Science

2017.06.02

食べられるイノベーション:オープンソースの農業技術を開発するCommon Garden

Text by kanai

シンガポールからアメリカ、そしてヨーロッパ全体に向けて、Edible Innovations(食べられるイノベーション)は、生産から流通から販売までのあらゆるステージで世界の食料システムを改善しようと考えるFood Makerたちを紹介しています。私たちといっしょに、この産業の大きな流れを、Makerの視点で探ってみませんか。優れた教育的な核を持ち、未来への偉大なる挑戦のための主要なツールとしてフードイノベーションを推進するFood Innovation ProgramのChiara Cecchiniが、世界のFood Makerたちの顔、話、体験を紹介します。


ベランダガーデンでも本格的な農場でも、数多くの作業を管理するのは難しい。農業は、21世紀の技術と情報を採り入れ古いシステムを改革しようという考えをかたくなに拒み続ける、数少ない作業のひとつだ。Jake Hartnell(@JakeHartnell)は、それを不満に感じていた。そこで彼は、そこを改革する方法を考えた。Hartnellの会社、Common Garden@Common_Garden)は、プロの農家も家庭菜園の愛好家も区別なく、高度な技術を使って、毎回、完璧な作物が収穫できるように手段を提供している。

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では、この装置と複雑なソフトウェアは誰が作ったのか? Jake Hartnellが、デザインとエンジニアリングを行っている。彼はカリフォルニア大学(UC)バークレー校を卒業し、現在はUCバークレーのSwarm Labに所属するデザイナーで技術者だ。開発した技術は、共同体の形で共有され普及すると信じている。また彼は作家でもあり、SF小説も書いている。hypothes.isで働いていたこともある。

Hartnellのこうした体験が積み重なり、Common Gardenとして結実した。小説の中で未来の出来事を書いているときに、対処すべき環境問題を考えるようになり、UCバークレーではオープンソース技術の大切さを知った。

農業の問題点も解決策も、Hartnellにははっきり見えていた。世界は、より狭い面積で、二酸化炭素や廃棄物を排出せず、時間も使わずに、今と同じだけの収穫量をあげる必要があった。それは途方もない挑戦に思われたが、Hartnellは答を知っていた。それはすでに存在する技術だ。オープンソースのプラットフォームを使えば、この惑星の環境を危険にさらすことなく、人々に食料を提供できるようになる。

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Common Gardenは、センサー、データ、自動化、人工知能を導入することで、食品産業に革命をもたらす。精度、費用対効果、そしてオープンソースコミュニティーに焦点を当て、作物の栽培に理想的な条件を感じ、コード化し、再現を可能にするのだ。

プロの農家と話し合いを重ねた結果、Hartnellは、農家が温度、湿度、二酸化炭素、光、養分密度、養分pHを管理できるようにするセンサーを開発した。これらの要素は、常に畑に作用しているものであるため、個別に記録するのではなく、プログラムによる完全な管理のために、ひとつのものとして記録される。

こうした管理された環境は、自然環境への影響を小さくするために必要な2つのことをする。除草剤の廃止と、農薬の減量だ。さらに、オーガニックで栄養の豊富な作物が作れるというだけではない。場所を選ばす、年間を通して収穫できるのだ。完全管理のシステムはすでに存在するが、そのほとんどが大変に高価で、仕組みも複雑だ。そこでCommon Gardenでは、オープンソースのツールを使うことで、コストの問題を解決し、誰にでも使えるようにデータ解析の方法を単純化した。

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ソフトウェアのGrow-IoTは、すでに持っている設備に合わせて、または栽培する作物に合わせてカスタマイズができる。オープンソースの情報を使うことで、すべての要素のプログラムと管理が行え、収穫の効率を高めることができる。これにより収入が増すばかりか、初期投資も抑えられる。

また、カスタマイズされたさまざまなガーデンの所有者のコミュニティに参加して、トラブルシューティングや、バグや修理の情報を共有できるようになる。作物ごとに個別の環境を作ることが非常に大切だ。最大の結果をもたらすための微調整も行える。

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「これはカリフォルニア・レッドウッドの赤ちゃん。数千年後には巨大になります。面白いことに、カリフォルニア州バークレーの屋上では日差しが強すぎるので、日陰に移動させたところ、とても元気になりました」

Hartnellは今後、この比較的新しい会社であるCommon Gardenをどうしたいと考えているのか? それは、拡大に次ぐ拡大だ。技術もさらに進歩させて、使用する水、リスク、労力、土地、化学物質、二酸化炭素排出量を減らしたいと考えている。

同社では、間もなく実店舗もオープンする予定だ。そこで、オープンソースソフトウェアに対応したハードウェアなどの販売を行う。情報共有と、よりよい農業システムを作ろうという情熱の力強い後押しを受けて、Jake HartnellとCommon Gardenは、最先端の農業システムで、よりクリーンで安全な世界を作ろうとしている。

原文