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2019.07.24

最もシンプルな物作りでありながら奥深い紙飛行機の魅力を紹介! 新刊『世界チャンピオンの紙飛行機ブック』はMaker Faire Tokyo 2019にて先行発売!

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本書は、紙飛行機の飛距離の世界記録を持つ著者による書籍です。世界記録(69.14メートル)を達成した「スザンヌ」をはじめ、シンプルなもの、奇抜な形状のもの、手元に戻ってくるユニークな飛び方をするものまで、22種類の紙飛行機の折り方の紹介を中心に、紙飛行機を思い通りに飛ばすための投げ方や調整方法などもていねいに解説します。紙飛行機は、1枚の紙があれば始められる最もシンプルな工作でありながら、本物の航空機とは異なる複雑な力学に支配される奥深さを持っています。本書には、著者の長年の経験をもとにした航空力学の解説や、手に汗握る世界記録への挑戦ドキュメンタリーも盛り込まれ、読後すぐに紙飛行機を手に近所の公園へ出かけたくなるような、親子で楽しめる一冊です。


●書籍概要

John M. Collins 著、久保田 晃弘 監訳、金井 哲夫 訳
2019年08月07日 発売予定
B5変形判/218ページ
ISBN978-4-87311-883-3
定価2,376円
◎全国の有名書店、Amazon.co.jpにて予約受付中です。
◎目次など詳しい情報は、O’Reilly Japan – 世界チャンピオンの紙飛行機ブックを参照してください。


●監訳者あとがき

この本には「スザンヌ」と名付けられた、あるひとつの(折り)紙飛行機が、飛行距離の世界新記録を達成するまでの物語が綴られています。この本のテーマは、世界記録を達成したこのスザンヌです。なぜなら、まずこの本にはスザンヌの折り方が書かれていて、誰もがスザンヌを折って飛ばしてみることができます。さらに紙を用意すれば、この本で紹介されている、他のさまざまなデザインの紙飛行機を、誰もが自分で折ったり飛ばしたりすることができます。でも、この本の本当の主人公は、スザンヌの設計者であり製作者(折り手)のジョン・コリンズと、その投げ手であるジョー・アヨーブの2人です。それは、この本を最後まで読めば、よくわかると思います。

さて、自分で飛行機をつくって飛ばす。そんな夢のような願いを、もっとも手軽に実現してくれるのが紙飛行機でしょう。世界中、こんなにも飛行機の路線が拡がり、空港から空港へ、毎日のように飛び交っているにも関わらず、今でも「なんであんな金属のかたまりが空を飛ぶのかがわからない」という人がたくさんいます。そんな人でも、紙飛行機が飛ぶことについては、あまり疑問を持ちません。でも、この本の最初の章「なぜ飛ぶのか」をまず読めば、むしろ逆に、金属でできた大型の飛行機よりも、紙で折った簡単につくれそうに見える紙飛行機の方が、どうしてあんなにもよく飛ぶのか、きっと不思議に思うようになるでしょう。

普通の(空港などで良く見る)飛行機の説明から、この本は始まります。飛行機の各部の名称の紹介に続いて、機体に働く「揚力」「重力」「推力」「抗力」という4つの力が示されます。航空力学の基本です。しかし実際に紙飛行機を飛ばしてみればすぐにわかることですが、飛行機は上下、前後だけでなく、左右もある3次元空間を飛行しています。ですから、飛ばした紙飛行機がまっすぐ進むことは稀で、たいてい右か左かに曲がってしまいます。逆にそこのところを上手く使うことで、ぐるっと左右に回って戻ってくる、ブーメラン飛行機をつくることもできます。

紙飛行機の競技とは、飛行機と飛行機をつくる人と、飛行機を投げる人が一体になった、一種のスポーツ、あるいは広い意味でのパフォーマンスのようなものです。実際、紙飛行機を遠くに飛ばそうと思ったら、飛行機の折り方だけでなく、飛行機の投げ方も工夫し、上手にならなければなりません。力一杯投げれば遠くに飛ぶ、というものではありません。むしろ各々の飛行機のかたちや飛び方の特徴を知り、人馬一体ならぬ、人機一体となって、エレガントに投げられるようにならなければ、ギネス世界記録とはいわずとも、そこそこ遠くに飛ばすことは難しいでしょう。

