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2024.05.02

「Maker Faire Kyoto 2024」会場レポート #2:京都に現れたPナソニックの魔改造モンスターやちびティラノ、そしてミニ四駆と一緒に走る子どもたち #MFKyoto2024

Text by Yusuke Aoyama

会期が2日間にわたるMaker Faire Kyoto 2024だが、2日目は好天にも恵まれて開場時には初日以上に長い行列ができ、その多くが子どもと一緒の家族連れだった。メイカーフェアでは近年、教育関係や学生の参加を支援したり、子ども向けのワークショップを増やすなど、若年層向けた取り組みに力を入れている。

レポート#2では、そうした子ども向けのワークショップの様子の他、最近のメイカーフェアの一大勢力となりつつある、魔改造モンスターとペンプロッターについてお伝えする。

Pナソニックによって改造された2体のモンスターが京都に現れた!

メイカーフェアに欠かせないもののひとつになりつつあるのが、『魔改造の夜』に登場したモンスターたち。京都の会場に現れたのは、総合家電メイカー「Pナソニック」のメンバーたちによって改造されたキックスケーターと、アヒルが乗ったトイレのオモチャだ。


左:おトイレモンスター「P:air cylinder」、右:P:air cylinderの開発ステップ

いずれも実際の収録に用いられたものであり、技術者たちの手で競技に勝つことを目的として改造され、元から変わり果てた姿は迫力に満ちている。会場ではそれぞれのモンスターの製作に参加したメンバーが立ち、困難なポイントや工夫した所、苦しかった点などを来場者に語っていた。


左:キックスケーターのモンスター「HEY☆コウノスケーター」、右:HEY☆コウノスケーター開発の系譜


HEY☆コウノスケーターの前輪部分と後輪部分のアップ

2日目にはプレゼンテーションステージにて「Pナソニック魔改造の夜までの道」と題して、製作に関するエピソードを語った。登壇したのはおトイレチームの吉良流星さんと、キックスケーターチームの丹羽英人さん。2人とも入社3年目の同期で、共にNHK学生ロボコンへの参加経験があるメイカーだ。

この回は、キックスケーターに25メートルの綱渡りをさせる、アヒルちゃんのおトイレをジャンプして1回転させた上で5メートル先に着地させるという、いずれも過去最高レベルで難易度が高い競技。テーマ発表に際して、丹羽さんは「ロープの上でキックスケーターなんて無理だと、絶望を感じた」そうだ。


左がおトイレチームの丹羽さん、右がキックスケーターチームの吉良さん

6週間という限られた期間のなかで、テーマを実現するためのアイデア出し、アイデアが実現可能なのか技術検証、選択した技術に基づいた組み立て、そしてすり合わせと作り込み、というプロセスを経て最終的に見事完成させた。

そうしたギリギリのなかであっても遊び心を忘れずトイレに手を加えようとしたところ、番組製作側から厳しいチェックが入ったため、「進撃のトイレ」や「アヒルナイト」といったアイデアがボツになったそうだ。最終的に、番組出演時の形でOKが出たが、吉良さんは「この1ヶ月半、本当に『トイレとは何か?』というのを考え続けた」と苦労を語った。


アヒルとトイレの過度な改造には、番組側からNGが出たという

ちなみに、番組の収録は、ちょうど「Maker Faire Tokyo 2023」の会期と重なっていたそうだ。このため、大阪から東京へと機材を輸送し、撮影会場に搬入。その翌日に、Maker Faire Tokyo 2023を見学してから、撮影に参加したとのこと。会場で他の回のモンスターたちの工夫を見ることができ、一石二鳥の東京遠征となったそうだ。

なお、プレゼンテーションで用いられた図版や写真などは、パナソニックの「魔改造の夜プロジェクト特設サイト」にてすべて見ることができる。

3種のペンプロッターがそろい踏みで、メイカーフェアの一大勢力に!?

ひたすらペンプロッターを作り続け、Maker Faire Tokyo 2014に出展して以来、常連参加者となっているいしかわきょーすけさん。弊誌への寄稿で「Maker Faireの会場でペンプロッタ作りを楽しむ方が一堂に会するようになることを夢見ています」と、ペンプロッターへの思いを述べていた。

そして今回、「Maker Faire Tokyo 2023」に続いてペンプロッターをメインテーマにした出展者は、いしかわさんを含めて3組が参加。横並びに並んだブースには、タイプの異なるペンプロッターが列をなした。それぞれに設計思想や力を入れるポイントが異なっており、ペンプロッター勢の勢いが垣間見れた。

そのいしかわきょーすけさん(ブース F-02-05)の新作は、自作の直道機構モジュールを使った、デルタロボット型ペンプロッターと双腕型ペンプロッターの新機種。


デルタロボット型のペンプロッター。右側が最新作

特に双腕型は、複数色対応や描画領域を拡大したものなど、さまざまなバリエーションを製作。基本となる直道機構をモジュール化したことで、設計の工数が減り、1台当たりの製作スピードがアップしたそうだ。


