Crafts

2009.08.19

Make: Projects – 巨大スノーグローブを作ろう

Text by kanai

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直径20センチのスノーグローブなんていらねー、って言われるかなぁ。しかも、ブライアン・デ・パルマ監督の『スカーフェイス』のラストでアル・パチーノが銃を乱射するシーンのフィギュアが、どうしてスノーグローブになるのか疑問に思ってるかも。いやいや、キミはまだ、この本当の魅力を知らないのだ。
このプロジェクトは、どんな人間でも人生のある時点で、この “say-hello-to-my-little-friend” スノーグローブに心癒されるときがかならず来ると、ボク自身が心底、本気で感じたことからスタートした。そこで、トニー・モンタナの手頃なフィギュアを探したところ、いくつか見つかった。しかし、コカインで正気を失ってマシンガンを撃ちまくっている場面のものはMezCo Toys製の “The Fall” バージョンただ1つだった。大きさは18センチもある。ボクが調べた限り、入手できるいちばん大きな空のスノーグローブでも大きすぎて入らない(というか、ネットでスノーグローブの側だけを探すのは、意外に大変な作業だった。アマゾンでキットを売っていたが、ご想像のとおり、スノーグローブフォトフレームみたいなものばかりで使えない。本物を手に入れるには、snowdomes.comへ行かないとダメだ)。
そこで違う方法を考えざるを得なくなった。ある日、ホームセンターを歩いていると、棚の上に並べられたガラスの照明カバーが目に入った。そしてボクの電球が光った。まん丸で完全に透明なものを探すのには苦労したけど、eBayで探したら、意外にすんなり見つかった。ガラス製で直径20センチ、口の直径は約9センチという、MezCoのトニー・モンタナにぴったりのものだ。しかし、同じサイズでアクリル製のものもあった。こちらのほうがよさそうだ。軽いし、割れる危険性がない。
次に考えなければならないのは、口を密閉する方法だが、それはすぐに解決した。ボクが働いていた研究室で使っていた巨大なゴム栓だ。調べてみると、最大のゴム栓は#15 というやつで、9センチの口にぴったりはまる。このゴム栓には、ナチュラル(オフホワイト)と黒がある。eBayで見つかったのは#15の黒だった。値段もそんなに高くなかった。また、これなら、グローブの口にピッタリとはまるので、密閉のための接着剤やシール剤などは必要ないことがわかった。
最後の問題は雪だ。スノーグローブに使われている雪は、メーカーの企業秘密らしく、材質がわからない。少量ならスノーグローブキットに付いてくるが、大量に売っているところがない。ラメもよく使われるが、それではボクのスノーグローブのコンセプトに合わない。クラフト関係のサイトで調べたら、卵の殻を使うことを思いついた。卵の殻を洗浄して適切なサイズに砕く方法を見つけるまでは、ある程度の試行錯誤を要したが、いい雪ができた。
工具:

  • 3mmのドリルビット
  • 卵の殻を砕くための乳鉢と乳棒
  • 卵の殻を洗浄するための密閉容器
  • 湯を沸かすためのコンロと鍋
  • グローブを逆さにして支持する台になるボウルなど

材料:

  • 好きなフィギュアやモデル
  • フィギュアが入る大きさの透明な球形の照明用カバー(アクリル製が望ましい)
  • #15または使用するグローブの口にピッタリのゴム栓
  • ゴム栓にドリル穴の印を付けるための修正液
  • 耐食性の3mm径のピン
  • 卵の殻約20個分
  • 漂白剤約1L
  • 卵の殻を洗う水道水
  • グローブに入れるための沸騰させた水約4L
  • グローブに入れるためのグリセリン約2L

Step 1:雪を作る
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細かく砕く前に、卵の殻の内側についている膜を剥がそう。漂白剤に一晩付けておくと取れる。これをよく乾かしてから、乳鉢と乳棒で荒く砕き、密閉容器に入れる。殻が被るぐらいの水を入れて、容器に蓋をしてシェイクする。最初は水が白く濁るはずだ。シェイクしても水が濁らなくなるまで、水を交換しながら繰り返す。こうすることで、殻に付着しているタンパク質を取り除くことができる。最後に水を切ったら、乾燥させる。熱を加えると乾燥を早めることができるが、くれぐれも焦がさないように。


