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2020.07.21

おとでん通信 #5|オンラインワークショップをやってわかった8つのTips

Text by editor

毎日ジメジメとした日々が続きますが、いかがお過ごしでしょうか?

今回からおとでん通信をちょっぴりリニューアルして、1記事1トピックでお話しをしていきます! 今回ご紹介するのはオンラインワークショップで得たTipsがテーマです!

乙女電芸部では、6/20(土)に、Maker Faire Tokyo/Kyoto スピンオフ企画として、オライリー・ジャパンと共催で乙女電芸部初のオンラインワークショップを行いました。その準備や当日得た経験をTipsとしてまとめています。これからオンラインワークショップを考えている方の参考になれば、と思います!

それではまず、Tipsの一覧です。

オンラインワークショップのTips8

→テーマは画面越しに作業が見えやすいものにしよう!
→事前リハーサルは必須!
→開場時間を設けよう!
→いま見てほしい画面をこまめに切り替えよう!
→時刻、スライド、手元を一画面に表示しておこう!
→事前に用意してもらう道具は、チェックリストにしておこう!
→ファシリテーターは2名以上が鉄則!
→郵送する場合は、余裕を持って早めに送ろう!

ワークショップ概要

当日のワークショップ概要はこんな感じで、事前に参加者を募集しました。

・タイトル:モーターで動く回転ブランコをオンラインでつくろう!
・ファシリテーター:乙女電芸部
・日時:6/20(土)14:00-15:30(終了時間は予定)
・参加費:2,500円(キット代、送料含む)
・参加人数:10名まで
・参加方法:Zoomを使ったオンラインワークショップ
・参加資格:3歳以上(未就学児は保護者の付き添いをお願いします)/はさみを使えること
・主催:乙女電芸部、株式会社オライリー・ジャパン
・募集方法:Peatix(https://otoden-make-onlinews.peatix.com/view)

今回の企画は、オライリー・ジャパンさんからご提案を受けて、乙女電芸部がファシリテーターとして実施しました。

これまで開催してきたワークショップの形式にならって、3歳以上のお子さん向けの電子工作ワークショップを実施することにしました。電子部品を使うので、ご自宅にある道具をご用意いただくのに加え、こちらが用意した工作キットを事前に郵送しておく必要がありました。

1. 開催前に参加者のご自宅にキットを配送
2. 当日はZoomを使って画面越しに一緒に工作

という2つのステップを踏んで、実施した形です。

完成品の作例動画がこちら。

それでは、準備〜本番までのタイムラインとともに、気づきを得たTipsをご紹介していきます。

テーマ選定(ワークショップ6週間前)

オンラインワークショップを開催するにあたり、テーマ選定を行いました。乙女電芸部はこれまでいろいろなワークショップをやってきたのですが、

・オンラインでできそうなこと
・簡単すぎないもの(キットのみよりも助言があったほうがつくりやすいもの)
・座学もふくめて60分-90分くらいで工作が終わるもの
・学びの要素もあるもの

などの条件でまず絞り込みを行いました。その中の一つの案として今回のモーターでつくる回転ブランコのワークショップが候補にあがりました。

オンラインワークショップでのテーマ選定の決め手は、できあがるものがそれなりに大きい(500mlペットボトルサイズ)ので、Webカメラ越しに作業の様子や作品が見やすそう、ということでした。これはオンラインならではの条件でした。逆にはんだづけや細かい電子部品を使うワークショップは参加者の手元が見えにくいので、オンラインには向いてないのでは、と思っています。

→ テーマは画面越しに作業が見えやすいものにしよう!

1回目のリハーサル(ワークショップ5週間前)

オンラインワークショップが初めてなので、色々と不安がありました。本当に90分で終わるのか? キットに不足しているものはないか? 画面越しに工作が伝わるか? などなど。ワークショップの内容を精査するために、まずは乙女電芸部のメンバー内でオンラインワークショップのリハーサルを行いました。

→ 事前リハーサルは必須!

