Electronics

2015.04.16

プログラマブルムーブメント “CAL.430FR” 開発中

Text by Takumi Funada

cal430a

美しい時計はその内部機構(ムーブメント)も美しい。逆もまた真であることが多い。毛虫計算機が開発中のデジタルムーブメント“CAL.430FR”はすでに美しい時計の完成を予感させる。

毛虫計算機はテキサスインスツルメントのマイコン”MSP430FR”とシャープのメモリ液晶ディスプレイを組み合わせて、数ヶ月間連続動作する実用的な腕時計型デバイスのプロトタイプを作っているところだ。作者がスマートウオッチと呼ばないのはワイアレス通信機能が未実装だからで、そこにこだわらない人ならば、まさにスマートウオッチのムーブメントと見るだろう。

cal430b

画像を表示した状態でマイコンのクロックを止め低消費電力状態に移行すると、ボタン電池1個で約120日間動作する計算になるという。単純な「時計アプリ」を動かしたときにどのくらい電池が持ちそうか質問したところ、毎秒1回の画面書き換えをして100日程度、実際にアプリを動かして何日持つかは処理の内容しだいなので、正確な見積もりはまだこれから、とのこと。

現在のプロトタイプ(最初の写真)は、マイコン、加速度センサ、電池ホルダーなどが載るメイン基板を別のプリント基板がサンドイッチ式に挟み、外側の基板に液晶ディスプレイとストラップを取り付ける構造になっている。防水性はないが、これにはこれの機能美があって、自分も着けてみたいと感じた。もちろん、専用の側(ケース)をデザインし、3Dプリンター等で出力するのも楽しそうだ。

スマートウオッチはまだ黎明期にあって、キラーアプリや外形デザインの正解はわからない。それはつまり、どんなデザインにも可能性があって、すべての設計者にチャンスがあるということ。毛虫計算機ブログで連載中の開発記を見ていると、新しい領域で手探りしながらものを作る楽しさが伝わってくる。低消費電力マイコンを使った電子工作の事例としても参考になる。