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2020.01.07

思わずハックしたくなる、micro:bit制御のタミヤ「マイコンロボット工作キット」

Text by Noriko Matsushita

タミヤのプログラミング工作シリーズの第1弾として「マイコンロボット工作セット(クローラータイプ)」(税込価格1万780円)。が発売された。これは、2017年に発売された「カムプログラムロボット工作セット」のモデルに、マイコンボード「BBC micro:bit」、超音波センサー、駆動回路基板をセットにしたものだ。


タミヤ プログラミング工作シリーズNo.1「マイコンロボット工作セット(クローラータイプ)」


パッケージの中身

カムプログラムロボットは、プログラムバーにカムを配置して、ハード的にクローラーを浮かして動きをコントロールする仕組みを持ち、コンピューターを使わずにプログラミングを体験できる工作キットとして人気が高い。BBC micro:bitやRaspberry Piなどのマイコンを載せて動きの制御もでき、「タミヤロボットスクール」をはじめとするプログラミング教室の教材としても活用されている。

ロボット工作に興味を持った子どもがさらにステップアップをしようとして、「センサーで障害物をよけて自動走行するロボットをつくろう」と考えたとき、マイコンとセンサーをネットで注文したからといって、すぐにマイコン制御できるかというと、なかなかそうはいかない。センサーやモーターは、どのケーブルをどこにつなげばいいのか。センサーからデータを取得し、モーターを動かすコードはどれなのか? 最初の一歩を超えるのは、ハードルが高いのだ。

プログラミングを習得する早道は、既存のプログラムをハックする、つまり改造することだ。マイコンロボット工作セットは、ハックできるロボット工作キットとして提供されている。


モーター、電源スイッチ、電池ボックスなど、すべての部品が同梱されている


マイコン(BBC micro:bit)、モーター駆動回路(mi-01)、超音波センサー(mi-01)

まずは、部品の組み立てから。パーツ数は多いが、ビス止めだけで、接着剤なしで組み立てられるようになっている。プラモデルを作ったことがなくても、手順どおりに組み立てていけば、ちゃんと完成する。所要時間は、2~3時間程度。教材としては難しすぎても簡単すぎてもつまらないので、ほどよい難易度だと思う。


ニッパーとカッターナイフで部品を切り離し、手順どおりに組み立てていく

プログラミングなしで、すぐにテスト走行できる

同梱のmicro:bitには走行用プログラムがインストール済みなので、組み立てたロボットに電池をセットしたら、すぐに自動走行ロボットとして動かせる。

インストールされている基本の自動走行プログラムは、超音波センサーが前方正面の障害物を感知したらランダムに曲がる、というもの。さらに、もうmicro:bitをもう1台もっていれば、リモコン操縦も可能だ。ロボット用のプログラムは、タミヤのロボット用プログラムサイトからダウンロードして、micro:bitサイトの「MakeCode Editor」で開けば自由に編集が可能だ。


プログラムはブロック表示もできる


サンプルプログラムは丁寧なコメント付きで、何をするためのコードなのか把握しやすい

サンプルプログラムをハックしてプログラミングを学ぶ

電源スイッチを入れたら、最初に何をやっているのか。「A」「B」ボタンを押したときの音、走る速度、曲がる方向は、コードのどの部分に書かれているのか。データはどのように受け渡されているのか。プログラムの値を変えて、何度も試してみることで、だんだんプログラムの中身がわかってくる。

タミヤのロボット用プログラムサイトには、基本の自動走行とコントローラー用のプログラム以外にも、「2秒前進し、1秒左旋回するプログラム」や、「コントローラーのAボタンで2秒前進、Bボタンで2秒後退」といったサンプルプログラムが公開されているので、これらをベースに組み合わせていくことで、走行ルートを固定した自動走行するロボット、音に合わせて移動や旋回するロボットなど、オリジナルの動きをプログラミングできる。

この「マイコンロボット工作セット(クローラータイプ)」の対象年齢は14歳以上なので、中学生や高校生向け。組み立てに2時間以上かかってしまうので、授業で取り入れるのは難しいかもしれないが、ハッカソンのようにチームでロボットを改造して独自の機能やパフォーマンスを発表し合うのも楽しそうだ。

このキットの魅力は、プログラミングができなくても、アイデアが思いつかなくても、組み立てるだけで、最初から完成度の高いロボットが出来上がることだ。限られた時間のなかで未完成で終わってしまうと、動かないロボットと苦手意識だけが残ってしまう。プログラミングの面白さを味わい、次のアイデアへとつなげるには、達成感が得られるのは大事だ。

プログラミング教育の実施へ向けた、教員向けの研修教材としてもお勧めしたい。午前中に組み立てて、午後は既存科目の授業への応用を考えて、プログラムを改造し、夜は発表、といったプランはどうだろうか。