あらかじめ部長のやじまがタイムラインを考え、キットを作り前もってメンバーに発送しました。


今回お送りしたキットの中身

発送時にはキットの梱包がズレたり中身が壊れていなかったかの確認を実施。中身は問題なかったのですが、梱包のズレは起きていたので、本番の梱包方法はその対策を施したものにしました。

自宅で用意するものは前もって用意してもらいます。参加者にリマインドメールを送る予定でしたので、メンバー宛にもチェックリストのリマインドメールを送りました。普段のワークショップでも忘れ物に気をつけて何重にも確認していますが、一つでも材料や道具が欠けると作品が完成しないことがあるので、オンラインではより慎重に確認すべきです。

→ 事前に用意してもらう道具は、チェックリストにしておこう!

タイムラインは以下のように設定しましたが、あえて他のメンバーに共有せず、やじまがファシリテーター役でメンバーが参加者役(作ったことがある人とない人が混在)となり、ワークショップを進めました。

・前半の45分
-接続確認(検証により本番では開場前30分に変更)
-自己紹介
-アイスブレイク
-座学(モーターの仕組み)
-アクティビティ(モーター借り物競走)
・後半の45分
-工作
-発表
-記念撮影

実際にやってみると、かなり時間は押してしまい、電子工作部分は終わったものの、デコレーションは一部分で終わってしまいました。工作に慣れているメンバーが多いリハーサルでこの状態では、本番は確実に時間がオーバーしてしまうはずです。以上をふまえて、時間を前倒しにするため、タイムラインを変更し、開場時間を30分前に設定し、接続トラブルなどの解消と自己紹介はその時間内に行うこととしました。

→ 開場時間を設けよう!

また、ファシリテーターのやじまが、自分の手元を映す映像とスライドを切り替えながら話していたのですが、その操作に時間を取られていました。そのため、作業の手元を見せる人と話す人はわけて、一画面の中に手元の映像と工程の説明スライドを入れることとしました。

第一回目のリハーサルでは、以下5点の検証が出来ました。

・梱包方法が問題ないか
・参加者に用意してもらう道具のチェックリストに過不足がないか
・ワークショップ当日のタイムライン
・ワークショップの中身がオンラインでも成立するものになっているか
・ワークショップ中の映像の見せ方

参加者募集開始(ワークショップ4週間前)

前述のように今回はPeatixを使って参加者を募集しました。今回は共催のオライリー・ジャパンさんにイベントページを立ち上げてもらいました。このときに作例写真や内容が必要になるので、写真撮影や内容確認のためにもリハーサルは必須ですね。

2回目のリハーサル(ワークショップ2週間前)

2回目は共催のオライリー・ジャパンのみなさんに協力していただいて実施しました。

今回は当日使用するオンラインミーティングサービスのZoomを利用して、Zoom自体の検証と、ブレイクアウトルームという機能の検証を行いました。Zoom自体はOKでしたが、ブレイクアウトルームは不使用という結論になりました。

ブレイクアウトルームはオンラインミーティング内で部屋を分ける機能です。これを使うと少人数ごとの部屋が形成できるので、作業時に有効かと思ったのですが、やってみるとホストでも同時に入れるルームは1つのみなので、他の部屋の様子を伺うことができず、作業全体がずれる可能性がありました。よって、今回のワークショップでは使用しませんでした。あまりにも工作が遅れてしまった人をフォローする場合や、時間をくぎってできるブレインストーミングなどには向いていると思います!

また、Zoomにはスポットライトビデオという機能があり、ホストが特定の発言者の画面をスポットライトビデオに設定すると参加者全員にその発言者が大きく映ります。ギャラリービューだと誰が喋っているか分かりにくいので、ホストがスポットライト切り替えを細かくし、発言者をわかりやすいようにしました。

基本的にはファシリテーターの画面をスポットライトにしていましたが、自己紹介や発表などの際には参加者の画面をスポットライトにして、全員が発言者を見えやすいように切り替えました。

→ いま見てほしい画面をこまめに切り替えよう!

