Kids

2016.03.08

若きティンカラーのための4つのキットと良質な科学玩具の5つの特徴

Text by Kathy Ceceri
Translated by kanai

ニューヨークトイフェアで見つけた若きティンカラーのための4つのキット

学校でも家庭でも、子どもを自由に散らかし放題にさせることにはリスクがともなう。だから、親の安全地帯を守りつつ、子どもが何かに挑戦できる良質なキットが、ちょうどいい成長の階段となる。すべてのパーツ、すべての説明書が揃っていて、(よくすれば)作ったものの背景にある情報を学ばせてくれる。多少は散らかるだろうが、出来上がるものを考えれば、それだけの価値はあるというものだ。

完成することのない自由なキットは理想的だが、特定の完成形へ導くキットでも、それを使った新しい遊び方を考えたり、身の回りの素材を使って改造したりという方向へ促してくれるなら、それもいい。ここでは、ニューヨークトイフェアで見つけた、そうした条件に合うキットを紹介したい。

Kiwi-Crate

Tinker Crateは、Kiwi CrateのSTEAM(理系とアート教育)に関するキットだ。月額料金を払うと、毎月、子ども向けのMakerプロジェクトの箱が届く。対象年齢は9歳から16歳。プロジェクトには、ソフトサーキット(手芸素材で作る電子回路)、レーザーカットの投石機、アクリルをエッチングしたナイトライトなどがある。CEOのSandra Oh Linは厚紙で作る油圧式クローを見せてくれた。これは、接続ピンの位置を変えることで設定を変更できるようになっている(私の著書、Roboticsにも載っているダンボール油圧アームのうまい改良版だ)。キットにはイラスト入りの雑誌が入っていて、さらなる実験や遊びの方法が書かれている。さまざまな細かい情報を教えてくれるビデオチュートリアルもある。クレート単体で17ドル。定期購買は月20ドル。

ScienceWiz

ScienceWizウェブサイトとそのグラフィックは、ちょっと時代遅れに感じられるが、見くびってはいけない。この会社は、いつだって私のお気に入りを作ってくれている。ここのキットもいい。中に入っている本はPenny Normanによるもので、明解で平易。シンプルな素材を上手に使って、簡単に作れるようになっている。NormanはScienceWiz Sound Kitのデモを行っていた。これにはエジソン式の蓄音機が含まれていて、筒状のレコードで録音再生ができる。バンデグラフ起電機を作るCharge kitもある。ScienceWiz kitの価格は22ドルから30ドル。

Griddly-Games

Griddly Gamesは、Just Addサイエンスキットの新シリーズを出していた。Just Add Sunは、ソーラーオーブンにもなる箱に入っている。これには解説書が含まれていて、スモース(マシュマロを焼いてチョコレートとクッキーで挟んで食べるおやつ)やナチョスの作り方や、溶かしたクレヨンで何かを作る方法などが描かれている。Just Add Sunの売り上げの一部は、ソーラークッカーインターナショナルに寄付されることになっている。Just Add Glueは、スーパーボールやパテを作るキット。Just Add Milkは、マウスパッドとサンキャッチャーで絞り染めのような模様を作るキット。どのキットも安価で、とっつきやすい。Just Add Milkは約16ドル。新しいキットはこの春にも店頭に並ぶ。

Tinkineer

Tinkineerはビー玉ローラーコースターのキット、Marbleocityを展示していた。美しいレーザーカットした木材で作られている。手回し式のキットで、部品ははめ込み式なので拡張が可能。モータードライブも間もなく発売される。Marbleocityには、Tinkineerキッズのチームが、工作で悩んでいる友だちを助けるというマンガも入っている。とくに面白いのは、このキットがステップごとに作られるところだ。なので、親子で毎晩短い時間を使って組み上げていくことができる。毎日のゴールが、ちょうどいい区切りになっている。Marbleocityキットは30〜50ドル。予約受付中で、出荷は春になるということだ。

