Crafts

2008.04.22

Make: Tokyo Meeting 2008 ダイジェスト

Text by kanai

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2008年4月20日、東京都江東区のK International school Tokyoにおいて開催したMake: Tokyo Meetingは、多くの出展者、来場者のおかげをもちまして、大成功のうちに終わりました。どうもありがとう!
これほど大規模なイベントは初めてだったので、出展者のみなさまには数々のご不便をおかけしましたが、今後の勉強材料にさせていただきます。
また、ボランティアで参加していただいたK International school Tokyoの生徒さん、ありがとうね! そして、最後までお付き合いいただいた学校職員のみなさま、ありがとうございました。
そして、わざわざお越しいただいた大勢のお客様に心より感謝申し上げます。
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会場となったK International school Tokyoの講堂には、日本の小学校のように子供たちに向けたスローガンがいろいろ書いてあるんだけど、なかでも目を惹いたのは「メッセージや情報を作ったり、送ったり、受け取る方法はたくさんある」「自分の考えや感情はアートを通してコミュニケートできる」というもの。いかにコミュニケーションとアートが大切かを具体的に伝えている。日本の学校と違うなーと思うと同時に、まさに Make: Tokyo Meetingの会場に相応しい場所だと感じた。
余談はさておき、じつに賑やかなイベントだったなー。屋内会場では音楽系の展示が多く、電子音やテスラコイルのズビーッというデンジャラスな音が鳴り響いていた。屋外会場では、エンジン式の歩行ロボット、エンジン式ホバークラフト、そして真空バズーカと、まるで工事現場か戦場のようだった。ご近所のみなさん、ごめんなさい(あやまってばっかりだな)。
大学の研究者から趣味の Makerまで、また高度な電子工作から手作りオモチャまで、出展者、出展内容はジャンルの垣根を越えた非常に幅広いものだったけど、みんなに共通していたのは、楽しいことが大好き、自分で作ることが大好きのMaker 精神の持ち主であること。そして、なんらかの技術的なアプローチで自由な自己表現を目指す”アーティスト”だということ。技術とアートの融合点が、ここにあった。
ここで、出展内容をざっと紹介しておきましょう(50音順)。
●展示
The Breadboard Band
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ブレッドボードで回路を組んだ電子楽器と活動の紹介。必要最低限の電子回路をブレッドボード上に組み、それが見える形で、直接いじって音楽を演奏するというのが活動のコンセプト。残念ながら今回はライブステージは見られなかったけど、次回はぜひ!
The Breadboard Band
[b] Laptop orchestra
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ずらりと並んだノートパソコンの基盤をむき出しにして、互いにワニ口クリップで回路をショートさせることで、音と画像をビービー言わせるクールでデンジャラスな電子アートだ。
technomaterial.org/
KIMURA
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ひときわ異彩を放つアンチサーボモーター派のロボットアーティスト。型にはまりつつあるロボットのスタイルをぶち壊したく、どう見ても非効率な、あえて重くてうるさいエンジンを使った二足歩行機を作った。
KIMURA/
MechaRoboShop(Arduino日本正規代理店 !)
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ついにArduinoの正規日本代理店が登場! Arduinoの他にも、GainerやMAKE Controller Kitなど、Makでおなじみの電子部品がバッチリそろう、うれしいショップ。
MechaRoboShop
N.I.T. 物理体感工房
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日本工業大学超応用物理研究所のみなさん。物理は楽しい! というテーマでとんでもない物を作っている。今回披露してくれたのは、ピンポン玉でアルミ缶もぶち抜くという真空バズーカ砲。セグウェイの試乗会には行列ができていた。
超応用物理研究所
X680x0同人サークルX-PowerStation./X68K.NET
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1987年に発売されたシャープのパソコン、X68000をいまだに現役で使いつづけている愛好者の会。ソフトもハードも「ないものは自分で作る」という信念で、往年の名機を支えている。ブースでは自作ゲームやハードが販売されていた。
X-PowerStation
雪風 浮動粒子式スペクトラムアナライザ
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東京藝術大学映像研究科でメディア映像を研究している井上泰一氏の作品。映像では見ていたけど、実物はとっても美しかった。
井上泰一
1000円 3Dスキャナ Tri-Coder
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今江科学こと今江望氏が、すばらしいアイデアとMaker魂で作り上げた1000円以下で作れる手回し式3Dスキャナ Tri-Coderの実演。実物と同じバラストタンクで浮沈する深海探査船バチスカーフの模型が美しかった。
今江科学
電子楽器ウダー
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宇田道信氏が、いかに演奏の効率を高めるかを追求して作った、まったく新しい形の楽器ウダーの実演。ほんとにまったく新しい。まったく新しい音楽も生まれそう。
電子楽器ウダー
歌うテスラコイル
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なんと高校生Makerの菊地秀人氏が、大きなテスラコイルを展示。ジージーとクールな本当の意味でのエレキサウンドで音楽を奏でていた。てっぺんからは紫色の稲妻が! 
高エネルギー技術研究室
moo-pong、Sound Candyほか
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人、モノ、環境、社会のインタラクションの形を研究する慶應義塾大学奥出研究室から、3種類のオモチャが展示された。取り込んだ映像を万華鏡のように見るオモチャ moo-pong の前にはいつも子供がいたなぁ