参加者にはタブレットからの参加も許可していたので、iPadからの見え方も確認したのですが、スポットライトビデオを使えば問題なく発言者が大画面になりました。

また、前回の反省からファシリテーターの画面を分割し、一画面の中に時刻、スライド、手元を表示する実験をしました。OBS Studioというソフトウェアを使いました。無料のライブ配信用ソフトで、画面を分割して複数の映像ソースを表示しながら配信をすることができます。テレビに使われるワイプ画面をいくつも作れる、というイメージです。

→ 時刻、スライド、手元を一画面に表示しておこう!


このときはテストなのでPCを触っていますが、実際には左上に作業の様子を映しました

キットの発送とリマインドメール(ワークショップ1週間前)

Peatixでの応募を締め切り、ダウンロードした参加者のリストをもとにキットを発送しました。発送には追跡可能な郵便局のクリックポストを使いました。追跡ができる発送方法は必須かと思います。また、厚みが30mmを超えると色々な配送方法で値段が跳ね上がってくるので、キットを作る際には30mmを超えないようにすると送料を安く抑えることができます。

また、第一回リハーサルのところでも書いたように、参加者に1週間前にリマンイドメールを送りました。事前に準備してもらう道具が当日揃っていないと、作品が完成しない可能性も……。なので、これも必ずやっておいたほうがよい作業です。ZoomのURLについてもこのメールでご案内をしました。

チェックリストはメールで送るだけでなくキットと同梱もしました。


確認しやすいようにチェックボックスをつけました

また、当日万が一インターネットがつながらなかったときのために、緊急連絡先の電話番号も参加者にお送りしておきました。

いよいよ本番!

ドキドキしながら当日を迎えました。開場してすぐに小学生の子がZoomにつないでくれました。お話ししていると、学校の授業でもZoomを使っているそうで、操作はかなり慣れている様子でした。他の参加者もみなさんオンライン会議に慣れているようで、私がお話しすると、なにも指示していないのに自分からミュートをしてくれて、とてもスムーズに進みました。

本当はひとりでお話ししていると寂しいので、ワイワイとみなさんにも喋っていただきたかったのですが、10名がオンラインでワイワイ話すのは難しいですよね。家族で相談しながら作っている方も多く、ミュートは参加者にとっても都合が良かったようです。途中で出てきた質問は、都度、ミュートを解除して発言してもらうようにしました。また、疑問が生まれそうなタイミングで、ファシリテーターが常に参加者に質問がないか投げかけるようにもしていました。

今回はアクティビティとして「モーター借り物競争」を行って、家の中のモーターを使っている製品を探してもらったのですが、みなさんすぐにモーター製品を見つけてきてくれました!普段のワークショップでは、会場で探してみよう! としても、なかなか見つけにくいので、これはオンラインで各家庭をつなぐことの強みでした。ご家庭によって持っている家電なども違うので、いろいろな発見もあり、ファシリテーターとしても楽しかったです。ご家庭にあるものなので、モーターを身近に感じることができ、仕組みを理解するうえでも非常に役立ったのではないでしょうか。

なお、当日は乙女電芸部から3名参加し、それぞれが以下の役割を分担しました。

①作業担当:作業をしながら手元を映す
②司会進行担当:工程やヒントを話す、スポットライトビデオの切り替え
③参加者とのコミュニケーション担当:参加者の様子を見ながら適宜アドバイス

オンラインでは、いつもとの違いとして、以下の2点がありました。

・オフライン時には不要な、参加者と同様に作業する人が必要
・参加者の見回りもしにくいので、それ専用の役割を持った人がいると良い

2回のリハーサルを重ね、オンラインワークショップに適した形に役割分担を施したので、スムーズに説明でき、時間内に参加者全員がデコレーションまで終えることができました! 今回は工作自体をスピーディーに進める必要があったので、ファシリテーターは3名にしましたが、2名以上は必須かなと思いました。

→ ファシリテーターは2名以上が鉄則!

