Science

2009.09.11

世界初の菌類を使った生物ロボットの開発

Text by kanai

haeckel mycetozoa
Beyond the beyond経由、PhysorgのScientists design first robot using slime moldより。

ウエスト・オブ・イングランド大学の研究室では、世界で初めての菌類を使った生物ロボットを開発している。リーバーヒュームトラストからの助成金を受けて彼らが研究しているのは、変形体、つまり、イギリス国内の森や庭や湿った場所で普通に見られる粘菌変形菌モジホコリカビの増殖状態を使った、非結晶非シリコン系生物ロボットPlasmobotだ。リーバーヒュームトラストの助成の狙いは、完全に生物学的な(シリコン部品を使わない)非結晶大規模並列ロボットを最初に作ることにある。
… Adamatzky教授によれば、この力を制御できるようになれば、長期にわたって利益を得られる可能性があるという。「今はまだ初期段階です。変形体にどれほどの利用価値があるかを見極めているところですが、数年内には、たとえば少量の化学物質を目標に届けるとか、光で移動を助けるとか、機械の微少部品の組み立てに役立てるといった、粘菌の能力を引き出せるようになっていると思います。遠い将来においては、変形体を人体の内部で動かすことも可能になるでしょう。たとえば、特定の場所に薬を送り届けるといった具合です。また、変形体で作られた無数の微少コンピューターを我々の皮膚の上に棲息させて、機械的な思考作業を任せることで脳の負担を軽減させるとも可能になるかもしれません。非結晶コンピューティングの開発に繋がるものと見る研究者が多いようですが、今はあくまで、純粋に理論の段階なのです」

上の写真 – 変形菌に分類される生物を描写したエルンスト・ヘッケルの「自然の芸術的形態」(1904) の93枚目。
– Phillip Torrone
原文