2018.05.15
『子どもが体験するべき50の危険なこと』から8年、10代の少年少女のための “退屈な世界・大人に支配されない意味のある人生を作る” 実践の本、『退屈をぶっとばせ!』発売!
書籍紹介
本書は、自分自身にとって意味のある人生を作りたいと考えている10代の少年少女のための書籍です。
その内容は「すぐに大人にほめさせない」「学校に行かないで学ぶ」「成人になる儀式」「ADHDの子どもへのメッセージ」など、成長の過程で必要なことが書かれたエッセイから、「文章を書くためのエクササイズ」「批評する方法を身につける」「自分自身のメディアを作る」「スニーカーをデコる」「クッキーの焼き方を通して科学実験を学ぶ」「政治家に自分の考えを伝える」「ガレージセールでお金をかせぐ」「自分で自転車を修理する」「ゲームデザインを学ぶ」など、自己表現、社会活動、DIYに関連したハウトゥまで幅広いものです。これらを知り、体験することで、企業が提供する出来合いの娯楽ではない、本当に夢中になれることを自分で見つけることができるでしょう。
感受性の強い10代のうちに触れておきたい書籍、映画、音楽も多数紹介しています。
書籍概要
退屈をぶっとばせ!— 自分の世界を広げるために本気で遊ぶ
Joshua Glenn、Elizabeth Foy Larsen 著、大網 拓真、渡辺 圭介 訳
2018年05月26日 発売予定
348ページ
ISBN978-4-87311-839-0
●全国の有名書店、Amazon.co.jpにて予約受付中です。
●目次など詳しい情報は、退屈をぶっとばせ!―― 自分の世界を広げるために本気で遊ぶを参照してください。
訳者あとがき
本著の訳者の一人である私は、翻訳が本業ではありません。いつもは「ファブラボ」という誰もが使える工房を運営しています。この工房との出会いが、自分の人生に大きな影響を与えたのですが、中でも自分が変わったなと思うのは、買い物に行った時の感じ方です。お店で商品を手に取ると、つい「これ自分でも作れるんじゃないのか?」とか「どうやって作ってるんだろう?」と考えることが多くなり、自分でも簡単に作れそうなものは自作するようになりました。以前は、何か欲しい時には買うことしか考えていなかったので、並んでいる商品の数がそのまま選択肢になっていたのですが、自分で作るという手段を手に入れることで、選択肢がぐっと増え、さらに自分で作ることでサイズや素材も好きに決められることから、売られている商品よりも理想のものに近づくことができました。もちろん、手間や時間はかかるし、下調べもあるので、欲しいもの全部を自分で作るとなると大変なチャレンジになりますが、ファブラボに出会わなければこういう考え方はできなかっただろうし、まったく物作りのことを知らない状態と少しでも知った状態では、こんなにも違いがあるのだなと実感しました。
そんな時に出会ったのが、この本の原書(『UNBORED』)でした。その中には、いつもの生活を楽しくするたくさんのゲーム・遊び・工作などのアイデアが詰め込まれていて、ページをめくるたびに知らなかったカルチャーや考え方と出会うことができました。また、特徴的だったのは、アート、テクノロジー、建築、料理など、さまざまな分野のエキスパートが集まって、それぞれの専門分野について子どもから大人まで、誰にでも分かりやすい文章で紹介していたことです。
工房との出会いによって、自分自身の物作りの世界が広がった体験をしたように、この本によって、読者がデザインまたはエンジニアリング、農業、そして愉快なイタズラなど、知らなかった世界に触れ、紹介されている内容すべてをやる必要はないけれど(もちろん、全部やってくれたら訳者としてはとてもうれしい)、こういう分野や文化があるんだ、と知ってもらえたら、そしてさらには、読者がそれぞれ興味のあることに手を伸ばすきっかけになってほしい、というのが、本書の翻訳を手がけた最大の動機です。
この本を読んだ翌日から、何かしようかなと考える時に、この本を読む前よりも、やりたいこと、やれることの選択肢が増えていれば、訳者として最高の喜びです。なお、本書では、私たちが住んでいる日本では、なかなか想像しにくい海外(特に米国)の生活や文化をもとにした内容もとりあげられていますが、それを無理に日本の文化に置き換えるよりは、そのままの海外の子どもたちの暮らしぶりや考え方にも触れられるよう、できるだけ原書の内容のまま、翻訳しています。
最後になりましたが、原書の制作チーム、そして翻訳をサポートしていただいた方々に感謝します。(大網 拓真)
