Science

2013.11.08

女性とサイエンス

Text by kanai

Maker Faire Ribbons

ニューヨーク在住のアーティスト、Kim Hollemanは、今年のWorld Maker Faire New YorkでTrailer Parkと題する、トレーラーの中に公園があるという作品を展示して、エディターズチョイス賞と教育賞のリボンを6つ受賞した。

女性を科学の分野に進出させることを目的としたレポート、取り組み、コンペ、プログラム、あるいは、そもそもなぜ女性科学者が少ないのか、に関する文章を、私は毎日のように目にしている気がする。

数週間前の10月3日、The Mary SueIo9などの文化技術系ブログに、こんな記事が載った。「あらゆる世代のジェーン・フォスター(映画『マイティ・ソー』にて、ナタリー・ポートマンが映画で演じた女性科学者)に刺激を与えるために、ナタリー・ポートマンとマーベルコミックは手を組みました。14歳以上の女の子を、科学、技術、工学、数学の分野(STEM)の第一線で活躍する女性とともに学び活動するプログラム(コンテスト)Ultimate Mentor Adventureを行います」

この発表は、Natalie Angierが2013年9月2日のニューヨークタイムズ紙に書いた「Mystery of the Missing Women in Science」(科学から女性が消えたミステリー)という記事の余韻が残っている間に行われた。この記事では、学校の数学と理科では男子も女子も成績は変わらないのに、科学の道に進む女子が少ない理由がわからないと書かれている。

具体的にはこうある。

ブリガム・ヤング大学のJoseph Priceと彼の同僚は、今年、高額な賞金のかかった科学コンテストでは、会を重ねるごとに男女差がなくなっていると報告している。単発のイベントでは女子よりも男子が強いが、何回も再挑戦するうちに、男子は失敗が多くなり、そのうち女子が追いつき、ついには追い越してしまうという。──女子は教室でも男子に勝っている。全国的に、高校の数学と理科の成績は、4点満点で女子が2.76、男子が2.56だった。

しかし、彼がこの謎の答を出そうとしていたとき、彼の同僚で心理学の博士論文に取り組んでいるDerriso氏は、まだ困惑の状態にあった。「男子も女子も同じように数学と理科が好きで、同じように自分たちの力に自信があるなら、どうして、将来の目標にこれだけ差が出るのだろうか。その答はわからない」

私ならわかる。少なくとも、答のひとつは知っている。

絵を見るぐらい単純なことだ。視覚的に考える人ならわかるはず。答はデータの中にはないからだ。試験でわかるものでもない。答は、子どもたちが毎日浸るように見ている映像の中にある。小さな女の子、Rileyちゃんが女の子用のピンクのオモチャを辛辣に酷評するYouTube動画を見てもわかる。子どもたちは目から物を学んでいるのだ。女の子が見るものを限定してしまえば、女子と男子とで理科の成績に差がないにも関わらず、ごく自然の成り行きとして、科学者への道を選ぶ女の子は少なくなる。

普段から視覚的な情報を与えられているグループなら問題はないが、そうしたグループに属さず、お手本を見たことがない子どもたちにすれば、科学の分野は自分とは関係のない世界で、「お前の来るところじゃない」と言われているように感じてしまうだろう。

意図的かそうでないか、意識的か無意識的かに関わらず、目標にできるモデルが目の前に示されていなければ、高い能力と自信に溢れる大勢の女の子たちに、その能力を存分に発揮できる科学、技術、工学、数学の分野で成功したいと思わせることは難しい。

ここにいい例がある。有名オモチャメーカーのレゴ社は、今年の9月1日に、世界で初めて、女性科学者のキャラクターを登場させた。女の子たちは初めて、かっこいい女性科学者を自分の分身として遊べるようになるのだ。うんと幼いうちから、それこそ「積み木」で遊んでいるうちから、科学者になろうという夢を持たせることができる。