双腕型ペンプロッター。並んでいる5機種すべてが新作だ

いしかわさんの隣のブースの川村 聡さんは、高速ペンプロッターを製作。「Maker Faire Tokyo 2023」に出展したものを改良することで、描画速度をさらに工場。実際に目の前で見ていても動画を早回しにしているかと思えるほどで、例えば人気漫画の少女キャラクターを描くデモでは、1分足らずで書き終えた。


川村さんの高速ペンプロッター

間近で見ていると、余りの高速なアームの動きに、ギヤ鳴りか風切り音のような音が聞こえて、工業用の工作機械の動作を連想させる迫力だ。まさに目にも止まらぬ早業に、ブースを通りがかる来場者の多くが、思わず足を止めて見入っていた。

そして3番目のハギテックさん(ブース F-02-03)が製作したのは、ステンレスパイプと3Dプリンター製の多条ネジとブラシレスモーターで構成された大面積ペンプロッター。シンプルな構造ながら、ひとつのモジュールあたりの可動域(約25センチ)が広く、A4用紙のおよそ8割くらいの領域に描くことができる。


ハギテックさんの大面積ペンプロッター。シンプルな構造で、X軸とY軸が同一のモジュールで構成されている

モジュールは、X軸とY軸で共通かつ、シンプルな構造のため連結することが可能。会場では3つ連結したものを展示しており、可動域を最大で約500ミリまで広げることができる。プロッターはテーブルの上に置いてあるだけのため精度には難があるが、工夫次第でいろんな環境や対象物に適用できそうなアイデアだ。


モジュールを結合することで、描画面積を増やすことができる

段ボールとミニ四駆と電子回路など、作りたいものだらけのワークショップ

メイカーフェアでは毎回、さまざまなワークショップが行われているが、Maker Faire Kyoto 2024では、特にキッズ&エデュケーションゾーンに集中していたこともあって、多くの子どもたちがモノづくりに挑戦していた。

なかでも人気だったのが、ダンボールを使った工作を楽しむ「Hello ダンボ~ル!!」(ブース A-05-01)で、参加チケットは、開場から間もなく完売していた。


Hello ダンボ~ル!!のワークショップ会場は、親子連れで常に混雑していた

このワークショップで作ることができたのは、会場内をパレードするための楽団員のコスチュームや、シカになれるケモミミ、舞妓さんのかんざしなどを作る「けいはんな版のダンボールパレード!」、大きな白いティラノサウルス「うちのシロ」でおなじみのヒゲキタさんが開発した、ティラノサウルス型の帽子と動く尻尾で、なりきることができる「なりきりティラノ」など。


自分で作ったものをさっそく身につけて楽しむ子どもたち

このダンボールワークショップの主催は、make道場というグループで、昨年の東京や今年の京都の会場で目立っていた、ダンボール製の大きな赤い「Make:」ロゴを作った方々


会場内では、ちびティラノをあちこちで見かけた

また、会場の外では、ミニ四駆を屋外で走らせてレースを行う「ストリートミニ四駆しようぜ」(ブース A-07-01)というワークショップを実施していた。


太陽の下で出番を待つミニ四駆。ちなみにこの京都の最高気温は29度

会場の「けいはんなオープンイノベーションセンター」の建物の脇にある遊歩道を使い、100メートルのコースとしてレースを行うというもの。コースはアスファルト舗装だが、曲がりくねった坂道なので、そのままミニ四駆を走らせても明後日の方向へ向かってしまう。そこでホッケースティックのような道具を使って、上手く進路を調整して、ゴールへ導くという競技。


曲がりくねった上り坂のコースをミニ四駆と共に駆け抜ける参加者

ミニ四駆の速度が速すぎると、人間が追いつけないため、ギヤ比をトルク重視のものに変えたり、アルカリ電池ではなくマンガン電池を使うなど、ほどほどにスピードを抑えたり、直進性を高めるために紙の尻尾を付けたりといった工夫が見られた。見事100メートルを完走すれば、タイムを記録した認定証も発行される。当日は天気も良かったので、2日間でおよそ400組が体験したそうだ。


「Spresense」のオリジナルゲーム機を製作するワークショップ。講師の話を真剣に聞いている

その他にも、スポンサーゾーンで、ソニーセミコンダクタソリューションズのブースで「Spresense」を用いたオリジナルゲーム機の製作に小学生が挑んだり、マクニカのハンダ付け体験コーナーで、未就学児がエキスパートの指導のもとでハンダ付けに初挑戦する様子など、会場のそこかしこで見るだけでも体験するだけでもなく、実際にモノを作る姿を見ることができた。