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2022.09.13

電卓を演奏するロボット、新聞から予告状を作るマシンなど、思わず見入ってしまうメカ制御の技 ― Maker Faire Tokyo 2022 会場レポート #3

Text by Yusuke Imamura

メカニカルに制御されたものが動く様子は見ているだけでも楽しい。ステッピングモータがタイミングベルトを行き来させ、ヘッドを動かすタイプの展示を紹介する。

電卓を叩く

市販されている電卓の中には、音楽を演奏できる機種もあるという。YouTubeなどには「電卓で演奏してみた」動画が多数投稿されている。

そんな中、「GOTO STATEMENT」が開発したのは電卓を演奏するロボット「A-HOGE」である。レールの上を4つのアームが動き、アーム上のユニットがクランクでソレノイドの位置を決めてソレノイドが電卓のキーを叩く。1つの電卓は1つの音しか出さないので、4つ並べて最大四重奏が可能だ。また1本のアームの動きではキーを叩くのが間に合わないときも、ほかのアームと分担することで高速演奏できるという。

当初はキー1つにソレノイドを1つ対応させて、多数のソレノイドをずらりと並べる方式も考えた。しかしそれでは動作中の動きが少ないため、電卓1つを担当するソレノイドは1つとし、ソレノイドを前後左右へ動かす方式にした。またソレノイドを前後に移動させる機構には、見た目に派手なクランクを採用した。その結果、演奏だけでなくアームが動く様子を楽しめるロボットになったという。

キーを叩くソレノイドは定格が6ボルトだが、打鍵のパワーが低かったため12ボルトをごく短時間流している。打鍵音が大きくなったが、むしろそこを気に入っているそうだ。

メッセージを組み上げる

tofunology」が出展したのは大きなアルミフレームの枠内を3つのヘッドが動くメカ。フレーム内には新聞紙が広げられており、その上にはカメラが設置されている。これはなんだろうか。

3つのヘッドには左からそれぞれ、新聞紙から文字を切り取る、切り取った文字をはがきの上に移動する、文字の移動先にあらかじめテープのりを塗っておくという役割が与えられている。

制御端末のiPadから文章を入力すると、カメラを使って新聞紙面上からその文字を探し出す。見つけた文字を切り出すには円形のカッターをピザカッターのように使う。はがきにテープのりが塗られ、切り取られた文字が空気を吸い込むパイプで掃除機にくっつくように持ち上げられ、テープのりの場所に押しつけられる。

1文字ごとに繰り返してできたのは、筆跡を隠すために新聞から文字を切り貼りしてメッセージを伝える、昔ながらの予告状だ。名付けて「筆跡根絶!『予告状マシン』」。これならば指紋すらつかない。

超高速3Dプリンタ

株式会社グーテンベルクが開発した3Dプリンタ「G-ZERO」はFDM(熱溶解積層)方式で造形する。ひも状の樹脂(フィラメント)をヘッドで溶かし、積み重ねて出力していく。家庭用の3Dプリンタではもっとも一般的な方式である。「G-ZERO」がほかと違うのはその出力速度だ。

FDM方式の3Dプリンタをふだん使っているなら、ヘッドの移動が見慣れたものよりはるかに速いことに驚くのではないだろうか。FDM方式の3Dプリンタは通常、50ミリ/秒前後の速度でヘッドを動かして出力する。しかしG-ZEROのヘッドは最高500ミリ/秒と超高速で動かせるという。それでいて出力物の品質は高く、積層のずれなどは見当たらない。

3Dプリンタのヘッドを速く動かすと、さまざまな問題が起きる。フィラメントが溶けるのが間に合わない、マイコンの処理が追いつかない、ヘッドの加速で慣性が働き正確な場所で止まらない、3Dプリンタ本体の振動が大きくなるなどである。その結果、出力品質が落ちていくが、G-ZEROはこれらの問題をさまざまな技術で克服している。

価格は税別で98万円と、FDM方式の3Dプリンタとしてはきわめて高額である。しかし出力にかかる時間が数分の一になるメリットは大きい。企業の開発部門のほか、さまざまな方面から引き合いがあるそうだ。