Step 2:フィギュアを準備する
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使用するモデルやフィギュアに可動部分がある場合は、接着剤などで固定しておこう。ボクは二液性エポキシでトニーの腕とマシンガンと頭を迫力のあるポーズで固定した。
フィギュアはゴム栓に固定するわけだが、ブチルゴムには接着剤が使えない。そこで、トニーの足の裏に、深さ2.5cmほどの穴を開けて、机の上に転がっていた古いハンダゴテのチップを突き刺した。しかし、鉄製のピンはうまくなかった。どうか、ボクが言うとおりにやってほしい。ボクが “した” とおりじゃなくてね。鉄のピンは、やがて水のなかで腐食して折れてしまうか、水に錆の色が出てきてしまう。真鍮かアルミかプラスティックがいいだろう。フィギュアから出るピンの長さは、ゴム栓の高さより短くすること。ゴム栓を突き抜けてしまってはいけない。


Step 3: フィギュアを立てる
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ゴム栓の狭くなっているほうを上にして置き、フィギュアの位置を決めてピンの場所に修正液で印を付ける。ゴム栓が栓であると当時にフィギュアの台にもなる。ピン先を押し当てて少し穴を開けておくと修正液が付きやすくなる。
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印を付けたところにドリルで穴を開ける。穴の深さがわかるように、ドリルビットの適当な場所にテープで印をしておくとよい。穴を貫通させてしまうと、そこから水が漏るので具合が悪い。穴の径はピンと同じかやや大きめがよい。ブチルゴムにあけた穴は、ドリルビットを抜くと小さくなってしまうが、穴が癒着して元通りになることはないから大丈夫。
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ピンに少量のエポキシを塗り、ゴム栓の穴に通してフィギュアを立てる。


Step 4:グリセリンと雪を入れる
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作業台の上に支え用のボウルを置き、その上に、口を上にしてグローブを置く。卵の殻で作った雪を1/3カップほど入れて、グリセリンを2L流し込む。


Step 5:湯を沸かす
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グローブがいっぱいになるより多めの湯を鍋に入れて沸かす。沸騰させる意味は次の2つ。1) 水中の空気を追い出し、気泡をできにくくする。2) 冷めると体積が縮んでゴム栓がしっかりと締まる。そのため、室温近くまで冷める前にグローブに入れる必要がある。


Step 6: 水を入れる
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水は10分以上沸かし、手を入れても大丈夫な程度のぬるま湯になるまで待つ。雪とグリセリンを入れたグローブを流しの中に置き、ぬるま湯を流し込む。ほぼいっぱいになったら、スプーンなどを使ってよくかき混ぜ、グローブの内部にできた気泡を追い出す。さらに、口から溢れ出るまでぬるま湯を足す。


Step 7: 栓をする
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グローブにフィギュアを固定したゴム栓をはめ込む。このとき、フィギュアに気泡ができたら、水の中で動かすなどして気泡を取る。ゴム栓はできるだけ力を入れて強く押し込むこと。このとき、中の水が口と栓の間から吹き出すぐらいでないといけない。また、くれぐれも気泡ができないように。そのままグローブを一晩放置して中の水を室温にまで冷ます。水が冷めると体積が縮んで、ゴム栓は内側から引っ張られる状態になる。こうなったら、もう栓を外そうとしても腕力だけでは無理だ。室温では、どんなに栓を取りたいと思ってもダメだろう。


注意と提案
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作ってから数日後に問題が起きたとき、または気泡ができてしまったときは、グローブごと湯を張ったバケツに入れて中の水を温めてやれば、ゴム栓は問題なく外せる。問題箇所を修理して、また同じように中の水を温めた状態で栓をすればよい。
中の水が冷めるときにグローブの口と栓との間に気泡が発生する場合も心配無用。グローブ全体が入るぐらいの大きな鍋にぬるま湯を沸かし、グローブを入れて、グローブの中の水がぬるま湯と同じ温度になるように温める。水中でゆっくりとゴム栓を緩める。グローブの口が水から外にでないように注意しながら、静かに気泡を追い出して、水の中で栓をしっかりと力いっぱい押し込む。このとき、グローブの中のグリセリンが鍋の水のなかに逃げてしまわないように、静かに作業すること。そのまま鍋の水に入れた状態で一晩放置し、冷ます。
これより小さいグローブもある。小さいグローブは口の径も小さくなる。直径20センチでは大きすぎると思ったら、小さいものを探してみよう。
このグローブの中に小さい100ドル札も入れたいと思っているのだが、水に入れても大丈夫な100ドル札を作る方法が思いつかない。いいアイデアがあったら教えてほしい。
訳者から:“say-hello-to-my-little-friend” は、アル・パチーノ分するトニーが屋敷に攻め入ってきたギャングの手下どもにロケット砲をお見舞いするときの有名な台詞。「そんなに遊んでほしーか、てめーら。なら、オレのダチに挨拶しな!」 ズドーン! というシーン。
– Sean Michael Ragan
原文