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2019.07.22

mBotをただの車型ロボットで終わらせないための本『mBotでものづくりをはじめよう』は7月26日発売!

Text by editor

世界で数十万台以上販売されているMakeblockのプログラミングロボット「mBot」。オープンソースプラットフォームをベースにした柔軟な拡張性を備えており、新しいコンポーネントの追加や、自由なアイデアを実装できるのが特徴です。そんなmBotを使い、基本の組み立て方にとどまらない、オリジナル作品やプロジェクトを作るための本が発売されます。


●書籍概要
Rick Schertle、Andrew Carle 著、倉本 大資、若林 健一 訳
2019年07月26日 発売
A5判/320ページ カラー
ISBN978-4-87311-879-6
定価2,592円
◎全国の有名書店、Amazon.co.jpにて予約受付中です。
◎目次など詳しい情報は、O’Reilly Japan – mBotでものづくりをはじめようを参照してください。


mBotといえば、超音波センサーを目玉に見立てた笑顔の車型ロボットの形に組むのが、ベーシックな使われ方です。多くの入門書では、mBotをまずこの形に組んで基本のプログラミングを解説するにとどまり、また教室などにおいても、付属リモコンで動かせるライントレースなどのプリセットプログラムを試すにとどまってしまうケースも多いようです。

しかし、本書の著者たちは「それだけではもったいない!それだけで本当に満足なの?」と言わんばかりに、基本キットとアドオンパーツを使った独創的なプロジェクトを次々と提案します。たとえばこんな風に。


カタパルトボールランチャー


エサをあげると耳を動かすパペット


ドアモニター


防災システム(スプリンクラー)

もはや、お行儀の良い「STEM教育ツール」「ロボット教材」のイメージをはるか超えているのを、感じていただけますでしょうか?

mBotの心臓部であるコントローラー「mCore」は、Arduino Unoをベースに作られています。ですから、Arduinoプロジェクトのほとんどは、mCoreで動かすことができます。こうしたArduinoプラットフォームの拡張性を、扱いやすくパッケージ化して提供することで、mBotは学校やプログラミング教室などで広く教材として使われ続けています。しかし、この本を読むことで、mBotが本来持ち合わせるポテンシャルに気づき、さまざまな可能性があることを知るきっかけになるでしょう。

本書を読んでいただくと、ここで書かれているプロジェクトは、著者たちが実際に学校のなかで子供たちとともに取り組んだプロジェクトの実体験をもとに書かれていることが、実感いただけると思います。「通りいっぺんその通りに真似すれば簡単にできる」風なチュートリアルにはなっていません。でも、何週にもわたって教室でプロジェクトを進める際の、複数のmbotのおすすめ保管方法や充電方法にまで言及している本は、なかなかないのではないでしょうか。緻密につづられた文章には、彼らが実際に取り組んだからこそわかるヒントにあふれています。そして、説明書のとおりに使うだけでなく、試行錯誤から新たに生み出されるものこそが、本当の教育の産物なのだというメッセージを感じることができるでしょう。

日本語版は、6月にリリースされたばかりの新しいプログラミングツール「mBlock5」に対応しているのも特徴です。原著ではmBlock3で記述されているプログラム例を、日本語版ではmBlock5にて解説しています。Scratch3.0をベースに開発されたmBlock5は、Makeblock社のさまざまな製品に対応しており、これから使いはじめる人にとってはmBlock5が主流となるでしょう。

プログラミング/STEM教育の現場にいる方はもとより、メイカーのみなさんにも、手に取っていただきたい1冊です。


●訳者あとがき より
2014年のMaker Faire Tokyoに出展していた私たちのブースに、Makeblockのメンバーが訪ねてきました。私が子供向けにScratchを熱心に使っているということを聞きつけ、彼らの製品の体験会に招待してくれ、そこにあったのが試作中のmBotやMakeblockのロボットでした。そうした交流をきっかけに開発環境のmBlockの日本語化を手伝い、その後日本でも見かける機会が増えましたが、同時に本書にもある付属のリモコンとプリセットのプログラム以上に進む際は、どうしたら良いのかという戸惑いを感じているユーザーも少なくないようで、気がかりに感じていました。

ひとつの完成図が示され、それがすべてだと受け止めてしまうことはよくあることですが、たとえばLEGOのブロックをパッケージに示された形で何年も遊び続ける子供がいないように、愛嬌あふれるmBotの姿もあるひとつの側面なんだと気がつくためのヒントが本書には揃っています。本書が、多くのmBotユーザーやこれから楽しむ人に届き、ものづくりから学ぶことの楽しさを一層引き出すきっかけとなればうれしいです。
――倉本 大資

2年前(2017年)アイルランドのダブリンで開催されたCoderDojo主催のプログラミング作品展示イベント“Coolest Project”に参加した時、最も印象に残った作品が2人の女の子のチームが作ったmBot(mCoreと周辺部品というべきか)ベースのロボットアームでした(https://youtu.be/sncgnIOP2a8)。私はそのロボットアームを見て「mBotはものづくりのプラットフォームだ」ということを強く認識したのです。それから2年が経った今、まさしくmBotをものづくりのプラットフォームとして使うための本に関われていることに運命を感じています。

この本は、1章でmBotに付属の取扱説明書よりも詳しく組み立て方を説明しながら、最後にはmBotの世界を飛び出すまで「mBotをただの車型ロボットで終わらせない」ための具体的かつ実践的アイデアが満載です。みなさんには、この本のレシピに沿って作るのではなく、これらのアイデアにインスピレーションを得ながらオリジナルの「車型ロボットでない」mBotの世界を楽しんでいただければと思います。
――若林 健一