Fabrication

2008.09.09

自作ペディキャブ物語 – これはDIY差別か?

Text by kanai

事のあらすじ:ボクはペディキャブ会社の設立を諦めなければならないかもしれない。なぜなら、ボクが自作したペディキャブを行政が認めたがらず、感情的になるし、会話を録音したら罪人扱いだ。自作のプロジェクトに関して官僚主義と戦うときは、このことをよく頭に入れておくといい。
5分バージョンのビデオ(最初の1分は退屈です):

完全版:
テキサス州オースティンでは、ペディキャブを運行する方法が2つある。既存の店から毎晩レンタルするか、自分のペディキャブ会社を立ち上げるかだ。
しかし自分の会社を始めたい場合は、2つの大きな障害がある。保険とペディキャブの入手だ。詳しいことは、とても役に立ったこのガイドを見てほしい。
金のなる木を持っていて、どんな金銭的問題にも対処できるなら別だけど、そうでなければ、大きな出費になるが、保険はしっかりとかけておく必要がある。しかしボクには、高性能(安くて、安全で、エコ)なペディキャブを作る自信があった。
その自信を胸に、ボクはペディキャブの製作に入った。ところがそこで、車両の検査が通らないというミスを冒してしまった。
3つめの設計で、3つめの検査に不合格となったとき、どうやらこれは技術的な問題、つまりリアの反射板の取り付け位置の問題ではないとのではと考えるようになった。ペディキャブの検査官は、ボクのペディキャブ製造のアイデアを気に入っていなかった。ボク自身のことも嫌っていた。どうしてもボクが設計した車両を走らせたくなかったのだ。
ボクがいちばん気になった論点はタイヤだった。市当局は、リムとスポークとタイヤの耐荷重評価を示すように言ってきた。ところが……

  • ペディキャブ専用のタイヤなんて存在しない。
  • ほとんどの製造業者は自転車のタイヤの耐荷重評価などは示していない。
  • 他のペディキャブ会社は、これまでに同様のデータを示すように指示されたことがない。
  • ボクの車輪はすべて同一のもので、20以上のペディキャブ会社で現在運行中の車両に使われているものと同じタイヤを使っている。

そんなことは関係ない。さらに、こうも言われた。これ以上騒ぎ立てれば、すべてのペディキャブ会社はタイヤの耐荷重評価を確認するまで運行を差し止めなければならなくなると。検査官は、他のペディキャブ会社に、この事態を引き起こした張本人(つまりボクだ)を公表するとまで言ってきた。まるでボクが異常者であるかのような目で見ながら、「なぜ市販のペディキャブを買わないのか?」と聞いてきた。
そうそう、もうひとつ重要なことがあった。事業許可証が届いてから25日になる。30日を超えると許可が失効して、最初からやり直しだ。
だから、4回目に訪れたときは、検査官のボスに対してボクは熱くなっていた。テキサス州の盗聴法に関して調べたうえで、信頼できる友人にデジタルカメラを持たせて会議に同席してもらった。テキサスでは自分が加わっている会話は他の参加者の同意をとらずに録音するのは合法的な行為だ。
残念ながら、当局の諸君はそれを知らなかったようだ。彼らは、会話が録画されていると気づくと(カメラは普通に見えるところに置いてあったのにね)、即座に会議を切り上げ、ボクの車両の検査は行われず、彼らのオフィスへの立ち入りも拒絶されてしまった。ボクの車両を自作するという主張は、警察沙汰にまで発展しそうな危機的状況になってしまった。
そんなわけで、今回の出来事には禍根が残った。事業用に自分で作った車両に乗るというアイデアにはぞくぞくするが、市当局は強行に反対する。これから先の作戦はいくつか考えている。みなさんも、いいアイデアがあったらぜひ教えてほしい。話に進展があったら、その都度お知らせします。車両の完全な設計図もオープンソースで公開の予定です。みなさん、サイクリングを楽しみましょう。でも、官僚主義者どもには気をつけて!
– Luke Iseman
訳者から:コメントを見ると、なかなか手厳しい意見が多い。あの車両はDIYっぽすぎて、お客さんは乗りたがらないだろうとか、役所が言っていることはもっともで、彼のほうが変につかかって話をこじれさせているとか、録音なんかしたら相手を怒らせるだけだとか。実際にペディキャブ事業を営んでいる人の意見もあったが、やっぱりあの車両は安全性に欠けるし、役所の言い分は正しいと言ってる。
たしかに、つっかかり屋さんだな。でも、元気があってよい。どんどん突っ張って、ぶつかればよろし。そして勉強しましょう。役所の人間は悪人じゃないってこともね。その上で、仲良くよりよいものを生み出す術を学んでほしいね。と、オトナの意見でありました。でも、あの車には乗りたくないな。
原文