「Make:」の外部筆者でもあるClickspringのChrisは、「アンティキティラの機械を復元する」と題されたYouTube動画シリーズを公開している。その中でChrisは、古代の神秘の装置「アンティキティラの機械」を紹介し、解説を行い、それぞれの部品がどのように作られたかを特定するという困難な調査を経て、実際に自分で復元して見せている。その要点は、メカニズムの復元という大変な作業の記録と、もうひとつ、その部品を、現代のものではなく、古代の道具でどのように作られたかを探るところにある。
念のため解説しておこう。アンティキティラの機械とは、暦と天文学のための、惑星の位置や食を計算するアナログ計算機であり太陽系儀だ。驚くべきことに、これは紀元前150〜100年ごろに作られている。1910年、ギリシャの小さな島アンティキティラ島の沖合に沈没していた古代ローマの船から発見された。この機械が唯一のものなのか、たくさん作られていたのかは不明だ。これが海の底に沈んだ当時、こうした技術が広く普及していた可能性は低い。これと同程度の精密さと複雑さを持つ機械が次に登場するのは、現在知られている限りでは、14世紀のヨーロッパだ。
海水で腐食したこの青銅の塊が何物なのか、長い間謎とされてきた。しかし、デジタル画像解析技術が発達すると、機械の中のすべての部品が見て取れるようになり、実践考古学者たちが現代版のレプリカを作れるようになった。この動画シリーズで、Chrisは、単にこの機械を復元するだけでなく、そもそもこの機械が、当時の工具と技術を使って、どのようにして作られたかを解明しようとしている。とは言え、彼は旋盤も使っている。それは、当時の作り方が判明した部品の場合で、それがわかったなら、彼は躊躇なく現代の技術を駆使している。
スティームパンクのSF小説やその文化では、チャールズ・バベッジが19世紀中頃に開発した解析エンジン(機械式コンピューター)が実際に運用されていたら、そしてコンピューター革命が130年早く起きていたら、どうだったろうという話がよく聞かれる。もし、アンティキティラのコンピューター技術が古代世界に普及していたら、と想像すると気が遠くなる。これもまたSF小説のいい題材だ。下のイントロの動画でも話されているが、アーサー・C・クラークは、古代の人たちがこの機械のことを理解し、その技術を広く普及させていたら、300年以内に月へ行っていただろうと語っている。考えるだけでもわくわくする。
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