Fabrication

2022.09.15

7セグメントの数字を物理表示。それぞれの工夫がこらされた驚きの作品 ― Maker Faire Tokyo 2022 会場レポート #4

Text by Yusuke Imamura

同じ目的を、異なる方法で実装する展示を見ることがあるのもMaker Faireの楽しみだ。今回は、通常7セグメントのLEDで表される英数字を物理的な方法で示す展示が2つあった。

円盤の回転で数字を表示

毎回新しいアイデアで楽しい展示を見せてくれる「ねくある[NEXT+α]」で採用されていたのは、円盤を回転させる方式。7セグメントの表示を上半分と下半分に分け、1桁ごとに上下4枚ずつ、合計16枚の円盤を使って2桁の数字を表現している。回転の制御にはRaspberry Piが使われていた。

円盤上の文字の断片には緑色の線や円も見える。これは数字だけでなく、文字や記号を表示できるようにするためのスタディだという。今後、桁数を上げるなどの展開も考えているそうだ。

また、この表示装置は総務省が行っている異才発掘プログラム「異能vation」のもと開発しているとのこと。いつか別の場所で、この表示方式を見かけることがあるかもしれない。

複雑な機構の非電源数字表示

一方、レーザーカッターで切り出したMDF材を複雑に組み合わせ、電力なしで7セグメントの数字を表示させていたのは「宇生(たかお)・ラボ」。展示していたのはレバーを動かすと枠内の数字が増えていくタイプと、減っていくタイプの2種類だった。

数字の表示方法は、7セグメントの左上、右中央、左下の3か所に軸を設け、そこに取り付けたTの字やLの字のパーツを適宜回転させるもの。3つのパーツの回転で0から9までの数字を表現できている。レバーを動かすたびに数字の後ろの機構がガチャンと動作するのが楽しい。

これを開発したきっかけは、「書き時計 plock」を見たことだったという。時刻を表示するパネルを囲むように複雑で美しい機構がびっしりと組まれており、ただの時計ではなく芸術作品のおもむきだ。

この種のものを作ってみようと思い立った宇生氏だったが、機械的にどう実装するかの知識はまったくなく、独学で2年以上かかって今の状態までこぎつけたという。「コロナが出てきて時間ができたので」とのこと。

数字の表示は完成したため、この機構を組み込むゼンマイ式の振り子時計を作った。時計といっても時刻を表示するものではなく、1秒おきに2桁の数字がカウントアップしていく。動力はゼンマイなのでこれも電気を使わない。

先日、3つのパーツを使った7セグメントの表示に関連する特許を申請したばかりだという。こちらも新しい展開に期待したい。