2019.03.06
オムロンの絶対圧センサ、感震センサ、人感センサの評価ボードが、Arduino、Raspberry Piに接続可能に。その狙いを聞く
イノベーション推進本部 CTO室 戦略グループ主査 髙塚皓正氏(左)と同グループの小島有貴氏(右)
3種類のセンサをRaspberry PiやArduinoで手軽に利用できる評価ボード
オムロンは新規事業創出の取り組みの一つとして、自社のセンサを搭載した評価ボードを発売した。スイッチサイエンスやPhysical Computing Labで購入できる。
・絶対圧センサ評価モジュール(Groveコネクタ付)(税込み1,620円)…スイッチサイエンスの製品ページ/Physical Computing Labの製品ページ
・感震センサ評価モジュール(Groveコネクタ付)(税込み3,780円)…スイッチサイエンスの製品ページ/Physical Computing Labの製品ページ
・OMRON MEMS非接触温度センサD6T-44L-06(税込み7,020円)…スイッチサイエンスの製品ページ/Physical Computing Labの製品ページ※Groveコネクタで接続するには変換基板が必要(税込み864円)…スイッチサイエンスの製品ページ
絶対圧センサは真空を基準にした圧力(絶対圧)を測定するもので、気圧の変化を高精度に検知する。その機能を用いて、高さの変化も±5センチレベルで測定できる。感震センサは3軸の加速度センサを組み込んだ小型の地震センサで、実際の震度に近いSI値で出力されるのが特徴だ。非接触温度センサは4×4ピクセルの解像度で視野内の温度を測定する。人感センサとしては焦電型の赤外線センサと異なり、静止している人も検出できる長所がある。
これらはGroveコネクタを介して、ArduinoやRaspberry Pi、M5Stackといったオープンプラットフォームのハードウェアに接続できる。サンプルコードはGitHubの「OMRON Developers Hub」で公開されている。
さらに、GitHubにはBluetooth Low Energy(BLE)で通信できる環境センサの2JCIEシリーズ(BAGタイプ、USBタイプ)をRaspberry Piで利用するためのサンプルコードも公開されている。
手前の3つが販売開始したセンサ(左から絶対圧センサ、感震センサ、非接触温度センサ)。奥の2つはBLE接続の環境センサ(BAGタイプとUSBタイプ)
オムロンがMaker向け製品を開発した経緯
オムロンがプロトタイピングツール向けの商品展開を始めたいきさつについて、オムロン イノベーション推進本部 CTO室 戦略グループ主査の髙塚皓正氏と、同グループの小島有貴氏に話を聞いた。
オムロンは産業向けにさまざまなセンサを開発している。主要な顧客は大規模な製造業だが、「個人のMakerからも、オムロンのセンサを利用したいという問い合わせが来ていました」(髙塚氏)。
オムロンのセンサをMaker向けの商品にするアイデアは2年ほど前からあったという。去年3月のイノベーション推進本部の成立で、社内にオープンイノベーション(組織の枠組みにとられわず、外部の研究者なども交えて多方面の知見や技術を集める手法)の環境が整ってきた。加えて「ここ1~2年でRaspberry Piの産業利用が急速に進んだという話をあちこちで聞いていたことも後押しになりました」(髙塚氏)。
しかし、BtoB向けに開発されたセンサはチップ単体での提供が主体である。それをDigi-Keyなどから入手しても、利用するには仕様書を読み解く必要があるなどハードルが高かった。そこでいくつかのセンサを選び、Raspberry PiやArduinoに接続して使える評価ボードとして提供することにしたという。センサの選定にあたっては問い合わせがあったものの中から、オープンプラットフォームのハードウェアに接続する方法が今までなかったものを優先した。
またこれらはオムロンが単体で開発するのではなく、ハードウェアベンチャーの合同会社テクノアルタエンジンと共同で行った。「どういうモジュール形態がよいかを検討する中でGroveコネクタを提案されたり、サンプルコードをどう提供するかを議論したりもしました。こちらから開発をお願いする形ではなく、一緒に考えながら作っていきました」(小島氏)。
こうして販売を開始した評価ボードは、さっそくSNS上で反応があったという。「Twitterで、絶対圧センサをM5Stackにつないでみたといった書き込みを見かけています」(小島氏)。
Makerと一緒に盛り上げていきたい
今後は先述の「OMRON Developers Hub」やGitHub Pagesの「オムロンのオープンプラットフォーム対応センサ」で情報を発信していくという。電子メールでの問い合わせも歓迎しているとのことである。オムロン側から製品や情報を一方的に提供するのではなく、Makerと共にオープンプラットフォームを盛り上げていきたい。これらのセンサでなにかを作ったら、ぜひTwitterやQiitaで公開してほしいと両氏は強調していた。