2014.10.17
Edison搭載の肩乗りロボットFamiliar Ralph、鳩になって空を飛ぶPigeon Sim / Maker Faire Rome 2014
前回、Massimo Banziへのインタビュー記事でMaker Faire Rome会場内に彼のビジュアルが多数用いられている様子を取り上げたが、やはり会場の中心はArduinoの展示であり、イタリアはArduinoの本拠地であることを思わされる。そんな中、IntelはEdisonやGalileoといったArduinoと協力して開発した製品を中心としたデモンストレーションで、独自の突き抜けた存在感を放っていた。
会場にさりげなく佇みながらも異彩を放っていたのは日本のIntelの研究者Michael McCool氏のプロジェクトFamiliarのロボットRalphだ。Michael氏が談笑したり、ピザを食べたりしている間も、肩に乗って始終首を傾げたりギザギザした歯のついた口を開閉している(ビデオ)。
肩かけ鞄からケーブルが伸びてRalphに電源が供給されている(将来的にはスペースの制約の問題を解消してバッテリーも搭載したいようだが、これはこれでいい。) 「よく物語で海賊の肩にオウムが乗っていたりするから、ギークの肩にはロボットというのはどうだろうと思ったんだ」Edisonの機能を活かし、Webカメラが搭載され、Wifiでインターネットに接続されている。
「将来的にはWeb APIやマシン・ラーニングも活用して、音声認識で質問に答えたり、おしゃべりしたり、Webカメラで相手を認識してインターネット上からその人の情報を取ってくるといったソーシャルな機能を実装できればと思ってるんだよ。」とNode.jsのSandboxを開発したことでも知られるMichael氏は語っていた。
ウェアラブルデバイスとして開発されているようだが、Googleグラスのようにできるだけさりげなく着けるものではないし、またPepperのように人に親しみを与えようとするロボットでもない。ましてやカメラで認識した相手の情報を探してこられるとなると、かなり不敵な存在に思えてくるが、オープンソースで開発されているというから、将来は皆こういったロボットを肩に乗せてギークが町を闊歩する時代がやってくるかもしれない。このロボットにはそんな少々恐ろしげなストーリーまで想像させるようなインパクトがあり、またロボットに日常を浸食されるような可能性が感じられて、個人的には面白いと思える。
公開されている資料(PDFファイル)によると、Jeff de Boer氏による鎧兜をかぶった猫型スキンなどアーティストの協力を得ていくつかのスキンも準備中だという。
まだ改良中で、また「クラウドソーシングで各分野の人材を探して開発していきたい」とMichael氏は語る。今年の11月に開催されるMaker Faire Tokyoにも来る予定であるというから、ぜひ来場して実際に目にしてほしい。
打って変わって、こちらは鳩の視点でGoogle Earth上のロンドンの町を飛び回る平和な作品Pigeon Sim。Kinectで動きを捉え、羽ばたいて上昇したり、方向転換したり、急降下したり、名前の通り鳩になる作品だ。飛行している向きに対応してGalileoに繋がれた左右の扇風機がユーザーに風を送る。どちらがいいということではないが、OculusのVR体験が没入型で視界がゴーグルで塞がれているのに対して、こちらは風を感じることができて開放感もあり、また鳩になっている人を周りから眺められるのも一興だ。
会場入り口で飲み物を運んでいたテーブルもロボット(残念ながらグラスの中身はただの水だった)
チップセットメーカー大手としてMaker支援の分野にIntelも参入し始めたわけだが、今回単なる製品のデモンストレーションに留まらない非常にユニークな作品を出展していた。(次回に続く)
─ 類家 利直