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2017.08.22

Maker Faire Tokyo 2017レポート:提灯・盆踊り・畳・書道・鰹節~日本文化の新たな担い手たち

Text by Toshinao Ruike

広く今日の日本で伝統文化に関わる産業はどの分野も多かれ少なかれ衰退している。現代的な暮らしの中で人々の関心が薄くなって需要が減少したり、大量生産品に取って代わられたり、後継者が育たないといった問題があるためだ。厳しい状況にはあるが、今後も日本の文化は時代に合わせて形を変えて残っていくだろう。Maker Faire Tokyo 2017でも日本文化に関連した出展がいくつかあったので、Makerたちが提案する2017年の日本のスタイルを今回は取り上げたいと思う。

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スタイリッシュな鰹節削り器BUSHIは電動で鰹節を削り、お湯を沸かしてだしを取ることができる(大体上の鍋に必要な量を削るためには30分ほどかかる。)鰹節を削る文化を普及させたいという気持ちが伝わってくる丁寧な説明のパネルと共に展示されていたが、削り器のフォルムがとても美しい。

デザインを大学院で研究している野本かもめさんが台所に置いてもらうことを念頭にデザインしたそうで、これが例えばコーヒーメーカーやジューサーなどと一緒に並んでいるところを想像しても違和感がないし、台所に置きたくなる存在感がある。南欧のちょっと気が利いたいい家の台所に生ハムのスライサーが置いてあるような感じで、日本でも家庭で削りたての鰹節を使って食事を楽しむ贅沢があってもいい。

悪いことではないが、外国の食材を気取って使ったり、多様化してどちらかというと広く浅くなりがちな現代の食生活で、鰹節のように基本的な日本の食材に対してこだわりを持つ姿勢はとても好ましいことのように思えた。

2か所のセンサーで提灯の明かりを読み取って音のオンとオフを行うだけの簡単な仕組みだが、提灯の蛇腹の部分にテープを貼ってループを生成できる点が面白い。センサーの数を増やしてシーケンサーのピアノロール編集画面のように見立てて使ったり、ターンテーブルの速度を代えたりスクラッチをしたり、色々な応用が考えられそうだ。

山口自動機械によるロボットアームでの書道。元々ロボットの剣道大会のために制作したロボットアームを人間が動かして教えた動きを反復しているので、教えた文字以外はまだ書けない。かなり限定されるとは思うが、掲示など決まった字を毛筆で書く場面には重宝するかもしれない。

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こちらの畳で作ったハート型のウクレレは畳のPRのために何でもかんでも畳を使って楽器を作っている日本畳楽器製造による作品。

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なぜそういう発想に行きついたのかわからないが、単にウクレレになっているだけでなく微妙に細部が凝っていて、ハートを付けたりレースを付けたりと一応かわいい風を装っている。しかし畳は弦楽器のボディに使っても共鳴しづらく、音楽的にもビジュアル的にも誰が一体使いたいのかわからない。そんな一品だが、日本畳楽器製造自体がバンドとして活動していて、彼ら自身のステージで使われている。文字通りの自作自演だ。

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ボーカロイドを歌わせる畳の初音ミクギター。

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さらには弦楽器だけでなく、畳を使うためだけに作ったと思しき小さなラッパを箱状の畳に埋め込んだ楽器など、時として畳が楽器としての機能をむしろ制約し、邪魔しているだけではないかと思われるものまであった。ボスッ、ボスッ、と柔道で受け身を取った時のような鈍い音がする畳のカホンやブラジリアン・パーカッションのパンディロなどが他にもあったが、単に畳のPRが目的だったら、伝統を高級感を結びつけるような製品開発をしたり、楽器ではなく普及方法は他にもあっただろう。

しかし職人の西脇さんは伝統技術をベースにしながらも、本人が楽しいからだと思うが、畳を使う必然性がない音楽方面に突き進んでしまった。職人が余技で変わったものを作ることはよくあることだが、京都で創業して140年余りというお店のHP上にはこれまで作られた尋常ではない数の創作畳による楽器などが紹介されていて、今回出展されたものはその一部であったことが伺える。

こういった活動が畳の需要の減少に歯止めをかける決定打となるとまでは思えないが、それでも失敗を恐れず自由に挑戦しているその姿勢はある意味伝統においてとても健全ではないだろうか。伝統を保持する職人の世界でも様々な考え方はあると思うが、通常の展示イベントとは違った試みで技術力の高さをアピールする場所としてもMaker Faireは活用されてもよいかもしれない。

夏らしくこのMaker Faireの時期にぴったりだった和田永率いるElectronicos Fantasticosによるミニ電磁盆踊り。扇風機、携帯用カセットテーププレーヤー、ブラウン管テレビ、送風機など家電を中心にリサイクルされた電子楽器によって盆踊りの音頭が奏でられていた。現代風に電子音を使っているだけでなく、来場者や他の音楽系の出展者などが輪に入って参加していて、まるで村落の共同体の結束を高める催しとしての盆踊りのような雰囲気を醸し出していた。

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扇風琴は扇風機の中の羽根に遮られた光をソーラー電池で受け取ることで電気信号に変換して音を奏でる楽器。この日はステージで4人の扇風琴によるバンド形式の演奏が行われていた。

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これは携帯用カセットテーププレーヤーを分解してドリルに取り付けた楽器。ドリルの回転でテープの再生がコントロールされる。こういった個々の家電などからリサイクルされた楽器も面白いが、これらを皆が持って輪になって踊りながら演奏することで、独特の音空間が醸し出されていた。

一度は世間に広まって家電が捨てられた後に手を加えられ、楽器として別の価値を与えられる。今回紹介した他の出展もまた同様に衰退して忘れられ捨てられてしまう前に日本文化の中に新しい価値を与えようとして生まれた作品だと思う。それらが今後評価されて新しい日本文化のスタンダードとして定着するわけでは必ずしもないと思うが、これからも日本らしさがどこかに感じられるような試みがメイカーたちから出てくることを期待したい。