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2024.04.28

「Maker Faire Kyoto 2024」会場レポート:盆栽IoTに空気圧フリップフロップ回路に自作アニマトロニクスにQRコード対応賽銭箱など、奇想天外な展示に溢れた京都 #MFKyoto2024

Text by Yusuke Aoyama

2019年の初開催から4度目(対面イベントとしては3度目)となる、京都でのメイカーフェアが今年もやってきた。西日本では最大規模のメイカーフェアとあって注目度は高く、初日から来場者が詰め掛け、開場時間には200名余りの行列ができていた。このレポートでは、初日の会場の模様と、目についた展示をお伝えする。

盆栽をIoTと3Dで進化させる「BonsaIoT」

BonsaIoT(ブースD-01-03)が展示したのは、一般的な観賞植物よりもシビアな水やりが必要な盆栽の育成を、IoTによって省力化し、初心者でも盆栽に取り組みやすくすることを目指した仕組み。気温や湿度をセンサーで取得し、鉢の中に残っている水分を重量から推計し、植物が必要とする水分を自動的に与えることができる。製作したのは九州大学の大学院生や学生が集まったチームで、メンバーのひとりの内海さんが、友人の祖父から盆栽を譲り受けたことがきっかけで、BonsaIoTのアイデアに繋がったそうだ。


中央が盆栽を3Dスキャンするためのステージで、黒いアームの先端にカメラがある。左端にあるのが盆栽IoT

また、新たなプロジェクトとして、盆栽をスキャンして3Dデータ化する「BonScience」にもスタートさせている。植物は、枝の形や葉の付き方などに、一定の法則性を持っているが、盆栽の美しさは自然の法則に、さらに人が手を加えることで生み出されている。BonScienceは、盆栽の3Dデータから形状のアルゴリズムを検出し、盆栽の美しさを定量的に評価し、どうやって手入れをすれば良いのかアドバイスする仕組みの構築を目指しているという。現在は、盆栽を3D化するために、自動的にカメラで360度スキャンして、さまざまな盆栽のデータを集めて、検証をしているところだそうだ。

MIDIデータで自動演奏するマイコン制御のソレノイド・ハンドベル

京都橘大学 杉浦研究室(ブースD-05-01)の樋口さんが制作したのは、MIDIデータを読み込んで27個のソレノイドをマイコンで制御するハンドベル自動演奏システム。読み込んだMIDIデータをもとに、Arduinoでソレノイドを、ESP32でカラーLEDを制御している。

多彩な音色で曲を奏でることができ、曲の連続再生やリピートなど再生機能も作り込まれており、ジュークボックスのように利用できる完成度の高さだ。樋口さんによれば、今後はハンドベルの鳴らし方に強弱をつけられるようにしたり、カスタネットなど他の楽器も搭載できるようにしたいとのこと。


動作部分の拡大。ハンドベルひとつひとつにソレノイドが付いている


動作デモ用のユニット。下側の箱に付いた黒いボタンを押すと、即座にソレノイドが動作してベルが鳴る

球状変形ロボの新色と表情豊かなアニマトロニクス

メイカーフェアの常連参加者のひとり、小林竜太(ブースF-01-02)さんは「Kariya Micro Maker Faire 2024」に出展したスイカ型ロボットのバリエーション「バスケットボール型ロボット」と、新作としてアニマトロニクスに取り組んだ、表情豊かに動く犬型ロボットを展示した。


スイカ型ロボットとバスケットボール型ロボット

バスケットボール型ロボは、球体から表面が4つに分割して足となり、歩いたり、跳ねたり、這いずるように動いたりと、器用に動き回ることができるのが特徴。球形のフルーツも、ボールも、さまざまな種類があるので、今後もいろんなパターンを増やしていきたいとのこと。