●航空工学と紙飛行機

一般に飛行機をつくることは、エンジニアリング(工学)の仕事だと思われています。確かに、飛行機の設計や製造に関わる学問を、「航空工学」と呼びます。先ほどの飛行機に働く4つの力というのも、工学的に見た時の飛行機の特徴といえます。でも最初にもうひとついっておくと、これはエンジニアリングの本ではありません。工学における設計といえば、きちんと目標(機能)を設定して、設計の対象の特性を調べてモデル化し、そのモデルを数式で記述することで理論化し、その理論にもとづいて、目標を効率よく実現する最適の解を求め、それを製造して具現化する、という手順で行われます。それは理解したものを、確実に実装するための学問です。それに対して紙飛行機のデザインは、よくわからない(モデリングできない)ものに対して、そのわからなさを抱えつつ、試行錯誤を続けながら、少しずつ修正、改良していく、というものです。

先ほどのスポーツの例でいえば、現代的な工学は、オリンピックのアスリートと同じです。まず、競技の種類とルール(何メートル走るのか、どういう道具を使うのか、など)を厳密に定めます。そしてそのルールを満たす整えられた場を競技場の中につくり、その中で(100分の1秒や、1センチといった)ほんのちょっとの違いを競います。技術が成熟した今日の工学は、そうした整えられた環境で微細な違いを競う、アスリート競技のようになってしまいました。どちらも、個人の才能や努力よりも、組織やお金の力が大きな役割を果たします。

それに対して、この紙飛行機の本は、決してアスリートのために書かれた明晰な技術書とはいえません。むしろ、雑草の生えたでこぼこ道、あるいは見渡すかぎり砂以外には何も見えない砂漠を、なんとか進んでみようとした経験の本であるといえるでしょう。理論と呼べるような確固たる支えもなく、今進んでいる方向が正しいかどうかもよくわからず、それでも、じっとしていては生き延びることができない、そんな未開拓の状況を、いったいどう乗り越えていけばいいのでしょうか。そうした状況を「紙飛行機を遠くに飛ばす」ことをひとつの事例として、一人称目線で語ってくれる。これはそんな本なのです。チームはあっても組織はない、目標はあっても手法はない。もちろん、インターネットで検索しても答えは見つからない。ブームや流行になるわけでも、廃れたりなくなったりするわけでもない。特殊なものや、高価なものは必要とせず、身近で安価なものだけで行える。何だか、他にもいろいろありそうに思えますが、そんなテーマは実際、紙飛行機の他にはほとんどありません。

●単純そうで奥深い設計と飛行の理論

紙飛行機の設計に戻ります。紙飛行機をつくることは、実際の大きな飛行機の原理を知るためのよい教材にもなりますが、それ以外、それ以上のことがたくさんあります。紙飛行機の設計の難しい、つまり面白いところは、小さな機体の中にも相反する事柄がたくさんあることなのです。強い力で投げたり、速い速度で飛んだりして形が崩れないように、飛行機はなるべく頑丈につくりたいけれど、厚い紙を使うと飛行機が重くなったり、折りにくくなったり、翼の抵抗が大きくなってしまいます。翼の効率をあげるために、翼はなるべく細長く(「アスペクト比」を大きく)つくった方がいいけれど、そうすると翼の強度が下がって(弱くなって)すぐに曲がったり折れてしまいます。翼を小さくして強く投げられるようにするのがいいのか、翼を広く、あるいは長くしてゆっくり投げる方がいいのか、弾丸のように放物線飛行をするのがいいのか、グライダーのように高く舞い上がって滑空するのがいいのか、いろいろな戦略があるでしょう。