だが、MAKEとMaker Faireもその役割を果たしている。これまで書いてきたことのすべては、女性と科学に関する問題の制度的な側面だ。つまり、「大人たち」のどこが悪いのかという話であって、「子どもたち」のどこが悪いのかということではない。

power racing series karen corbeilSector67ハッカースペースのKaren Corbeillと、次の世代の若き女性Maker たち。

科学に触れて、自分自身も周囲の人たちも良い気分にさせてくれる女の子たちの姿を見たければ、Maker Faireに来るのがいちばんだ。大勢のSTEM分野の女性に会える。これから成長する人たちだ。Maker Faireを支える関係者たちの尽力で、そこに参加する女性の数が増えている。私たちの仕事は、そうした女の子たちを援助して、その道を進んでもらうようにすることだと私は考える。なぜなら、彼女たちが世界を変えるからだ。

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今年、 New York Hall of Scienceで開かれたWorld Maker Faire New Yorkに出展した私は、小さな子どもからティーンエイジャーまでの、大勢の若い女の子たちがMaker Faireで存在を示していたことに大きな喜びを感じている。ファッション系、おてんば系など、あらゆる「宗派」の正統派女の子たちに、ミニロボティクス・ガールやスーパーヒーローの手作りコスチュームとマントを着た女の子もいた。彼女たちは、ほとんど全員が、自分でハンダ付けをして作ったLED Maker Faireバッジを付けていた。さまざまな年代の、いろいろな女の子たちがMaker Faireに参加してくれたことに、私は最高にうれしくなった。

そうした女の子たちが、Maker Faireでそれぞれの科学系の道を追求していた。素晴らしいのは、彼女たちが若いうちから、その力を発揮していることだ。MAKEには「Makerならみんな仲間」という、万人を受け入れる理念がある。そして、ここが重要なのだが、女の子たちは、そこをわかっているのだ。私がMAKEのすべてを好きな理由もそこにある。だから、年齢、民族、性別、国籍、宗教、社会的グループなどに関係なく、Makerたちが集まってくる。MAKEのブランド、色、デザインもすべて万人を受け入れるものになっている。

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私は確信している。Makerコミュニティに温かく迎え入れてもらったひとりのアーティストとして、この現象を証明することができる。私は、科学や工学を、自分のアート作品をよりよくするための手段に使っていることを宣伝してきた。その結果、私のプロジェクト、Trailer Park: A Mobile Public Parkは、今年、アート賞だけでなく、6つのMaker Faireリボンをもらうことができた。しかし、これらを受賞したことは大変な名誉であるけれど、なにより大切なのは、私が受賞するところを大勢の小さな女の子たちが見ていたということだ。

私がMAKEに認められたことが、彼女たちの大きな原動力になる。なぜなら、私もMakerに憧れた、普通の少女だったからだ。私のことを見て、自分でもMaker Faireにプロジェクトを出展したいと思うになった、あの子たちと同じだからだ。だから私は、私が出会ったすべての女の子に、同じことを繰り返し伝えている。私は彼女たちの目を見て、自分を指さして、こう言う。「Trailer Parkを作ったのは普通の女の子よ。あなたも、想像したことはなんでも作れるのよ」と。そして、世界最大の工作発表会の会場の、自分のプロジェクトの真ん中に立って最高に素晴らしいと感じるのは、彼女たちが私の言葉を信じてくれたことだ。

訳者から:YouTube動画のRileyちゃんは、どうして女の子はピンクのオモチャって決まってるのよ、と怒ってる。女の子はピンクのものを買って、男の子はスーパーヒーローを買う。女の子もスーパーヒーローは好きだけど、男の子はピンクのものは好きじゃない。これは女の子にだけ、男の子のオモチャを買わせないでピンクのものを買わせようとしてる。女の子はピンクだけ買って、男の子はいろんな色のが買える。どうしてなのよ、とね。きゃわいい。

– Kim Holleman

原文