表情豊かなアニマトロニクス。口や耳だけでなく、眼球やまぶたまで動く。今回はランダムに動いているだけ

また、小林さんが今回、アニマトロニクスに取り組んだのは、Kariya Micro Maker Faire 2024での一幕がきっかけだとか。KMMF2024のパネルディスカッション「企業内メイカーな生き方:ワーク・メイクバランス」において小林さんが、今後、作りたいものという質問に対して「ディズニーみたいなロボ」と答えたため、さっそく製作に取りかかったそうだ。


アニマトロニクスの頭部を持つ小林さん。簡単に頭を外せるのもこだわりだとか

この犬型ロボット、首は3軸なので、上下左右に向くことができるほか、首を伸ばしたり、すくめたりといった動きも可能。今後は体も作り込んでいき、乗り物に乗って動き回れるようにしたいとのこと。

電子決済時代のQRコード対応賽銭箱は、スマホを直接投げ込む!?

とあるIT企業の社員によるグループ「荻窪三万円」(ブースE-02-04)では、QR決済に対応した賽銭箱「ニューサイセン」を展示していた。


賽銭箱にスマホを投げ込んだ瞬間

この賽銭箱は、QRコードを表示したスマートフォンを直接投げ込んで、お賽銭を納めるというもの。スマホを投げ込むと、内部の傾斜によってスマートフォンが所定の位置に納まるようになっている。さらにスマホの所定位置の両面側に2台のQRコードリーダーが設置されており、スマホがどちら向きでもQRコードを読むことができるようになっている。ちなみに、QRコード決済はPayPayにのみ対応しており、決済完了時には「ペイペイ」というおなじみのジングルが奏でられる。


内部の左側にスマホを滑らせる傾斜があり、その下端とフタの裏側にQRコードリーダーが取り付けられている

この賽銭箱は、メンバーが参加したハッカソンでの成果物で、メンバーのひとりの佐藤さんは、IT企業の社員であると同時に、実家が1400年続くお寺で、そこの僧侶でもある。佐藤さんによれば、普段は「大切に扱え」と言われるスマホを、お賽銭を納めるためにあえて投げさせるところが特に子どもたちにウケて、何度も挑戦する子どもが多いとのこと。

100台が同時に瞬くテクノ行灯で夜を彩る

京都精華大学 電子工作部(ブースD-01-05)では、101台のmicoro:bitを使い、無線通信によってLEDを同時に瞬かせるパフォーマンスを行う「テクノ行灯」を展示。


送信機に合わせて、一斉に瞬くテクノ行灯。電波状況によっては遅延が生じることも

PC上で点滅パターンを作成し、送信機となるマスター行灯にデータを転送し、そこから無線通信によって受信機となる100台のmicro:bitに接続し、マスターのシグナルに合わせて全体が瞬く。現在のところ、学内での実験的なパフォーマンスに留まっており、今後はイベントなどでパフォーマンスを行ってみたいとのこと。

電気とリレーじゃなくて空気と注射器で組んだロジック回路

あきまろ@久留米工業高等専門学校(ブースD-02-01)では、圧縮回路で作動する論理回路を2つ展示していた。1つは、AND、OR、NOTの回路をリレーではなく小型の注射器で構成し、1bitの足し算(0+0、1+0、0+1、1+1)を実行することができるというもの。


1bitの足し算が可能な論理回路。数字を表示するセグメントがじわりと動いて表示が変化する

もうひとつは、フリップフロップ回路で、現在の状態を記憶しておき、入力だけでなく記憶した前回の答えと合わせて出力が変化する回路。いずれも注射器とチューブとジョイントだけでできており、電気ではなく空気圧によって動作しているので、その動きが目に見えるのが特徴のひとつ。コンピュータの基礎的な回路が、どのように動作しているのか学ぶのにもちょうど良い。


フリップフロップ回路。空気圧が低いと、動作不良に陥る

Maker Faire Kyoto 2024は、4月28日(日)まで開催している。会場には、ここで紹介した展示以外にも、まだまだ多くの興味深く、アイデアに飛んだ展示に溢れている。都合の合う方は、ここでぜひ会場で、直接見て、聞いて、体験して欲しい。