2013.08.19
アストンマーチンを3Dプリントする
Yahea Abdulla によるインタビュー
Solidoodle 2nd Generationを使って自動車を一から作ろうとしているニュージーランド、オークランドに住むSolidoodleユーザー、Ivan Sentchに話を聞いた。進行中の彼のプロジェクトの写真を見たとき、それが彼の3Dプリンターを使った初めてのプロジェクトであるとは信じられなかった。また、こんなに大きなものをデスクトップ3Dプリンターで作れるなんて思わなかった。このユーザーには、そんな不信を吹き飛ばしてもらいたい。これは狂気か、それとも天才の業か。いずれにせよ、すごいことに違いはない。
Ivanは、彼のプロジェクトに関する電子メールでのインタビューに快く応じてくれた。彼とのやりとりを、Q&Aの形で紹介しよう。このページの下の方には、これまでのプロジェクトの経過を示す写真がある。
Q:3Dプリントの経験はどれくらい?
A:今年の1月からです。
Q:ご家族やお友だちは、このことをどう思ってますか?
A:頭が変になったと兄弟には思われてましたが、最後の部品を作ったあとは、できるんじゃないかと信じてくれるようになりました。友だちも、このプロジェクトのすごさを理解してくれませんが、理解してくれる人たちは、それに挑戦する私に畏怖の念を持ってくれています。
Q:3DプリントはSolidoodleで勉強したの? それとも以前から経験があった?
A:経験はありません。それに近い経験もありませんでした。プリンターはクリスマスのころに届いて、まっさらの状態から勉強を始めました。
Q:レプリカは前にも作ったことがあるとブログで読んだけど、そのときも型を作りました? 3Dプリントは使わなかった?
A:いえ、前のやつはレプリカというより、キットでした。ベースの上にかぶせるように他の人が作ったキットです。ボディもシャシーも自分で作ろうとしている今のプロジェクトに比べると、簡単なものでした。
Q:仕事を見れば、あなたが初心者ではないことがわかります。あなたの経歴は? 仕事でデザインや3Dプリントを使っていますか?
A:いえ、私は完全に初心者です。でも学ぶのが早いんです。私はプログラマーです(今はプログラマーの小さいチームを管理していますが、プログラミングも行っています)。CADは学生時代に学んで、それから15年間、ホビーレベルで使っています。しかし3Dモデリングはほとんどやったことがありません。これほど複雑なものは初めてです。
Q:これは、デスクトップ3Dプリンターのプロジェクトとして、こんなに大きなものは見たことがありません。これはホビーなんでしょうか、それとも仕事? 動機を聞かせてください。
A:プロジェクトの構想は6年前からありました。もっと早く取りかかりたかったのですが、子どもが生まれたので(3歳と1歳)、このような時間を食うプロジェクトは我慢しなければなりませんでした。とは言え、プリント自体は時間を食いません。仕事に行く前にいくつかボタンをクリックするだけです。または寝る前にセットすればいい。プリントの準備にかかる時間も週に数時間です。時間を食うのは、パーツを貼り合わせる前に紙ヤスリで磨く作業です(しかも退屈)。
こうしたプロジェクトは珍しくないんです。みんなよく、CNCでフォーム材からプラグを切り出しています。私は、CNCでプラグを切り出してもらうのに12,000〜15,000ニュージーランドドル(約100〜125万円)もかかると聞き、それではプロジェクトは立ちゆかないと思いました。そこで、代わりに3Dプリンターを使えないかと考えたのです。調べてみたら、2,000ドルでプラスティック材料もプリンターまでも買えてしまうことがわかりました。プリンターがあれば、ダッシュボードのレプリカなど、ほかのことにも使えます。
また、3Dプリントなら、ドアもボンネットもトランクもダッシュボードも個別にプラグが作れて、よりよい(少なくともより簡単に)ボディが作れます。
Q:CADとスライスとプリントには、どんなソフトウェアを使っていますか?
A:スライスにはAutodesk 3DS Max、紙にMDF形状をプリントするのにはAllyCad(フリーのシンプルなCADプログラム)を使っています。こっちのほうが、3DS Maxより簡単なんです。
Q:ひとつの型を取るためのプラグをSolidoodleでプリントするには、どのくらいプリントしますか?
A:型(ファイバーグラスを使います)を取るプラグひとつで、だいたい500回プリントします。それぞれ、100×100ミリのセクションを5つずつです。
Q:2012年12月25日に開始したのですね。今は、完成までのどのくらいのところにいますか? ブログでは、とても丁寧に近況を報告していますね。
A:あとわずかボディの28パーセントとダッシュボードを残すのみです。進行状況を平方メートルで表すのが好きなんですが、あとは18.5平方メートル(トランク1平方メートル、ボンネット1.5平方メートル、ドア1.5平方メートル×2)、ダッシュボード2平方メートル、ボディは11平方メートルです。1キログラムのスプールで0.26平方メートルプリントできます。平均して1週間に2本使います。これまでに、13.42平方メートルをプリントしたことになります。
ただし、これはプリントだけのことです。型を取る前に、それらを組み立てるための無限の時間がかかります(パテ埋めして、400番、600番、1000番の紙ヤスリをかけることをで繰り返し、鏡面仕上げにしてから、下地剤を塗ってまた1000番で磨きます)。
Q:3Dプリントに関して、またはこのプロジェクトに関して、言いたいことは?
A:よく聞かれますが、なぜ、もっと有名なDB5や有名で高級なDB4 Zagato(その他もろもろ)ではなくて、ノーマルのアストンマーチンDB4を選んだのかということです。私は古い車が好きなのですが、とくに好きなのが2シーターです。しかし今は子どもがいて2シーターは無理となりました(GTOのキットはもう使わないかも)。そこで、2+2の古いアストンマーチンを選んだのです。最高にクールだし、DB4はなんと言っても形が好きだからです。ただし、GTライトウエイトのスタイル(バンパーなし)にしようと思います。
Q:特別なテクニックは?
A:最高のプリント方法(少なくとも私のような薄くて背の高いプリントの場合)は、プリントベッドの上に耐熱ガラスを置き、カプトンテープを貼って、ヘアースプレーをかけるというものです。カプトンテープやアルミよりガラスによくくっつくし、カプトンテープとヘアースプレーで、プリントはプリント中の99.9パーセント、そこにくっついてくれます。ベッドの温度は95度が最適と発見しました。
このプロジェクトの写真を下に並べる。プロジェクトの話をしてくれたIvan Sentchに感謝したい。最新の情報や写真は、彼のブログ replicadb4.comを見てほしい。
Solidoodleの許可のもとに再掲載しました。
Yahea Abdulla:ニューヨーク、ブルックリンに本社を置く3DプリンターメーカーSolidoodleの広報担当。ユーザーたちが3Dプリンターをびっくりするような用途に役立てているのを見るのが楽しみ。彼の最高傑作は、机の上で使っているコースター。
– Laura Cochrane
[原文]