慶應義塾大学奥出研究室
音楽絵の具 sonigraphit
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慶應義塾大学奥出研究室の卒業生、小泉氏による「音楽を生成するデジタル画材 sonigraphit」の実演。ビートのきいた音楽に合わせて絵を描くと、ペンの動きに合わせて音がウィーンと変化し、センサーで色を読み込むと、色に合わせてリズムが変化する。
ぽっちり村
遠隔操作のチョロQ
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佐藤伸吾(akio0911)氏、Web2.0 Podcast、Hacker’s Cafeの皆さんによる、ゲイナーとRuby on Railsを使って、ネットワークを通してチョロQを操作するシステムを実演。会場ではインターネット接続ができなくて、残念でした。すいません。
佐藤伸吾(akio0911)のライフスタイルハックblog
Web2.0 Podcast
Hacker’s Cafe
チームG とゲイナーワークショップ
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チームG(金箱淳一、菅野創、小林茂、西郷憲一郎、佐竹裕之、蛭田直各氏)による Mr.Rolling、Foot Rocker、Jamming Gearなどの楽しいデバイスを展示。Make 日本語版 Vol.4で紹介したMountain Guiterも登場した。
ゲイナー開発者の小林茂氏によるゲイナーを使ったワークショップが体験できた。
だけど会場がうるさくて、小林さんの声や作品の音がよく聞こえなかったのはごめんなさい。
IAMAS Gangu Project
yapan.org
The Sine Wave Orchestra mediate
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サイン波の音源を鳴らすことで誰でも参加できる国際的な参加型サウンドパフォーマンスプロジェクト、The Sine Wave Orchestraのメンバー、城一裕氏が、リアルタイムで動きを記憶するスライダーなど、サイン波を鳴らすデバイスを展示。
The Sine Wave Orchestra mediate
自作ジェットエンジン
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高校生のころからジェットエンジンの自作を続けている鈴木ヒロシ氏が、ジェットエンジンを展示。始動のための機材を持ち込めなかったために、今回は残念ながら見るだけでした。音が聞きたかったなー!
Dry Room
初音ミク実体化プロジェクト
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ニコニコ動画技術部のrerofumi氏とAkira氏に、SF作家の野尻抱介氏を加え、初音ミク実体化プロジェクト関連作品などを展示。いろんな初音ミクちゃんがネギを振り回していました。
野尻抱介 リファレンス・マニュアル
rerofumiのつぶやき
Daemon Lab
手作りプラネタリウム
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工房ヒゲキタの手作りプラネタリウムと立体映像。会場の片隅に現れた黒いドームの中から、ときおり「きゃー!」と歓声が響いておりました。
ヒゲキタ
歌うプリンター “からりおん”
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チーム”マイナスドライバー”の江澤崇裕氏、岩谷心太氏、廣瀬健二氏の3名が、旧式プリンターのステップモーターをMIDIで制御して、ガーガー鳴るあの音で音楽を演奏させるというシステムを展示。今回はプリンター2台を使って4音の演奏でした。
からりおん
コーヒー缶テルミン
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横瀬広明氏によるコーヒー缶に仕込んだテルミンの展示。普通の缶コーヒーに手を近づけるとピヨーッと音が鳴る。音程コントロールのみの1アンテナテルミン。それだけのこぢんまりとした展示だったけど、手作りっぽくて(みんな手作りなんだけど、とくに)好感持てました。
UAV コンピューティング
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東京大学知能工学研究室の吉本英樹氏による、UAV(無人航空機)をメディアや表現のためのプラットフォームにしようという研究の解説。会場には実際にヘリウムで浮かぶ大きなUAVが持ち込まれ、飛行実演が行われました。
●プレゼンテーション
出展者には、ステージで展示内容に関するプレゼンテーションを行ってくれたみなさんの他に、プレゼンテーションのみで参加してくださった方もいます。
やざきしげあき(とりっぱ)
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日本の人力飛行機界の草分け、やざきしげあき氏による、人力で空を飛ぶということの技術的側面からの解説。楽しくユーモラスに語ってくれました。
とりっぱ
●スタッフコーナー
入口近くには、Make日本語版の訳者、筆者のコーナーがあり、本誌の記事に登場したプロジェクトの実物の展示やワークショップなどが催されました。
石井寛
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Make日本語版の筆者、石井寛氏による、ジュールシーフワークショップ。ブレインマシンの体験コーナーもありました。
鴨澤眞夫
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Make日本語版の訳者及び筆者の鴨澤眞夫氏による、沖縄の伝統おもちゃ”ふうたん”のワークショップ。完全アナログな竹細工コーナーには、家族連れや女の子たちで終始満席でした。
高橋隆雄
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Make日本語版の筆者、高橋隆雄氏による手作りホバークラフトの試乗会。また、Make日本語版 Vol.4 で紹介したビデオプロジェクターを試作したものを展示。しかし、会場で高橋サンを見かけた人は少なく、ホバークラフトの試乗会もプロジェクターの展示ブースも別の人が担当していました。高橋サン、どこにいたんでしょう?
今後は、Make: Japanが特に気になった出展をMake: Japanチョイスとして、ぼちぼち紹介してゆく予定です。お楽しみに!
編集から:FlickrでMake: Tokyo Meetingの写真を公開している方は、よかったらmaketokyoタグを付けてください。よろしくお願いします!