気に入りは中国と日本の幸福の神、布袋様だ。ある夜、私たちはポンパノビーチにあったゴテゴテに飾り立てられた中華レストランを訪れた(そこでは、すべての個室が仏塔の島になっていて、島と島の間には橋がかけられ、その下の川には鯉がたくさん泳いでいた)。その店のロビーにMold-A-Ramaがあったのだが、そこで作れるのは布袋様だけで、ものすごくがっかりしたのを覚えている。私は布袋様のことは知らず、ただの腹の出た小さな仏像か何かだと思っていたのだ。だが、その店のど派手なランチョンマットを見てすぐにわかった。布袋様は型破りな神様で、よく笑い、いたずらや遊びが大好きで、よく笑う子どもたちに囲まれ、子どもたちにお菓子を配っていた。大きな袋の中には、貧しい人たちに配るための食料や生活必需品が入っている。早い話がサンタクロースが神様になったようなものだ。幼いカトリック教徒の私は、常識を覆された。その後何年もの間、そのMold-A-Rama製の緑色の布袋様は、自宅の机の上にあり、私が眠っている間を見守ってくれていた。

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そんなことを思い出したのは、「Make:」のシニアエディター、Caleb Kraftが、Maker Faire Detroitの取材中にヘンリー・フォード博物館に置かれていたMold-A-Rama の写真をアップしていたからだ。そのMold-A-Ramaが作るのは、博物館にも所蔵されているオスカー・メイヤーのウインナーモビールだ。一番上にCalebが撮影した動画を掲載していく。

補足:大衆製品歴史家で「Make:」のレジデントであるBob Knetzgerによると「ウインナーモビールは、ミルウォーキーのBrooks Stevensがデザインしたもので、フォーマイカのブーメランのような模様や、ミラー・ハイライフのロゴのデザインを手がけた人と同一人物。計画的陳腐化(本来はよい意味を持つ言葉なのだが、多くの人が誤解している)という言葉を作った人でもある」とのこと。

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Mold-A-Ramaは、1950年代にイリノイのJ.H.“Tike”Millerという人物によって発明された。クリスマスに飾るキリスト生誕の様子を表す人形の中の大切な一体がなくなっていることに気づいた彼は、それを探して店を回ったが、どこもセットでしか販売していなかった。そこで彼は、地下室で自作することに決めた。最初は石膏で作っていた。やがて彼と彼の妻が作る作品が評判になり、大量に作って販売するようになった。そして間もなく、彼はプラスティックのキャスティングを試し始めた。それが射出成形に進み、ついにお土産物を製造して販売するMold-A-Ramaへと発展したのだ。

1970年代にMold-A-Ramaの会社がなくなると、別の自動販売機メーカー出身で経理を担当していた共同創設者のWilliam A. Jonesは、残っていたマシンを買い込んだ。実質的に、彼は残存していたすべてのMold-A-Ramaを購入することとなり、2011年にWilliam A. Jones Companyを設立。その後、社名を正式にMold-A-Ramaと変更した。現在、アメリカ国内では100から150台のMold-A-Ramaが稼働している。

ところで、Mold-A-Ramaはどういう仕組みになっているのだろうか? ここに、「How Stuff Works」から解説を抜粋しよう。

油圧によって2つの金型が互いに前進して、しっかりと押しつけられ、底の部分にある素材を流し込むと同時に空気を抜くための穴を除いて、完全に閉じた金型ができる。それぞれの金型の内側は空洞になっていて、管が接続された上部の穴から冷却液(不凍液または水)が常に流し込まれている。マシンは、窓を通してお客さんが見ている目の前で、射出ブロー成形を行い、小さなプラスティックの小物を造る。お金を入れるとマシンが動き出す。ガラス窓からは、何本もの管や鉄の棒がつながったアルミ製の金型が見える。それぞれの金型には、動物や建物などの形を裏返しにした窪みが彫られている。

[中略]

マシンのホッパーの中には、ポリエチレンのペレットが入っている。それは、使用するポリエチレンの融解温度に応じて、摂氏85度から121度に温められる。ホッパーの周囲にはコイル状に管が巻かれていて、そこに高温の蒸気が通る仕組みになっているのだ。時代や場所によって、使われるプラスティックのタイプは異なっていた。現在は、より耐久性の高いブレンドが使用されているが、今でもハネウェル社が最初に使われていた低温で解けるポリエチレンを製造しており、一部のMold-A-Ramaで使用されている。

当時の近代主義的な考え方では、その時代を動かしていた歯車やプーリーやモーターや管を人の目から隠す傾向にあったが、工業の裏の部分を、あえてその工程を分かりやすく見せたという点にMold-A-Ramaの特別さがある。Makerとアームチェアエンジニアの卵であった私にとって、型破りな神様や絶滅した恐竜を目の前で作ってくれるそのマシンは、まさに魔法だった。そんな原子力時代の販売機がまだ生き残っていたとは、うれしいことだ。

Mold-A-Ramaのサイトは地味だが、マシンの簡単な歴史、現在も置かれている場所、どこで何が作れるかがわかる。そうそう、現在の料金は、小物ひとつにつき2ドルだ。

原文