もちろん、1枚の長方形の紙を折ってつくらなければならない、ということが一番の制約(であり自由)であることはいうまでもありませんし、本文にあるように「スケール効果」(紙飛行機は小さいので、通常の大きな飛行機に比べて空気の粘り気=粘性が大きいように感じる)も考えなければなりません。そのうえで、飛行機の運動性能にとってもっとも重要な、「重心」(機体の重量の中心)と「空力中心」(機体に働く空気力の中心)の関係を、うまく設定することが必要です。実際、紙飛行機くらいの小ささになると、飛行機の形を流線型にすることに流体力学的な意味はなくなるので、この重心と空力中心のバランスを軸に、飛行機の形や折り方を決めていきます。

流体力学を少しでもかじったことがある人は、この本でのジョン・コリンズの科学的原理に対する言明に、思わず首を傾げてしまうかもしれません。そうした人は、この本にもあるように「ベルヌーイの定理」(これは大学では、圧力というポテンシャル・エネルギーと流速という速度エネルギーの和が不変、つまりエネルギー保存則として教わると思います)や「等時間通過説」(翼の前縁で上面と下面に分かれた空気は翼の後縁で再び同時刻に出合う)によって翼に働く力が説明できると考えています。実際、僕自身も大学ではそういう教育を受けてきました。しかし本文にあるように、この等時間通過説は今では実験的に否定されていますし(翼の上面の流れが下面の流れよりも早く後端に到達する)、ベルヌーイの定理も空気の粘性を無視できる完全流体に関する理論です。そこでジョン・コリンズは、原因と結果が逆になった、別の説を紹介します。空気が翼の先端にぶつかると、「集群」(bunching)というかたまりになり、そのため気圧が低くなって空気の速度も速くなる、と。

空気力学を考える時、大きく分けて、2つの見方が可能です。ひとつは物体が静止していて空気の方が流れているという見方、もうひとつは、静止している空気の中を物体が動いていく、という見方です。航空機も紙飛行機も、実際には後者なのですが、航空機の飛行力学では、前者のような見方をしがちです。確かに翼も流れも滑らかで、しかも動きがほぼ一定で、翼も変形しない定常状態の場合、両者に違いはありません。しかし、実際には、紙飛行機を投げる時には、ほぼ静止した状態から、人の手で投げる、という複雑な動きによって、機体のスピードが急激に上昇し、その力によって紙飛行機自体も大きく変形します。こうした動きは、飛行機というよりも、鳥や昆虫のような、小型生物の飛翔に近いのです。

鳥や昆虫のような、紙飛行機と同じくらいのサイズの飛行生物に、航空機の理論を適用しても、その飛行メカニズムを説明できないことは、昔からいろいろな人に指摘されてきました。最近の研究で、昆虫のような小さな動物の翼の場合、翼の先端で流れがはく離して「前縁渦」と呼ばれる空気のかたまりができ、それに伴う大きな負圧によって翼が吸い上げられて、上向きの力(揚力)が生まれることが発見されています。この前縁渦による空気のかたまりが、ジョン・コリンズが集群と呼んだものに当たるでしょう。自然界の生物のさまざまな飛行では、この前縁渦が非常に重要な働きをしています。まさに、ジョン・コリンズの直観の方が、実際の現象に近かったのです。紙飛行機のように、慣性力と粘性力との比を表す「レイノルズ数」が小さくて、粘性力が相対的に大きい場合(レイノルズ数が10の3~4乗程度、旅客機の場合は10の7~8乗程度)、航空機のようななめらかで厚い翼よりも、薄くて湾曲した翼の方がいい性能が出るのは、こうした理由によるものです。

一般の翼に働く力も、前述のベルヌーイの定理ではなく、空気の粘性による「コアンダ効果」によって説明ができるという説があります。これは翼の前縁渦によって誘発される下向きの流れによる、作用反作用(流体との運動量の交換)の効果といえるでしょう。ともあれ、紙飛行機のような小さな飛行機の周りには、(鳥や昆虫と同じように)こうした単純な理由では説明できないほど複雑な、時間的に変化する3次元の流れが発生していることを忘れてはいけません。さらに、こうした流体のメカニズムは、天気のような複雑系と同じように、ちょっとしたことでその結果が(予測もしていなかったように)大きく変わってしまう不安定な現象です。ジョン・コリンズの飛行機も、速度の変化による、空気の流れ方の大きな変化をうまく利用しています。スザンヌは、最初は弾丸のように急上昇するのですが、最高高度に達すると一転して、機首を下げた滑空モードに入ります。するとスザンヌは次第に速度を増して、再びゆるやかに上昇するのです。まさに剛から柔への大転換といっていいでしょう。こんなことができるから、紙飛行機の設計が(一定の速度で航行する航空機の設計とはまったく違った意味で)奥深いのです。そして奥深いということは、その難しさの理由を知れば知るほど面白くなっていく、ということでもあります。