良質な科学玩具の5つの特徴

00-Sphero-SPRK2

私はもう10年ほど、Makerスタイルの教室を開いているが、私のローテク、またはノーテクのロボティクスや、その他の理系アート系活動に、エレクトロニクスのキットやツールを取り入れたのは、この1、2年のことだ。そうして気がついたのは、便利な教育用製品には共通する特徴があるということだ。

柔軟性

素晴らしいものが作れるキットで私は困ったことがないが、遊びが限定されない、想像力を開花させるような冒険ができて、作る技術も身につく玩具は少ない。

簡単で信頼性が高い

エンジニアの世界で英語専攻の私は、玩具やツールを箱から出したとき、きちんと動作するように最善を尽くす。あれこれいじくりまわすことが多いほど、きちんと動く確率は下がる。また、一年中、教材を持って学校や図書館を回っている教師としては、長い間、乱暴な扱いにも耐えられる製品が欲しいと思う。

解説や情報の印刷物が付属している

教育的な価値を高めるためにアプリを使う玩具が増えている今、印刷物などと言うと時代に逆行するように感じられるかもしれない。しかし、画面の文字を読むより、印刷された文字を読む方が多くの人にとってはわかりやすいのだ。去年のクリスマスに登場した littleBits GizmosとGadgetsキットがよいのはその点だ。使い方の解説や推奨されるプロジェクトなどが印刷されて入っていたので、littleBitsは「優れたコンセプト」から「生徒といっしょに使えるツール」に昇格した。

しっかりとした教育コミュニティ

私は最近、Makey MakeyScratchで遊ぶようになった。ワークショップを開いて子どもたちがこれらを使って何を作るかを見たり、特定のプロジェクトに使う方法を考えたりしている。うれしいのは、インターネットを覗くと、ビデオプロジェクトが山ほどあって、同じ教育者が(そして子どもたちが)どう使っているかがわかることだ。

インターネットで授業プランが公開されている

トイフェアで、販売員が教育的な価値について語り始めたとき、私はかならずこうひとつの質問をした。その製品を使って学校やその他の教室で授業を行う際の、詳細な授業の実例を紹介するウェブサイトがあるかどうかだ。玩具メーカーが教育者と協力して、その経験を公開しているのはよいサインだ。

たくさんのロボット玩具が教師たちに大きな提案をしていた。ひとつの例は、Spheroだ。私は、数年前のトイフェアで、Spheroの教育素材のデモンストレーションを見たことがある。彼らの新しい教育素材であるSPRKは、SPRK Lightning Labを開設し、Maker、学生、教師の成長を続けるコミュニティとつながっている。そこで紹介されている、SPRKに刺激されて作られたものが素晴らしい。Spheroがローラーブレードの車輪を動かすストランドビースト風のメカや、水に浮いてSpheroの力で動くイカダなど、どちらも学校の教室で作られたものだ。

WowWeeの教育的提案にも驚かされた。Cojiは缶ビールほどのサイズの無限軌道で動く関節ロボットで、顔はビデオ画面になっている。文字が読めなくても、スマートデバイス上で絵文字をドラッグ・アンド・ドロップしてプログラムすることができるのだ。また、Cojiはアプリを使わなくても使える。傾けたり揺さぶったりといった物理的な刺激にも反応する。WowWeeでは、去年展示していたバランスロボット、MIPの教育版を開発中。小学生向けから高校生、大学生向けと三段階ある。

気をつけておくべきは、こうした新しい製品ではコミュニティの構築と、教師がそれを使った授業を始められる教育用素材の提供ができるようになるまでに時間がかかるということだ。もしあなたが私と同じ教育者なら、科学玩具やツールを教室で使う方法を考える前に、しっかりと足場を固めておくことが大切だ。新しい魅力的な製品は、しばらく様子をうかがって、どの方向へ進むのかを、じっくり見定めてからでも遅くない。敷居の高いものから、受け入れやすいものへの変化は、どんどん早くなっている。

原文(1)原文(2)