2015.12.28
ESP32:IoTボード ESP8266のお兄さん
ESP8266チップと、それをベースとするボードが、今年、ホットな製品として登場した。それは一夜にして、ひっそりと、IoTをリードするプラットフォームになってしまった。この大成功により、コミュニティも即座に立ち上がった。Espressif Systemsは、それと同じことを来年もESP32チップで起こそうとしているのだ。
1カ月ほど前、ESP8266のメーカーが次の製品の発表を開始した。しかし、開発者向けの手紙が来ただけで、そのチップに関するそれ以上の情報は入ってこなかった。
ESP32 will be beta testing soon! pic.twitter.com/4hDtcy3wja
— John Lee (@EspressifSystem) 2015, 11月 5
ところが最近になって、いくつかの資料を発表した。それは、ESP32モジュールに関するもので、回路図やプリント基板のレイアウトが含まれている。そして、ボードがベータテスターの手に渡るようになり、この新しいモジュールのピン配列を初めて見ることができた。
A new pinout @EspressifSystem #esp32
https://t.co/LbUmcngRkx
@ESP8266 @ESP8266COM pic.twitter.com/SugQFatqCh
— pighixxx (@pighixxx) 2015, 12月 7
ベータテスターの手に現物が渡ったところで、私たちは、Espressif SystemsのCEO、Teo Swee Annに、ESP8266の成功と新型ボード、ESP32について詳しい話を聞いた。
ESP8266チップは大成功を収めましたね。短い時間で、多くのMakerたちがその周りにコミュニティーを作りました。これほどの成功を予測していましたか? または、意外でしたか?
もちろん、ビックリしました。しかし、心の奥底では、みんながこんなことが起きるのではないかと期待していました。このことについて社内でよく話していました。ここへ至るまでの比較的長い期間です。当初、必要なものすべてが揃ってはいませんでしたが、私たちはやりました。それを、ほんの短い時間で立ち上がったコミュニティが助けてくれたことをうれしく思っています。このプロジェクトを支援してくれた多くの才能ある人々に感謝しています。
コミュニティは、ESP8266の周囲に多くのツールやツールチェーンを作りました。新しいESP32の開発を始める前に、彼らの意見を聞きましたか?
ESP8266コミュニティは、たくさんの電子メールを私たちに送ってきてくれます。そうした要望は、なるべく採り入れていきたいと考えています。ツールやツールチェーンに関しては、業界のお客さんよりもコミュニティのほうが知識が深く堪能であることがわかりました。
新しいチップでは、WiFiに加えてBluetooth(ClassicとBLE)が搭載されますね。これらは同じ電波を使うのか、または独立したアーキテクチャになるのでしょうか? つまり、WiFiとBluetoothの両方を同時に使えるかということです。電源はどうでしょう。BLEとBluetooth Classicを分離して電源の節約をするといったことは可能でしょうか?
新しいチップでは、BluetoothとWiFiがひとつの電波を共有します。私たちは、BTとWiFiは共存できると考えています。これが今の業界のトレンドなのですが、この流れに強く抵抗する事例も見てきています。Bluetooth Classicは切ることができます。WiFi P2Pがデータストリーミングにおいてはその代替として自然な存在ですし、BLEはスマートフォンとの通信において非常に便利な機能です。
宣伝では、ESP32チップにはダブルプロセッサーが搭載されていると謳われていますが、アプリケーションのためには独立したプロセッサーでもよかったのではないでしょうか。片方はWiFiを担当するとか。両方のプロセッサーを別々にスリープモードにできますか? また片方だけを起こすことができますか? たとえば、WiFiイベントが発生したときにアプリケーションを起こす、または、アプリケーションのタイマーまたはイベントでWiFiを扱うプロセッサーを起こすとか。
私たちはいろいろなモデルを試しています。基本的に、片方のコアの電力を落とすことは可能です。CPUへの割り込みなどもできます。
発表では、魅力的な低電力機能について話していましたね。深いスリープ状態でのADCや演算などです。その仕組みをもう少し詳しく教えてもらえませんか?