●世界記録までの険しい道のり

紙飛行機の面白さは、何も飛行機の設計や飛び方だけではありません、飛行機の製造にあたる紙の折り方、そして飛行機の動力(エンジン)にあたる投げ方、そのいずれにも、紙飛行機にしかないさまざまなノウハウや工夫の余地と未知の可能性があります。この本の2章の「投げ方と調整」、折り紙の基本をまとめた3章の「折り方入門」、そして世界記録を樹立した紙飛行機「スザンヌ」をはじめ、シンプルなものから、優美なもの、細かい工夫が施されたもの、複雑なもの、リング翼のような奇抜なもの、こうしたさまざまな紙飛行機の折り方が満載の4章。この3つの章は、この本の中でもまさに「メイカー」的、つまり自分の手でつくってみたり、やってみたりすることが好きな人たちのために書かれた部分といえます(ジョン・コリンズが考えるメイカー=つくることの意義については、ぜひ冒頭の「はじめに」を読んでみてください)。道具の揃え方、折り方のコツと注意点、それぞれの紙飛行機の折り方に添えられた、ジョン・コリンズ自身による設計コンセプトと飛び方の解説、さらには豊富な図と写真。この3つの章に書かれた紙飛行機の折り方を、ひとつづつ自分の手で試したり、改造していくだけでも、きっと何カ月も、何年も楽しむことができるでしょう。継続とは、続けることではなく、止められなくなることなのですから。

さて、ここまでで終わるのが、そしてそれだけでも読者を十分に満足させてくれたのが、これまでの紙飛行機に関する本でした。しかしこの本は、それだけでは終わりません、いや、ここからがスザンヌの滑空モードの飛行と同じように、この本の本領発揮ともいえるでしょう。それが5章の「世界記録を出した飛行機の物語」です。この章のタイトルは「世界記録を出すまでの紆余曲折と試行錯誤の物語」と読み換えてもいいかもしれません。ここで、本書に断片的に書かれている、ギネス世界記録のルールの概要をまとめておきます。

・室内で飛ばす
・使用する紙の重さは100gsm(1平方メートル当たり100グラム)以下
・25ミリ幅のセロハンテープを30ミリまで使える
・紙を切ることはOK
・1人の人間が投げる
・助走は3メートル(10フィート)以下
・試技は10回まで

このギネス世界記録のルルの中で紙飛行機を遠くに飛ばすためには、機体をなるべく重くする必要があります。そこでジョン・コリンズは、このギネス世界記録の規格ぎりぎりの(単位面積当たりの)重さの紙を使用し、さらに規格で許されているセロハンテープを目一杯使います。先ほど、紙飛行機の空気力学の話をしましたが、紙飛行機の記録をつくるためにコリンズは、このルールを逆に利用して、できるだけ機体を丈夫につくったり、さらに動力としての人間が投げやすくするためのアイデアを生み出していきます。こうした限られた制約の中で、飛び方だけでなく強度的な要求を満たしてくれる折り方を発見していくのが、折り紙の構造力学です。紙のサイズをレターサイズからA4サイズの少し縦に長いものを使用するだけで、重心の位置が移動してしまうように、この構造力学(機体の強度と人間の投げやすさ)と空気力学(機体の形状と表面の質感)の両方を、たった1枚の紙を折ることで両立させるのは、考えれば考えるほど複雑で、だからこそさまざまな可能性があることに、読者のみなさんも気づいてくれるでしょう。

