プログラミングロボット「Root」(29,800円、税込)は、ロボット掃除機ルンバでおなじみ、アイロボット社のSTEM教育向けロボットだ。ルンバを小さくしたような6角形の円盤型ロボットで、上面に光センサー、タッチセンサー、LEDセンサー、側面にバンパーセンサー、底面に段差センサー、カラーセンサーを搭載。つまり、障害物や段差を避けて走行したり、汚れを検知したり、といったルンバと同じような動きをする機能をほぼ備えている。
LEDは青、緑、赤、黄色の4色に光る
吸引機能はないが、中央にはマーカーの挿入口、裏目にクリーナーがあり、これらを上下させてマーカーで描いた線を消す、という掃除っぽいことも体験できる。
PCやモバイルデバイスとはBluetoothで接続する。つながりやすく、安定した接続で準備に時間がかからないのがうれしい。また同時に複数のデバイスとペアリングでき、Rootを接続していなくてもアプリでのプログラミングとプレビューが可能なので、授業で使う場合は、クラスに1台あれば十分だろう。
お絵かき用のマットとマーカーが付属
裏面のクリーナー
3レベルのブロックプログラミング環境
プログラミングには、専用アプリ「iRobot Coding」を使用する。プログラミング方法は、アイコンのブロックを並べる「グラフィック・ブロック」と、Scratch風の「ハイブリッド・ブロック」、Pythonによる「フル・テキスト・ブロック」の3つのレベルから選べる。名称に「ブロック」と付いているとおり、いずれもブロックプログラミングだ。「フル・テキスト・ブロック」も自分でコードを打ち込めるわけではなく、用意されたコマンドや構文のブロックをドラッグ&ドロップで組み合わせる形で、引数やパラメーターなどを部分的に編集できるようになっている。またレベルが上がるほど、使えるコマンドや構文の種類が増え、機能の引数に指定できる値の自由度は高くなる。
低年齢向けの「グラフィック・ブロック」。ブロックをタップして詳しい動作を設定できる
Scratchライクな「ハイブリッド・ブロック」。引数は選択肢から選ぶか、テンキーパットから値を入力する
Python言語による「フル・テキスト・ブロック」。用意されたコードをドラッグ&ドロップで並べていく
iPad版iRobot Codingは、明るさ、iPadの傾き、音声をトリガーにしたり、関数のようなブーメランブロックが使える
iPad版アプリのサンプルには、デバイスのUIやアニメーションとRootが連携するゲームがいくつか公開されていたが、これらはiRobot Codingでは作れない。こうしたコンテンツが作れるより上位のモードか、あるいは教材開発者向けのSDKが公開されるといいと思う。なお、米国ではサブスクリプションの「Root Academy」というプレミアムプランが用意されており、より高度なコンテンツが利用できる。
iPad版ははチュートリアルやゲーム、サンプルプログラムも豊富。有料のプレミアムコースもある
プログラミング教室の現場では、micro:bitなど安価なマイコンの教材は壊れやすいのが悩みだが、Rootは、家電として実績のあるルンバをベースとしているだけに、安定した動作でバッテリーの持ちもいい。ロボット教材としての潜在価値は高いので、今後、日本語版の開発環境がアップデートされ、コミュニティが拡がることに期待したい。