また、ワークショップの最後には「居残り時間」として、質問がある方はZoomの部屋に残って作業していただけるような時間を設けておきました。これは対面式のワークショップと同じような感じで、残りたい人は粘ってつくることができるので、全員を強制終了させるスケジュールとならず、おすすめです。

反省点

これは参加者の方に非常に申し訳なかったのですが、1名の参加者の方への荷物の発送が遅れる、という事態がありました。

Peatixから参加者の住所リストをダウンロードし、キットを送付したのですが、Peatixリストは予約タイミングではなく、参加者の方が入金をすませたタイミングでリストに反映されるため、こちらがリストを取得したタイミングでは1名の方がリストに反映されていない状況でした。1名欠けた状態のリストを利用して発送作業をしてしまったために遅れが発生しました。

→ 郵送する場合は、余裕を持って早めに送ろう!

また、参加者の方からご連絡があったおかげでこの問題が発覚しました。「お申し込みいただいた方に材料を6月16日(火)までに到着するようお送りします。もしこれらが届かない場合には、メールにてご連絡いただけますと幸いです。」Peatixページにこのように書いていたので、参加者の方が16日までに届かなかったことを夜に報告してくれたため、すぐに次の日に発送し前日に到着して事なきを得ました。それでも前日ぎりぎりの到着になってしまったので、参加者の方からの連絡が遅れた場合キットが間に合わない可能性もありました。ワークショップの4日前に届かなかった場合の連絡をお願いしていましたが、かなりギリギリだったので、この確認は1週間前くらいに設定して、余裕を持っておくと良いと思います。

キットに不足品があった場合にも対処ができるので、キットの送付を2週間前、参加者に確認してもらうのを1週間前などと設定しておくと安心です。

オンラインワークショップのTips8まとめ

というわけで、以下の8つが私達がオンラインワークショップを開催してわかったTips集です!

・テーマは画面越しに作業が見えやすいものにしよう!:

    ワークショップのテーマは、参加者の作業がWebカメラで映りやすいようなものに設定するのが良いでしょう。

・事前リハーサルは必須!:

    リハーサルは必ず実施しておきましょう。郵送するものがある場合は梱包方法の検証が必須ですし、実際に作ってみてから当日の時間割を決定しておくのがおすすめです。

・開場時間を設けよう!:

    ワークショップ開始時刻の前に開場時間を30分ほど設けて接続トラブルを解消しておきましょう。

・いま見てほしい画面をこまめに切り替えよう!:

    ファシリテーターの映像を、Zoomの「スポットライト」に必ず設定し、参加者全員に常に表示されるようにしておきましょう。

・時刻、スライド、手元を一画面に表示しておこう!:

    ファシリテーターの映像はOBSなどで分割し、現在の時刻、工程のスライド、ファシリテーターの手元を常に映しておきましょう。

・事前に用意してもらう道具は、チェックリストにしておこう!:

    キットとは別に、参加者のご自宅で用意してもらう道具は、当日抜け漏れがないように、必ずリストにして伝えるようにしましょう。

・ファシリテーターは2名以上が鉄則!:

    10名程度のワークショップの場合ファシリテーターは2人以上が好ましいです。作業の手元を見せる人と、参加者の作業の様子をみながら工程の説明をする人を分けると、進行がスムーズです。

・郵送する場合は、余裕を持って早めに送ろう!:

    事前にワークショップに使うものをキットにして送付する場合は、届かなかったときのために、一週間ほど余裕を持って発送しておきましょう。

私たち乙女電芸部と同じように、普段Maker Faireなどに出展されている方が、オンラインでワークショップを実施する今回のようなケースは、これからも増えてくるかもしれません。オンライン形式は参加者の作業環境が対面式と大きく異なるので、考えないといけないことはグッと多くなります。ですが、この状況でもものづくりに触れてもらう機会になるので、今回の記事がその参考になると嬉しいです。

オンライン環境でも、良いものづくりの場がたくさん生まれると良いなあと私たちは考えています!ニッチなTips集になってしまいましたが、ぜひご活用ください。

編集部から:今回は、乙女電芸部さんにワークショップの企画・材料などの準備・ファシリテートをお願いし、MAKE編集部では主にmakezine.jpの記事や公式SNSアカウントを使った告知を担当するという、それぞれの長所を活かした形でオンラインワークショップを共催させていただきました。MAKE編集部では今後もさまざまな方々とオンライン企画でご一緒させていただきたいと思っております。ご興味のある方は、info@makejapan.orgまでご連絡ください。