これから一週間DIYスペース特集をお届けしよう。つい星空を見上げたくなって、工房に駆け込みたくなるようなプロジェクト、チュートリアル、アイデアなどをお送りする。ロケット、気象観測気球、人工衛星の作り方や、天体写真の撮り方、さらに、自分だけの宇宙服や宇宙食アイスクリームの作り方もある。NASAの契約業者でありMAKEの外部筆者でもあるMatt Reyesをゲスト編集者に迎えて、どーんと打ち上げよう。
まずはウォーミングアップとして、『DIY Satellite Platforms』、『 DIY Instruments for Amateur Space,』、『Surviving Orbit the DIY Way』、そして現在執筆中の『DIY Data Communications for Amateur Spacecraft』の著者、Sandy Antunesに質問をぶつけてみよう。「どうしてDIYスペースが重要なのか?」 この記事とDIYスペース特集を読めば、今こそ市民宇宙探検の時代だということがわかるはずだ。それによってみんなが、この銀河を、そして未知の宇宙を探検したい気持ちになってくれたらうれしい。宇宙に関する発見のある人、プロジェクトを行っている人がいたら、ぜひ、editor@makezine.comまで教えてほしい。
–Stett Holbrook(MAKEシニアエディター)
DIYスペースには、既知のものと未知のものとが混在している。素晴らしいアイデアを要求されるが、さらにその先を行く。そしてそれをもっとも過酷な環境に投げ出し、使えるかどうかを試す。この3年間で、私たちは、アマチュアによる宇宙研究が可能かどうかを問う段階から、何をするか、なぜするかという基本的な問題を考える段階に移行した。私たちは今、技術が揃い、情報が自由に交換される時代にいる。
DIYスペースの本当に見事な部分は、宇宙にあるのではない。今みなさんがこれを読まれているこの時も、誰か他の人が物事を推し進め、より優れたものを作り、難しいものを簡単にしてくれているところにある。
DIY文化は、みんなで分かち合い、共同し、ケンカし、不可能を可能にしていく素晴らしきごちゃまぜの文化だ。DIY世界に入ってきた新人をみんなで助け、互いに反復し、互いに援助し合い押し上げていく。これが同時に行われる。
DIYとはアイデアだけのものではないのだが、ユニークなアイデアが宝であることも事実だ。そのため、DIY愛好家の間には、プロジェクトの一番乗りを宣言して自己PRをしようという傾向がある。新しいステップは、みんなを前進させてくれる。そのためのささやかな利己主義は、DIYカルチャーにとってはよい動機となるだろう。気をつけるべきは、自分の新しいアイデアは、共有文化の中で築かれたものであると自覚して、そのバランスを取ることだ。一匹狼だと思っても、他の人の努力に支えられているのだ。やってみよう。思い描いたアイデアで一番乗りを勝ち取ることができるはずだ。
もちろん、新しかろうが、そうでなかろうが、ただ自分だけのプロジェクトを楽しむだけでもいい。自分で新しいと思えば、それは新しいのだ。ISS NanoRacks開発プロジェクトは、33基の新しいCubeSatを、わずか数週間で打ち上げた。そのすべてが、人類が始めて思いついたものであるとは私は思わない。しかし同時に、DIY愛好家や大学やそれを作った小さなグループにとっては、すべてが新しいものであったはずだと私は思っている。
DIY愛好家が傍観者と違う点は、アイデアの段階からさらに進めて、実際に作り、その狂ったような手法を試すところにある。宇宙では、Chris Scolese(NASA / GSFC Center ディレクター)の「統合とテストが成功への道に欠かせない」という言葉を理解することが重要だ。これは、DIYスペースが成熟するための鍵であり、同時に失われたパーツでもある。統合とは、それぞれ個別に機能するものを合わせて、連動してうまく動くようにすることだ。テストは、DIYのいちばん楽しいところであり、いちばん退屈なところでもある。楽しいのは、自分で作った新しいものを壊れるまで動かすといった部分だが、退屈なのは何度も繰り返さなければならないところだ。この2つを受け入れることで、宇宙プロジェクトの成功の道がひらける。
DIYスペースは、何も型破りな発想がなければ参加できないというわけではない。既存の技術をうまく組み合わせる手もある。ISSAbove は、普通のRaspberry Piと、ウェブから拾ったデータで軌道予測を行う既存のソフトウェアを使って、人工衛星が家の上空を通過するときに光る箱を作るというクールなDIYプロジェクトだ。地上で学んだ星座や、さまざまなロボットやヘリコプターの技術を人工衛星に応用しようとしている人たちもいる。もっと単純に、人工衛星とのコミュニケーションや操作を簡単にする方法を開発している人たちもいる。学際的なアイデアを活かしたり、それまで誰も思いつかなかった方法で既存のものを組み合わせるとき、DIYは大きな力を発揮する。
こう話すと、宇宙が平凡な場所のように思われるかも知れないが、大丈夫、宇宙はまだまだ遠いターゲットだ。宇宙と海と人間の体は過酷な環境のビッグ3だ。どれも圧力の問題があり、物質の挙動がおかしくなり、アクセスが非常に難しく、ひとたび事が起きたときに、間違いを修正することができない。技術はあるが、宇宙は一発勝負なので、よほど慎重にやるよう心がける必要がある。打ち上げたあとはもう手が出せない。次のチャンスはないのだ。
DIYスペースが非常に活発な分野がたくさんある。DIY人工衛星を作って宇宙に打ち上げるというプロジェクトはホットでマスコミも飛びつく。それは技術を実証するためのものだけではない。ピコ衛星やナノ衛星を使って科学的な問題を解決しようとする人たちがいる。電離層のデータを集めたり、宇宙デブリの除去を行ったり、小惑星を探知したりというものもある。LunarCubesムーブメントは、ナノ衛星を地球の低軌道から月や小惑星や惑星へ飛ばすための推進装置に取り組んでいる。PocketQubesやSpriteは、実際に宇宙を飛行し、100パーセントの仕事をこなす微少な人工衛星の打ち上げが可能であることを実証した。
DIYスペースは、宇宙だけのものではない。みんなの努力が積み重なり、安定的な(多くはオープンソースで)インフラを構築している。ハードウェア、無線技術、地上局も地味だが確実に成長している。スペース・アウェアネス – 宇宙の音を聞いたり、宇宙のデータを見たり、地上の我々と地球の外の物とを意味のある形でつないだりといったプロジェクトが今、熱くなっている。DIY愛好家たちは、既存の宇宙関係のデータを上手に引き出している。DIYカルチャーが大きくなるにつれ、STEM教育にアートを加えたSTEAM教育への取り組みが進み、より多くの人たちが私たちの活動に参加するようになるだろう。
まとめるならば、DIYは確立されたものと新しいもの、初めてのものと長く続いているもの、技術と科学とアートと、あらゆるものがそこに含まれているということだ。すべては人々によって推進され、宇宙に飛び出す。今こそ地球の先を見に行くいい時期だ。いっしょに行こうと、みんなを誘っている。
– Sandy Antunes
[原文]