他にもまだまだ、記録を達成するために乗り越えなければならない問題(試練)が待ち受けています。まずは場所です。記録に挑戦するためには、紙飛行機を飛ばすための天井が高く広い倉庫を借りなければなりませんし、投げ手(ジョー・アヨーブ)と試行錯誤と練習を重ねる時間も必要です。それらを実現するためには、もちろん費用がかかります。そしてそうした場所や費用を得るためには、スポンサーが必要です。そんな世界記録達成のために避けては通れない、さまざまな現実的な障壁をひとつづつ乗り越えて、コリンズとアヨーブの2人は、2011年7月に行った、モハベ砂漠の宇宙船格納庫でのリハーサルで、早々に世界記録を破ります(もちろん非公認記録です)。

あとは公式の場で記録をつくるだけ、前途洋々に思えたここからが苦難の道の始まりでした。それと同時に、(コリンズとアヨーブには申し訳ありませんが)この物語がぐんと面白くなっていきます。なぜなら、そうした苦難こそが、飛行機のディテールを洗練し、デザインを次のレベルにあげてくれるからです。もしあのまますんなり世界記録を達成していたら、この物語はずっとシンプルなものになり、物語ではなく紙飛行機のつくり方とその記録だけが一人歩きしていったことでしょう。

後から振り返れば、「状況に呑まれて基本を忘れる」ことで起こった、2011年8月29日のモハベでの大失態は、スザンヌのデザインを仕上げるために、避けては通れない道でした。問題点を顕在化するために欠かせないプロセスとしての失敗は、アメリカ的プラグマティシズムの「間違い主義(人は間違いのみによって真理に到達することができる)」という考え方の中心に位置しています。「挑戦をやめたときが本当の失敗」という、この大失態後の周囲からの助言は、このスピリットが、今なお生きていることの証です。あきらめなければ、継続していれば、必ずチャンスはめぐってくるのです。実際コリンズらは大失態のあと、すぐにその原因を分析し、スザンヌのさらなる改良に着手します。特に「飛行機の速度が変わると、空気が翼を離れる場所が変わる」ことの再発見は重要です。なぜなら、こうした設計こそが紙飛行機でのもっとも紙飛行機らしいところ、そして工夫や試行錯誤のしがいのあるところだからです。

そして2012年2月26日の2度目のトライアル。紙飛行機は消耗品です。どんなに丁寧につくっても、飛ばすたびに少しずつ変形して、ひとつの機体はせいぜい15回くらいしか飛ばすことができません。はかなくて、そしてすぐに消えてしまう即興演奏のようです。さらに、当日の気温や湿度などの環境の変化、10回しか行うことができないトライアルの間の機体の調整と、それを行う人間の心理のゆらぎ、予期せぬ細かいものごとが集積していくその過程は、どんなに準備しても想定通りには進んでいかない、まさに即興劇というべき、手に汗握るドラマになりました。

最後に、少し個人的なことを書くことで、この解説を終わりにしたいと思います。本の最後に、ジョン・コリンズさんの生い立ち、すなわち紙飛行機開発の個人史が書かれています。そこでジョン・コリンズさんが僕と同い年ということを知り、何だか彼と、その紙飛行機が少し近くなったように感じました。さらに、Maker Faire Tokyoでの「飛びものワークショップ」や、東京都三鷹市立の第三小学校「三小わいわい広場」での「ふしぎな紙飛行機〜飛びもの自由工作〜」を行ったことで、紙飛行機をうまく飛ばすことの難しさ、そして子どもから大人まで、それぞれの視点でそれぞれの楽しみを発見できる紙飛行機の懐の深さを、僕自身も間近に見たり体験することができました。

今回、Maker Faire Tokyo 2019参加のためのジョン・コリンズさん来日に合わせて、この本の日本語版を出版できることを、とてもうれしく思います。日本には、紙飛行機のもうひとつのギネス世界記録(滞空時間記録)保持者の戸田拓夫さんがいて、折り紙ヒコーキ協会を中心に活発な活動が行われています。この本を通じて、ぜひひとりでも多くの方に、折り紙飛行機の楽しさや面白さを知ってもらえれば、こんなにうれしいことはありません。

2019年6月
久保田晃弘