この本の翻訳をしている間、ずっと自分が子どもだった時のことを回想していた。訳者はとんでもない田舎で生まれ育ったため、今の感覚からすると信じられないくらい自由に過ごしていたように思う。裏山に遊びに行くのに近所のおばちゃんの家の庭の中を勝手にショートカットして行ったり、またそのおばちゃんの家の庭の塀には、どうぞ超えて行ってくださいと言わんばかりにはしごがかけてあったりもした。小さな集落で皆が知り合いだったから成立した環境だったのだろう。裏山では、あの木の皮は甘い、あの木の実は食べられるとか言って色々なものを口にしてみたり、庭で自由に焚き火をしたり、家の前の川でアヒルだかカモだかを捕まえて飼おうとしてみたり(雑草を引っこ抜いて食べさせようとしたが全然だめだった)。気分はまさに、TVゲームのRPGにのめり込んでいる時のような大冒険だった。当たり前だが、大人になり、仕事を始め、都会に住むようになってからはそんなことはできなくなった。もうずいぶんとそういった冒険心は忘れていたのだが、この本を読んでいるとなぜか、その時の冒険心に似た感情が思い出されるのだ。本書は『退屈をぶっとばせ!』(原書『UNBORED』)というタイトルだが、退屈をぶっとばした先にある「わき上がる好奇心」を刺激する本ではないだろうか。もっと自分の好奇心に従ってなんでもやればいいじゃん、と背中を後押ししてくれるような内容だと思う。
ところで、こういった本が出版される背景には、いま多くの人が社会や時代に対して何か窮屈さや息苦しさを感じているということがあるのではないかという気がする。本書の中盤に、「きみはテクノロジを使っているのか? それとも使われているのか?」という言葉が登場する。インターネットやSNSの登場は人間のコミュニケーション能力を格段に拡大したが、それによって曖昧になったプライベートとパブリックの境界(有名人でもないのに)は逆に私たちの行動を窮屈にしていないだろうか。人工知能の登場は未来を予感させるが、開発者ですら完全には理解できないそのテクノロジーは、私たちの行動を支配してしまわないだろうか。結局、人間は「理解」して「自由」になりたいのではないだろうか。最近のメイカームーブメントやファブラボ文化の隆盛も、「自分で作って理解したい」という欲求が根底にあると思う。自分でやっていると思える時、人はのびのびと自由になれるものだ。そしてそこで得た理解を通して、新しい目で世界を見れるようになる。
本書は若い読者向けに、さまざまな「やってみよう」を紹介している。どれからやってみてもいいし、全部やらなくてもいい。多分いろいろな失敗もするかもしれない。でも、他人の失敗のあら探しをして文句を言う人よりも、自分でした失敗を笑って楽しめる人の方が圧倒的に幸せだ。どんどんやろう。許可を待つな!(渡辺圭介)
編集担当者から
担当者が本書のことを知ったのは、発売直後の2012年、「Make:」米国版の関係者が話題にしていたのがきっかけでした。イントロダクションを寄稿しているのが「Make:」創刊編集長のマーク・フラウエンダーだったり、『Cooking for Geeks』の著者、ジェフ・ポッターがキッチンサイエンスのやり方を紹介していたり、他数名の執筆陣が共通しています。いつかは日本語訳を出したいと思ったものの、300数十ページに文字とイラストがぎっしりという本のため、なかなかその分量の翻訳をお願いできる方が思い当たらず、オフィスの書棚の「いつか出したい本」のコーナーに置いたままになっていました。たまたま縁のあった大網さんからのメールで、本書の翻訳の希望をいただいて、びっくりしながら「ぜひ!」という返信をしたのが、2014年末。編集側の事情で世に出るまでに時間がかかってしまいました。お待たせしてしまった翻訳者のお二人にはお詫びを申し上げます。
本書のもっとも大きな魅力は、翻訳者のお二人がそれぞれのあとがきで記しているように、DIY、自分自身を文章、音楽、映像で表現すること、クラフト(日本でもファンの多かった「Craft:」系のエキストリームなクラフトです)、シチズンサイエンス(市民科学)、持続可能なライフスタイル、さらに、心と体に大きな変化を迎える10代のためのセルフヘルプまで、非常に幅の広い内容をそれぞれの分野のエキスパートが本気で書いていることです。
個人的な話で恐縮ですが、高校生の頃に山岳部に入っていた担当者は、英語から翻訳されたアウトドア関連の書籍を愛読していました。アメリカの事情をもとにした本なので、日本では使えない内容はあるものの、知らない世界のことがハウトゥという形でリアルに感じられ、また大人が本気で遊ぶということがとてもうらやましく思え、それらの本を読んでいる間は自分の世界が広がったように感じられたからです。本書を編集している時に、それらの書籍のことや、その内容が自分に与えた影響などを思い返していました。
今回は10代の方でも購入しやすいように、その仕様(ハードカバー、本文2色刷り、348ページ)からは安価な価格(本体価格2,500円)に設定しています。ぜひ一人でも多くの10代の方に手にとってもらって、自分の世界や興味を広げるきっかけになるとうれしく思います。