私たちが行っているのは、単純にきめ細かい電源管理です。ZigbeeやBLEのチップの多くには、そうした機能があります。それをこのWiFi-BT/BLEチップに導入したのです。ADCやタッチなどの他の周辺機器の場合は、非常に低いデューティーサイクルで定期的に目覚めることで、消費電力を抑えています。
ESP32には、ESP8266に比べてかなり豊富な周辺機器へのインターフェイスがありますね。しかし、USBがありません。なぜUSBを外したのですか? 技術的な問題ですか、それとも戦略的な理由?
私たちは、これからのPCの世界にはUSBは必要ないと考えています。無線で接続できればいいんです。USBは大きな電力を使う規格です。シリコンに実装するには多額のコストもかかります。今後10年で、ケーブルを使った接続方式はどんどん少なくなっていきます。無線接続やフラッシュストレージに置き換わっていくでしょう。
周辺機器のインターフェイスに静電容量式タッチがありますが、これが開発者に対して、APIレベルではどのように現れ、開発者はどのように利用できるのかを教えてください。
基本的に、現在それはAPIとして現れます。静電容量式タッチインターフェイスのイベントは、CPUへの割り込みを生成します。
ESP32にはAESとSSLをハードでアクセラレートしていますね。紛れもなく、IoTでの端末間の暗号化を進めるものだと思いますが、そこでこのチップはどのような役割を果たすとお考えですか?
セキュリティーを透明化して、使いやすくすることを目指しています。たとえば、SSLのように。ハードによるアクセラレーションはセキュリティーを強化しますが、正しく使わなければ、セキュリティーにはつながりません。私たちは、現在のセキュリティーの実装例をたくさん見てきました。
ESP32のセキュリティー強化のための報奨金プログラムを実施すると言っていましたね。その後どうなったのか教えてください。ESP8266でも行いますか?
セキュリティー報奨金プログラムはESP32だけのものです。これは、我々が開発した暗号化機能、とくにフラッシュ暗号化と数々の論理的機能のテストをコミュニティに手伝ってもらおうというものでした。そして、ハードウェアレベルでものすごいことをやってのける人々がいることを知りました。そうした人たちが、私たちのチームに、現在何が可能なのかを教えてくれることを望んでいます。
多くの人にとって、ArduinoがESP8266に対応したことは革新的でした。そのプラットフォームがLuaツールチェーンに窮屈さを感じていた多くの人々に開放されました。ESP32はArduinoツールチェーンに門を開かないのでしょうか?
いいえ。今のところArduinoには対応しません。しかし、すぐに実現するでしょう。LUAについても同じことが言えます。
ESP32がESP8266に置き換わることはありますか? または、それらが異なる市場で、異なる使われ方で存在していくのでしょうか?
ESP32とESP8266は、市場ではたしかに重なる部分があります。ESP8266は周辺機器があまり重要でないところで使われていますが、一部ではオーバークロックしたESP8266とタッチスクリーンでびっくりするようなことをしている人もいます。ESP32はESP8266の上位機種ですが、価格もやや高くなっています。ESP32はずっと優れたコンピューターパワーとスループットを誇ります。結果として、コミュニティではESP32のほうがより愛されると思っています。
ESP32用のベータプログラムがありますね。200ユニットのボードが提供されています。このプログラムに参加できる開発者は、どのように選ばれているのでしょうか? どんなフィードバックを期待していますか?
まずはパワーユーザーを選びました。選択には苦労しました。現在はこの最初の200名は超えられるよう、より多くの工学的な基盤を築こうとしています。
一般向けの発売はいつごろになりますか? 価格はどれくらいになるでしょう?
来年の初めを予定しています。今はまだ価格は言えません。流通チャンネルによって大きく変動するからです。
ESP8266は非常に安価だ。そして、非常に使いやすいし、当然、とてもとっつきやすい。そこが革新的だった。ベータテストに選ばれた200人が、これを使ってどんなものを作るのか、楽しみだ。もし、みなさんのなかに選ばれた人がいたなら、ESP32で何を作るのか、ぜひ教えてほしい。
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